第2話:タイムリープしちゃったみたい
誰しも後悔していることはあると思う。あの時、ああすればよかった。とか、なんであんなことしたんだろう。とか。
後悔の内容は人様々。ただ、一つ思うことはその時のその出来事がなければ今の自分やその周りを取り巻く環境はなかったことだろう。それがいいか、悪いかは別として。
その後悔を乗り越えて今が幸せであるならそれもいい。しかし、全ての人がそれほど強くないのだ。そんな人たちはみんな同じように思うだろう。過去をやり直せたらと。
俺だって一度は思ったことがあったさ。灰色の青春。俺は中学、高校と全くといっていいほどモテなかった。周りはどんどん、彼氏だ彼女だと青春をしている中、俺はそれを指を咥えて見ているしかなかったのだ。
それでも俺は、当時、十分だと思った。友達もいたし、励むべき部活もあった。女子と、という概念がなかっただけで俺だって十分に青春していたさ。
だけど、大人になってから気づいた。あの時、高校の時、なんでもうちょっと女子と絡まなかったんだっ!! と。通勤途中、すれ違う制服姿の女子高生の眩しいこと。不思議と目で追ってしまうよね。変態扱いされないように気を付けなければならない。
その時、俺は「はあ、高校生をやり直したい」そう思った。
だが、これは俺が働き始めて間もない頃の思考である。
俺は、その後最高の出会いを見つけることになる。それは、堂本朝香。彼女との出会いだ。
彼女とは、大学時代の友達の紹介で出会った。一目惚れだった。容姿の美しさもさることながらその性格の美しさ、気立ての良さ。人当たりの良さ、器量の良さ。いいところをあげればキリがないほどの超絶スーパー人間だった。
それまで女性と付き合ったこともない俺が、そんな彼女と結婚することができたのだ。奇跡と言っていい。なんの取り柄もないこの俺がこの超絶美人の夫となるのだ。この上なく、幸せだった。俺は彼女にベタ惚れ、彼女も俺にベタ惚れだった。
「なのに……なのに、こんなのって、あんまりだぁぁぁぁああああああ」
「どうしたの、こいつ?」
「知らね」
翌日。
俺は寝たら、この悪夢も覚めているかなと思ったけど全く覚めていなかった。でも母さんは若返っていた。
俺は教室で現在、泣き叫んでいる。机を思いっきりガンガンと叩きまくって大の男が泣き叫んでいるのだ。
周りの生徒はドン引き。いいさ、見せてやるよ。ガキども。本当の大人ってやつを。
「うあああああああああああああ」
「うるせぇ!!」
マークが俺の頭を叩く。酷いではないか。泣き叫び、辛さを吐露する幼なじみに対してその仕打ちとは。
だって十年だよ? なんで、十年前に戻るの!? なんで!? 普通さぁ、こういうのってめっちゃ後悔した過去がある奴のところにさぁ、やり直しのためにタイムリープが起こるよね!?
なんで!? 俺、幸せの絶頂だったんだよ!? 最愛の彼女を見つけたんだよ!? 結婚したんだよ!? 誓いのキスしたんだよ!? そして初夜も迎えたんだよ!?
「なのにどうして朝、目が覚めたら十年前の教室にいるんだぁぁぁぁぁぁ」
「いや、お前マジどうした? さっきから変だぞ? お前、昨日から変わりすぎ」
マークが引きながら、かつ笑いながら俺に問う。そう、俺は十年前、中学生の時はこんな目立つ行動をするような人間ではなかったのだ。
「マーク……聞いてくれるか?」
「ああ、なんだよ?」
「俺がさ、未来から来たって言ったら信じる?」
「信じない」
即答すんな、ボケェ!!
しかし、俺は無視して続ける。
「それでさ。最高に性格のいい、最高の美人と結婚したっていったら信じる?」
「信じない」
泣いてもいいかな?
しかし、既に一頻り泣いた後なので、もう枯れてしまった。
「結婚式をした次の日に目が覚めたらここにいたってびったらじんじるぅぅ?」
もうすでに涙で声が震えまくっている。まだ涙出たわ。
「意味が分からない」
こいつは鬼か。
「……話を変えよう。例えばの話だ。最高に楽しみにしてたゲームがあったとするだろ?そのゲームで最高に盛り上がるイベントがあった時にセーブデータが全部消えたらどう思うよ?」
「なんだ、ゲームの話してんのか。ドンマイ」
「リアルの話じゃああああああ!!」
俺はマークの首を締め上げて前後左右あらゆる方向に揺さぶる。立派な殺人未遂である。
「ゲホッゲホッ、殺す気か……まあ、お前がよくは分からんが、悲しんでいるのは分かった。それでどうしたいんだ?」
どうってそんなの決まってる。朝香ともう一度、結婚生活始めたいよぉ!!!
「朝香と会いたい……」
「その謎の美女が誰かは知らんが、じゃあ、十年後、結婚できるようにやり直せばいいじゃん」
やり直す? 十年を? そんなこと……そんなことって……
「それだっ!!! 決めたぞ、マーク!! 俺は、この十年を完璧にやり直して、もう一度! もう一度、朝香と結婚するっ!! 何がなんでも結婚してやるぅ!!」
俺の今後の目標が決まった瞬間であった。
そうと決まれば、俺は、自分が進学した通りの高校へ進まなければならない。そして同じように、受験に失敗し、同じように滑り止めの大学へ受かり、同じ会社に就職しなければならない。この十年の目標が完璧に定まった!!
というか、やばくね? 受験目の前なんだけど。十年前の勉強なんて全く覚えてないんですけど!!!
どうするの!?俺!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます