2章 干渉者

第43話 謁見






ミジュア王城





 「陛下、本日はウェリー男爵と例のお連れ様が登城致します。その他クロスティア王国の第一王女であられるミレーフィ王女、レメヴァーレ王国からは魔術師団長のジェイルド・ビクター様、ゼフ王国からは賢者のレイドラン・ラクート様方も本日特使として謁見に参上致します。順番はいかがなさいますか?」


 「ウェリー男爵らが優先だ。ある程度なら他国の者は待たせよ。・・・しかし、3ヵ国は思い切った人選であったな。剣の腕はこの星では三本指に入るとまで言われる王女を国外に出すとは・・・。」


 「ーーそうでございますね。そしてビクター様は魔法の腕に関してはゼフ王国ですら危険視している程の者。ゼフ王国は王の右腕と言われている賢者を出してきましたな。」


 「奴は魔力無しであったか。身を守る力の無い賢者を使者として敵意のない事を全面に強調してきおったな。かと言って、今まで我らを蔑ろにし無視して来たのだからそれ位では錬金術師達を危険に晒す道理は無いわ。」


 「本日来る者は分かっていましょう。今までのミジュア王国にして来た非礼の数々を。ただ・・・フォルテム王国だけは我が国に間諜を放ち悪魔を倒した技術を探り盗み取る気にございますな。」


 「取り敢えず、それは放置していて良い。まぁ・・・煩わしい場合は片付けておけ。」


 「御意に。」









♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢





ウェリー男爵に連れられセフィール達は王城に入った。ユーリは騎士に控え室に通され、そこでセフィール達と別れた。

しばらく廊下を進み続け騎士が両サイドに立つ大きな扉の中に誘導された。中には年嵩のある男性と眉間に皺を寄せた壮年の騎士、色香漂う胸の大きさが目立つ紺のローブを身に纏った女性他にも外にいた騎士達よりも上等な騎士服を着た数名の騎士達がいる。そして、玉座に肩まで掛かる白髪を後ろに結った他の人達とは明らかに違った雰囲気を持った年嵩のある男性が腰を据えている。

セフィール達はウェリー男爵に倣って見様見真似で礼を取る。


 「おもてを上げよ。余がミジュア国王、クリストファー・ラフィーレンである。」


 「イグリール・ウェリー、陛下の命により参上仕りました。そして、この者達が悪魔2体を仕留めた功労者にございます。」


周りに居た騎士達が息を呑んだ。王の側にいる3人は事前に情報を知っていた為静かに立っている。


 「うむ、ご苦労であった。ほう・・・。そこの者達が如何なる国も辛酸しんさんを嘗めた悪魔を2体も倒したのか・・・見かけによらぬものであるな。錬金術師と魔族の混血、それに魔獣であったか?ふむ・・・確かに今までその組み合わせで悪魔と戦った国はどこも無いな。そうであろう?アーサー騎士団長?」



 「はっ!!錬金術師は我が国にはごく僅かしかおりませんし、多く錬金術師が居たフォルテム王国は酷く錬金術師達を虐げた為錬金術師の人数はかなり減っております。錬金術師は非戦闘職種ですので小さな魔物とすら戦った事もない者達です。

それに魔族は倫理観の違いによりどこの国でも受け入れる国は無いですから、混血の者と一緒に戦うといったことはまずあり得ないでしょう。魔獣はテイマーがいれば戦闘は可能かと思いますが・・・悪魔との戦いにおいてはテイマー自体は戦闘力が無いのですぐに命を落とす可能性が高く忌避されると思われます。」


セフィール達はどうして良いのか分からずに3人とも目を彷徨わせながら、時間が解決してくれるのを待った。


 「うむ。つまるところ其方達は貴重な人材という訳だ。ーーそこでウェリー男爵の元からミジュア王国へと雇い主を替えろと言ったらならば其方達はどうする?勿論爵位も十分な報酬も与えよう。」


3人とも素直に返事して良いものか言葉を発する事を躊躇う。


 「案ずるな。この場の不敬は咎めはせん。言うてみよ。」

 「あなた方との謁見に限り他貴族を一切呼ばず内輪的に取り行っており、陛下がお許しになる限り我々臣下もそれに従うまでにございます。」


側に控えていた年嵩のある男性の補足説明が後押しとなり3人は安堵して、最初にセフィールが口火を切った。


 「大変有難いお話なのですが・・・俺は爵位は要らないので、このままウェリー男爵の元で働いていこうと思います。怪しい俺達みたいなのに仕事や住居なんかの資金を出してくれて信じて貰った恩がありますし、ウェリー男爵は領民の生活を豊かにしようと考えていらっしゃるのでウェリー男爵の元で働いてもこの国の為に働いているのと変わらないと思うんです。」


 「俺はー・・・怒んないウェリー男爵位の下にいるのがギリギリって言うんですかね?心が疲れない所で働きたいんですよ。金あっても今ですらお酒飲みに行けてないのに、もっと忙しくなるのは・・・俺には無理ですねー・・・。」


セフィールは男爵に恩を感じている事とウェリー男爵に仕えるのは国に仕えるのと同義だと断った。ルークはそこそこ働きたい事と強制されたりするのが苦手故に断った。


 「では、其方は?」


陛下が沈黙を貫いていたロバートに尋ねた。


 「お・・・わっわたくしは、わたくしの様な混ざり物が王城にちらつけば快く思わない者が多くいると思いますし・・・そのっ・・・俺が唯一仕事にも就けて馴染めたのがウェリー男爵の治める町だったので・・・っ俺みたいな奴が誇りを持って誰かの為に生きていける場所を徐々に広げていきたいのです!王都じゃ今は無理でも男爵の領からなら広げて行けると思うので、俺はウェリー男爵に仕え続けます!!」


ロバートは自身の出自による理由と夢の為に断った。


 「ーーまさか3人に振られるとはな。・・・ふははっっっ!男爵は人気があるのぅ〜羨ましい限りだ。」


 「恐悦に御座います。私もまさかこの様に思ってくれているとは全く思いも致しておりませんでした。有難い事です。」


 「それから男爵、貴殿も感じておろう?世のことわりが書き換わる気配を。ーー男爵にはこれから国から多くの無理難題を押し付ける事になる可能性が高い。それによってそこの英雄達も忙しくなるであろう。それに伴う頼みや困り事は我等で解決する。

男爵は国に忠誠を誓っている者であるから命令出来るが、そこの英雄達は根無草に近い・・・よって命令はせん。これから他国に頼まれて悪魔討伐の為の派遣を其方らに依頼する事があるであろう。間違いなく危険な依頼になるが、その時は引き受けて貰えぬか?」


真剣な眼差しでセフィール達に王が問う。


フォルテム王国の貴族や法令を都合の良い様に変える王族しか知らないセフィールはただただ、たまたま悪魔を倒しただけの平民に真摯な態度の王に驚いた。国が変わればここまで違うのかと感心する。


 「その時はお引き受けします。でもルークとロバートまで危険に晒すわけには・・・。」


 「え?なんで?お前が行くなら俺も行くっていつも言ってるじゃん!!」

 「俺は男爵にお前らの護衛と廃ダンジョン調査の任を得ている。」

 「一緒に行きたい癖に〜♪」

 「ぬぐぐ・・・」


 「相分かった。

ーー男爵、英雄達の事は頼んだぞ?・・・英雄達よ、次に顔を見せる時も全員揃って顔を見せるのだ。

ーーーこれは厳命である!」


最後に王は今まで人当たりの良い雰囲気を一転させ、威厳を出しセフィール達に今までしなかった命令を下し謁見が終了した。





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