第20話 廃ダンジョンの戦い
出てきた巨大な黒い馬は異常な魔力と威圧感を放っており、2人は身体がぶるぶると震えていた。
《貴様ラ コノ土地ニ 住マウ悪魔アパオシャニ 闘ヲ挑ム 愚カ者カ・・・往ネ》
アパオシャと名乗った悪魔は床を蹴り魔法陣を展開させると30層のボス部屋は湿気っていたのにも関わらず、あっという間にカラッカラに乾燥し始めた。通路に出ているセフィール達でさえ苦しくなる乾燥レベルであった。薄目を開けてアオを探すとアオはドラゴンへと姿を変えていた。
ーーギャウウウウウウウウウウウウウウッッッッッッッッッ!!!
アオの咆哮が廃ダンジョンを揺らす。長い尻尾をアパオシャに勢い良くぶつけると、余りの尻尾の重さにアパオシャは壁に叩きつけられた。アオの周りから水の渦が巻き上がるとそれを添う様に稲妻が駆け回る。そのままアパオシャに体当たりを決めるとアパオシャの悲鳴の様な声が聞こえた。
ーー《ウギャァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!キサマァァァァァァァ!!!》
アパオシャは後ろを向くと後脚でアオを蹴り上げ今度はアオが壁に叩きつけられた。再びアオが尻尾を振り今度は尻尾の
アオはヨタヨタとした動きであったが立ち上がった。セフィールはこれはどうにかしないとと自身を奮い立たせ錬金術を行った。
「おいっお前こんな所で何錬成してんだよっっ!」
「アオを助ける!!ルークお前も協力しろっっ!」
「ーー分かった。何すりゃいい?」
セフィールはチタンを精錬した。銀色の塊が現れ、今度はそれを槍の形にした。太さは成人男性の標準的二の腕位の太さである。すぐ様背中側にあった通路の壁に手を当て錬金術で壁から飛び出た形で槍用の長い台座を作る。
「ルーク!!!一緒にこの槍を持ち上げてくれ!!!そしてこの台座の上に置くんだ!!」
「こんな重そうな金属持てるのか!?・・・っあれ?思っていたより軽いかも?」
2人で持ち上げると台座に置いた。こうしている間も一進一退の攻防戦が続いている。
もう一度セフィールは台座に手を当て台座に錬金術を行う。台座は槍の棒部分を半分包み込みセフィールは台座の上に登りしがみついた。
「ルーク、次のお前の仕事が1番頼りだ!!次に馬が大技をアオに当てる行動をした時に合図を出してくれ!」
「お・・・おう、・・・任された!!!」
ルークは真剣に戦いを見守りタイミングを読み、セフィールはその時を台座にしがみ付いて待つ。嫌な汗がセフィールとルークの背中に滲む。
アオがよろけ、アパオシャが攻撃体制に入る。
「今だっっっっ!!!」
ルークの合図と共に槍を台座ごと高速で錬金術を使って発射させた。セフィール自身も猛スピードで伸びる台座の上にいるので一気にアパオシャに近付いた。万が一アパオシャが避けた時の方向転換の為に乗ったものの全く降りるタイミングを考えていなかった。
アパオシャの胴体を串刺しにした、その一瞬でクロがセフィールを救出してくれた。チタンの槍がアパオシャを壁を貫き串刺しにしクロがセフィールを助け出してすぐ台座が衝突した衝撃で大爆発を起こして粉砕した。
《人間如キガ・・・ドラゴン如キガ・・・グゾォォォォォォ・・・・・》
静かになったので近付いてみると生命を感じなくなっていた。安心してアオの元に駆け付ける。アオは小型に戻っていた。
ーーきゅうきゅきゅう♪
「俺達錬金術師で良かったよな。回復薬作れるから大抵持ってるもんな〜良かったな!アオ!」
ルークは笑顔で回復薬をアオにぶっかけながら荒い治療をしていた。人間なら飲む所だが、動物は飲むのを嫌がるので治りは遅いが動物の怪我はかける方を推奨している。ルークは「魔獣も大差ないよな♪」と独り言を言いながら回復薬をかけている。
アオは何本もルークに回復薬をかけられて、怪我が治っていた。
「ルーク、クロにたくさん回復薬かけてくれてありがとう!」
「気にすんな。どうせ今日もエール呑ませて貰うんだからな!!ーーそれよりこれどうすんだ?一応ポドムのおっさんに報告しなきゃなんねーだろ?」
「そうだね・・・スキルに聞いてみるか。」
セフィールがスキルを起動させ、収納可能か聞いてみる。
『悪魔ノ収納ハ不可能デス』
やっぱりダメかと肩を落とす2人、スキルの話は続いた。
『シカシ、錬金術レベルガ上リマシタノデ アノ悪魔ノ様ニ 錬成シタ物ヲ クッツケテイレバ【錬成不純物】ト 言ウ枠デ収納サレマス』
一旦は肩を落とした2人は感嘆の声を上げた。触りたくなかったのでアパオシャに手をかざし、収納させる。すると、アパオシャと槍両方が消え、素材ボードを確認するとスキルが言った通り【錬成不純物:悪魔】と表記されていた。格段に素材ボードが使いやすくなった。
セフィールはこれだけ派手に壊したのだからいつ壊れてもおかしく無いと、ルークと2匹に話し急いで脱出する事にした。通路は時折嫌なひび割れの音を立てており、急ぐが登り階段を30層一気に登るのは冒険者でもキツイと思われる。錬金術師の2人は体力が低く10層上がった所で息が上がっていた。
ピシピシとひび割れる音が大きくなって行く。折角悪魔からは助かったのに生き埋めで死んでしまうんだなぁ・・・とぼんやりセフィールは考えていた。
ーーがふっっ!!!
「「う゛っっっ!!!」」
いきなり2人は首の後ろの襟を引っ張られ凄まじい速度で景色が飛んで行く。どうやらクロが襟を咥え猛スピードで廃ダンジョンを駆け上がっている様だ。取り敢えず、今2人が言えることは『首絞まって死ぬ』である。
廃ダンジョンも2人の酸欠も限界を迎えた頃、突然緑の香りがした。セフィールが目を開けると廃ダンジョンの出口の森の中にいた。日は少し傾いていたがまだ明るく、午前中から潜っていたのを考えると恐らく5時間位中に居たのだろう事が分かった。
先程まで酸欠状態だった身体に森の緑の香りのする空気を大きく吸い込み酸素を取り込むと、背後で轟音がして森にいた鳥達が一斉に羽ばたいて飛び去った。後ろを振り返ると土煙を巻き上げて潰れた廃ダンジョンの無残な瓦礫の山だけなっていた。
「クロ!!お前のお陰で助かったよ!!ありがとうっ!!」
ーーがう!!
セフィールがクロを感謝を込めて撫でているとルークが近付いて来た。
「俺はクロに首絞められて殺されそうだったけどな♪」
ーーガウッ!!
「痛いっっっ痛いっっっっ!!ごめんなさいっっっ!!冗談ですっっっ!!巷で有名なルークジョークですよっっっ!!クロの旦那っっっっ!!やめてーーーーーっっっ!!いだだだだだだだだっっっっっ!!!嘘です嘘ですっっっっっ!!!ひぃっっっ!」
「(クロに遊ばれてるなぁ〜まぁ両方楽しそうだし良いか)」
その後ルークは持っていた干し肉等でご機嫌を取ったり宥めたりゴマを擦って、何とかクロに許して貰っていた。町に向かって歩いていると、町の方から大勢の兵士達と冒険者達がこちらの方面へ向かって来ていた。何があったんだろうと思い、セフィールはその団体に声をかけた。
「あのっ何かあったんですか?」
「なんだ貴様は。我々は廃ダンジョンの周辺に異変が無いか調べに行くのだ。急いでいるからそんなに気になるなら冒険者ギルドで聞くと良い。ではな。」
「えっ廃ダンジョン?」
「・・・この人言ってるのって、さっき俺らの入っていた所の事じゃねーの?・・・まぁ周辺って言ってるし関係ないか。セフィール早く戻ってエールを・・・俺のエールが呼んでいるっっっ!!」
「なんだとっっ!!」
話は終わったとばかりに歩を進めていた兵士は、ルークの呟きを拾ったらしく2人に向き直り詰め寄って来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます