第21話 ギルドde報告
いつの間にかセフィールとルーク、クロとアオは兵士と冒険者の集団に囲まれてしまった。
その中に門番で知り合いになったゼルがいた。向こうもこちらに気づいてくれた様で、集団を掻き分けて円の中心に来てくれた。
「お前たちこんな所で何やってんだ?」
「ゼル、お前の知り合いか?」
「はい、兵士長彼らは錬金術師で商業ギルドに登録してます。」
「ゼルさん、こんにちは。先程まで廃ダンジョンで錬金術の素材集めに行ってたんですよ。」
「何も無かったか?その周辺で爆発的な魔力を感知されたらしくてな。その調査なんだ。その調査次第ではこれから領主様の私兵を出して貰う事になるんだが・・・。」
「あーあれだと思うんで、もう魔力の元は無いから問題ないですよ?」
「おい、錬金術師!
「あー・・・じゃあ一緒に商業ギルドまで来ます?ここではちょっと・・・。」
「はぁー、知り合いいて良かったわぁ〜廃ダンジョン潰れてっから行ってもなんもないぞ?」
「「「「 なんだとぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」」」」
ゼルも含め皆が驚愕の声を上げた。それもその筈、廃ダンジョンであろうと恐ろしい程に丈夫に出来ており潰そうにも潰せないから、危険と知りながら今までそのままにされていたのだ。
ミジュア王国は錬金術師の数の少なさと非戦闘職業故に錬金術師は採取系のクエスト以外受ける事が出来ないのである。その為フォルテム王国もミジュア王国も恐らく他の国も、ダンジョンに鉱物が大量にある事を誰も知らないのである。
ダンジョンには硬い鉱物で作られた部屋もあるので、一般常識として『ダンジョンは破壊出来ないモノ』という世界共通の概念が存在する。
数人の冒険者が確認のために廃ダンジョンを調査しに向かい、残りの兵士達と冒険者達はアイヲン町に戻る事になった。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
アイヲン町に帰り着き兵士長とゼルも2人と共に商業ギルドに向かう。ここで別れた他の兵士達は、冒険者ギルドへの報告や町長への報告を行う為に散開した。
商業ギルドの中へと入ると受付のカイルがいた。セフィールと目の合ったカイルは弱い魔物のしか居ない森で上級クラスの強い魔物に出会ったかの様に、息を止め目を剥いて驚愕の表情のまま硬直していた。セフィールはどうしたのか、近付いて行くとカイルがはっと息をした次の瞬間いきなり大声を上げた。
「ギルドちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉううううううっっっっっっっ!!!!!!!!!」
「・・・どうしたんだコイツ・・・。遂に完全に可笑しくなっちまったんじゃねーか?」
いつの間にか横に来ていたルークが憐れんだ目で大声で叫ぶカイルを見ていた。
ーーバタンッッッ!!バタバタバタッッッッッ!!!バンッッッ!!ガタタタタッッッ・・・
カイルの大声で2階の執務室から何があったと慌てて出てきたポドム。下の階にいるセフィールと目が合った途端に廊下を走り出し、階段を駆け降り踊り場の壁に勢い余ってぶつかった後残りの階段を転げ落ちた。
「大丈夫ですか!?ポドムさんっっっ!!!」
「ギルド長、どうされたっっっっ!?」
「お怪我はありませんか!?」
「歳の割には豪快な降り方すんなぁ・・・おっさん。ーー俺は嫌いじゃないぜ」
「ルーク・・・やりたくてやったんじゃ無いと思うよ・・・。これは事故だよ・・・。」
ゼルがポドムを助け起こすと、息を少し整えたポドムが姿勢を正した。
「セフィール殿とルーク殿それからアオ殿とクロ殿、無事にお戻りになられた様で何よりにございますっっっ!廃ダンジョンの方面で爆発的な魔力を感知した一報を聞いてから生きた心地がしませんでしたぞ・・・」
「その事なんですが、原因を知っているのでお話ししたい事がありまして・・・。」
「では、執務室でお話をお伺いしましょう。」
「ギルド長、我々も命令を受けた身同席しても宜しいだろうか?」
「えぇ、皆さまこちらへどうぞ。」
全員でギルド長の執務室に入りソファーに座ると、カイルが全員の紅茶を出した後ギルド長の隣に座るとポドムさんが2人に今回の事を聞く。
「それで早速ですが、原因は何だったのですかな?」
「今朝貰った許可証を持ってそのまま廃ダンジョンに向かいました。アオとクロが住み着いていた魔物を倒しながら進んでいきました。20層までは様々な素材が手に入って、そのまま進んで行ったのですが25層辺りから圧迫感の様な物を感じる様になりました。」
「俺達はクロと一緒に進んでたんだが、アオは先行して進んでいたから心配になって急いで追いかけたら、アオが先に辿り着いていた最下層のボス部屋は欲しかった素材で出来た部屋だったんだ。」
「そこで素材を全て回収して、出ようと思っていたら真っ白になった部屋から大きい真っ赤な魔法陣が現れて悪魔が現れました。」
「悪魔ですとっ!!」
「これは早く領主様にご報告せねばっ!!」
「お二人共、その悪魔はもう居ないのですか?」
浮足立ってしまったギルド長と兵士長を見て、一旦話を戻す為にゼルが安全性を確認する。
「はい、アオが主に戦闘を行い留めは俺達2人で仕留めました。」
「その証拠となる物は持っていないか?」
「あるにはあるんですが・・・」
「どうした?何が問題なんだ?」
「それなー・・・デカいんだよ・・・。この部屋ぶっ壊れるくらい・・・」
「なんとっっ!!!」
「どこにあるんだ?森の中なら取りに行ってくるぞ?」
「俺、スキル持ちで収納しているんで場所だけ提供して貰えたらその場所に出しますよ。」
「収納ボックスか、良いスキルだの。うーむ・・・。流石に裏庭は市民に見えてしまうからのぅ・・・。大騒ぎになっても困るから、領主様に場所をお借りするか。兵士長、どの道領主様に書簡で報告するのだろう?皆で一緒に報告に行けば良い。今からオガルレ街に行くぞ!!カイル、領主様に直ぐに先触れを送るんだ!」
「はいっ!承知しました!」
「え?今から・・・あ、はいっ!!ーーゼル馬車と馬を用意しろっ!」
「はっ!!」
ゼルはポドムと2人の乗る馬車と自分達の馬を用意しに部屋を出て行った。残った兵士長が立ち上がった。
「領主様にご報告兼、あなた方の護衛で同行する。アイヲン町兵士長ロバートと申します。改めましてよろしくお願いします。」
「はい、錬金術師のセフィールです。よろしくお願いします。」
「俺はルーク、セフィールの弟子みたいなもんだ!宜しくな!お前最初は嫌な感じだったけど、結構普通なんだな?」
「おいっ!ルーク!!失礼だぞっ!」
「あの時は緊急時で急いでいたから、そう思われても仕方ない。しかし、お前達の領主様への報告は私も聞かせてもらうからな。万が一お前達を捕らえなければならない時は、遠慮せず捕縛するからそのつもりでいるんだな。」
「兵士長は生真面目であるから、言い方はアレだが悪気がある訳ではないのだよ。」
「確かに、その様ですね?」
「なっ!!私の何が悪いっっ!!」
「そうゆーとこじゃねーの?」
「なんだとっっ!!」
だいぶん兵士長とも打ち解けてきた所で、移動の準備を終えたゼルが戻ってきた。4人掛けの馬車にポドム、セフィール、ルークとアオとクロも一緒に乗車した。カイルは受付の業務があるので留守番である。
兵士長とゼルは馬で護衛の為並走する。
1時間程走っていると大きな街が見えた。
「お二人共、あの街がオガルレ街でございます。領主のウェリー男爵様がいらっしゃいます。」
「綺麗な街だなぁ〜」
「美味しいもんあると良いなぁ〜・・・」
「では、報告が終わりましたら皆様と美味しいご飯の出るお店にでも参りましょう。そろそろ門番の問答がございますね。」
ギルド長とアイヲン町の兵士長も一緒だったので直ぐに馬車を通して貰えた。
街の中で一際目立つ領主の城に到着した。城の門番に通して貰うと、城の一室に通され時間を置かず領主がセフィール達の待っている部屋に入ってきた。
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