第9話 思惑(前半賢者/後半錬金術師)
スーパーマーケットから買い物バックいっぱいに食料を帰ってきた有理は、荷物を置き用事を済ませると室内着に着替えノートパソコンを開きメールチェックした。既に錬金術師(笑)くんから返信が届いていたので有理は早速開く。
「ん?」
思わず有理は声を出してしまった。昨日は鉱物集めに行って見つかった話してたのに、今日はいつのまにか補助金を打ち切られ既に洞窟から追い出されてペットと旅に出たという事。
「(え、何?なんなの?よく分かんない設定止めてくんないかな・・・。私の住む国って・・・あんたも同じ国民じゃん何言ってんの?・・・もしかして同じ県に来たいとか!?え、勝手に住めば良いじゃん。知らんし。願いの翠星ってなんぞや・・・。設定盛りすぎで情報過多だし!!!)」
今回のメールが余りにも設定・情報過多になっていた事に有理はムッとしてすぐに返信をする。
『 フィール
ちょっと!!さっきのメールはなんなの!?
情報量多すぎて意味わかんないし。なんで昨日鉱物集めたって
書いてたのに今日は洞窟追い出されてるわ、国を出るって・・・。
しかも補助金打ち切られたとか前置き無さすぎでしょ!?
昨日の今日は流石に時間狂いすぎだからね?
それと翠星もいきなり振られても知らんって。
しかも私のいる県に住みたいとか・・・どうした!?大丈夫??
・・・なんかあった?
ユーリ 』
「(一体、錬金術師くんはどうしちゃったんだろう?なんか本当に心配だなぁ・・・。情緒不安定?うーん・・・流石にこの設定でここまで来ている彼にリアルを聞くのは難しいかー・・・。なんか良い方法で設定崩さずに聞けないかなぁ・・・。んーそもそも33歳も設定の可能性あるし、もしかして家出!?そうだったとしても、こんなメール内容じゃ警察も動くはず無いしね〜確信も無いし。
・・・どうしたもんかなぁー・・・)」
マットの上で寝転がってどうするのが一番いいのか考えているとメールが届いた。
「(早く無い!?)」
『 ユーリ
閉山した鉱山にいたのは少なくとも3日以上前だけど。余りにも無心で
歩き続けていたから正確な日数は覚えていないんだ。すまない
でも数日経っているのは間違いないよ
補助金は俺達錬金術師を国外に出さない為の法律の一部だったんだ
建国した王様が作った法律だから、未だにある法律に不満を持っている
貴族は多いだから貴族の不満を解消して人気を得る為に行った
政策の一つが、補助金打ち切りだと思う。
もう国を出る制限がなくなったから、錬金術師の差別のない国で錬金術を
磨きたいんだ。だから、ユーリのいる国に行って錬金術を学びたいと
思ったんだ。県っていうのが俺には良く分かんないから教えて貰っていい?
国に住んでいるんだよね?錬金術の事しか勉強してなくて日本って国
知らないんだ無知ゆえに不快にさせていたら謝る
ユーリの地域からは翠星見えないのかな?名前が違うのかな?
西の夜空にずっとあって動かない翠色の星って無い?それの事なんだけど、
俺の産まれた村だと翠星に願いを掛けると願いが近づいて来るって
言われていたんだ。
フィール 』
「(えぇ・・・結局家出って感じも無いしなー・・・取り敢えず、国を出るのも補助金打ち切られた設定も分かったからいいか。時差はもう知らん。県の説明いる?日本語上手い海外の人?でもそんな感じしないしなー・・・
まぁ、もう大丈夫そうだし様子見るかー・・・)」
有理は適当に返事を送信するとお昼ご飯を作って食べ終わるとネット動画を観始めた。
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セフィールが送信してすぐにユーリからの返信が届く。
「もう返ってきた!何々・・・」
『 フィール
なんかよく分かんないけど、私がいる世界とそっちじゃ空間が
捩れているのかも?そっちにメール届く時差短縮されるのかも。
面白い現象だねー
県は国の中で分けられた小さい領みたいな感じだよ。
世界が違うみたいだから気にしなくていいよー?
無知も気にしないで、こっちもそっちの世界の事知らないし。
翠星も私の住む世界には無いみたいだよー代わりに同じ様な星で
北極星ってのがあるけど色は付いていないかなぁ・・・光は強いけどね。
北極星に願いが叶うとかって話は聞かないけど、
フィールの錬金術師としての成功を願っとくから♪
ユーリ 』
「本当にユーリ様はお優しい人だ・・・。それにユーリ様と住んでいる世界が違ったのか・・・。想像すらし得ない事を導き出せるとはさすが賢者様だな!!報いる為にも早く寝て、明日からステンレス鋼を完成させなければ!!」
ユーリの適当なメール内容でセフィールはやる気をみなぎらせた。
有理はめんどくさくなって、全部をネット小説で読んだことがある異世界設定をぶつけて無かった事にしただけであった。有理は大雑把でめんどくさがり屋である。
翌日から、3日に1日は進むのを止めその日は錬金術に心血を注ぐ事にした。早くユーリに成功を知らせたいからである。
「さて、今日はここでこのまま、この洞窟でもう一日過ごすからな?お前達は好きな事をしていて良いぞ!!俺は錬金術を行うから気にしなくていいからな?
ーーきゅるるっっ
ーーがうっ
アオとクロは走って洞窟を飛び出して行った後、残ったセフィールはステンレス鋼の錬成を始めた。
♢♢♢
【フォルテム国王城】
高そうな椅子に白髪の高級な生地を使った服を着た高齢男性と、その男の前にいる膨よかな体型をした男が密談を行っていた。
「いやはや、長い道のりでしたが無事に建国王の愚法を抹消出来たのですから、国王様誠におめでとうございます♪これからは、錬金術師に当てていた費用を他の行事に割り振る事が出来ますから錬金術師に不満を持っていた貴族や国民から絶大な支持を得ることが出来る事かと・・・」
「うむ、宰相お前には苦労を掛けたな。根回し大変であったろう?」
「そうでございますね。今回の法律は建国王の作ったモノでございましたから、いくら錬金術師に補助金を出す事に不満はあっても反対する者は多ございました。」
「・・・であろうな。宰相、お前には望みの褒賞を与えようぞ。何が欲しい言うてみよ。」
「では・・・お言葉に甘えさせて頂いても宜しいでしょうかな?」
「申せ」
「我が国でしか産出されていない『ミラニアム鉱石』の販売を一手に引き受ける販売権利をバーロンド商会に頂きたく・・・」
「くくく・・・大きくでおったな、あれは錆びない特殊な石であるからな。鉄の武具に塗料として塗らねば雨季の軍の遠征など出来ぬからなぁ。どんなに金を掛けても欲しい物であるからのう。
まぁ良い、くれてやるが分かっておるな?」
「はい、勿論に御座います!他国に反感を買い過ぎない様にやる事と国には色をつけて税を納めさせて頂きますゆえ。」
「分かっているのならば問題ない」
国王と宰相は満足した様子で密談を終えた。
彼らはこの国でしか採れないとされるミラニアム鉱石が、クロムと大差ない事とミラニアム鉱石は他の金属と相性が悪く塗料としてしか使えない為合金として使えるクロムの方が価値がある事を知らなかった。
そして、クロムはこの国ではほとんど採れない事と、宰相の息のかかった商会にミラニアム鉱石の販売権を譲った事で王国の未来に陰りが見え始めた。
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