第31話 ダンジョンと悪魔の繋がり
「・・・覚悟はあるのか?ウェリー男爵。」
「良いのです。私は彼らの力を信じる事に致しました故。全財産とこれからの生涯を彼等に賭けます。」
「そうか・・・それならば良い。何か必要な事が有れば宰相に伝えると良い。なるべく融通する様にする。今回の悪魔討伐の褒賞に討伐した錬金術師に金貨100枚を贈る。男爵にも褒賞を与える。」
「ありがたき幸せ。」
「それと、返却を求めていた槍だがあれはこちらで買い取る。国外からの客人に話の種に使わせて貰うぞ。良いな?」
「承知致しました。」
騎士団長と魔術師長は何やら不服な顔で、言いたい事がある様であったが言うのをやめた。
「では、この案件の取り扱いだな。宰相どうする?」
「そうですな・・・。まずは国外に廃ダンジョンに悪魔が住み着いていた事実を国内、国外に向けて伝える。それを我が国は倒した事も勿論公表致しますが、それが錬金術師とは伝えません。情報を欲した国は我が国に親善大使でも寄越すでしょう。我が国を軽んじた国々がどの様な態度で来るのか今から楽しみですなぁ♪」
宰相は周りの国々に不満を抱えていた様で、愉快な曲芸を前に待っている子供の如く良い笑顔をしている。
「うむ、それで良かろう。」
「陛下、・・・廃ダンジョンに
誰もが気になっていた事を騎士団長が聞いた。
「ーーいや、恐らく生きているダンジョンにも居るのであろうな。ダンジョンはダンジョンコアが壊されるか、ダンジョンコアが長い年月で力を失い消滅するどちらかだ。ダンジョンに悪魔を封じて・・・違うな、最初から悪魔をダンジョンに入れて作り、コアが消滅したら悪魔が表に出る様にしている可能性が高いか・・・。」
「確かにダンジョンが悪魔を封印した場所であるなら、その事が何かに残っていてもおかしくは無いですがそんな書物見た事がありませんからな。」
「そうですわね。ダンジョンとしては簡単に壊されたら困るはずなのに、コアが簡単に壊せる物ってのも怪しいわ〜・・・。」
「あぁ。コアの前には魔物もトラップも無いな。あえて壊して欲しいとしか思えん。」
「男爵、すまぬが悪魔を倒した錬金術師2人と魔獣を早めに国内の廃ダンジョンに向かう様伝えてくれ。必要な経費は宰相に申すが良い。宰相、仕事が増えるが頼むぞ。」
「お任せ下さい。ウェリー男爵が悪魔の問題を片付けてくださるのならば、私の仕事量が多少増える等些末事にございます。」
「ーー男爵、今はその錬金術師達は何をしているのだ?」
おもむろに陛下が男爵に尋ねた。
「全員の錬金術技量を皆一律にある一定まで高めようと勉強会を行なっていると、アイヲン町の商業ギルド長から昨日連絡がございました。・・・余り世情に詳しく無い者達ばかりですので、練習の為に商業ギルドをチタンで改築してしまい今や観光名所になっているとか・・・。」
「随分丈夫な商業ギルドねぇ・・・。」
「建物強くするなら冒険者ギルドの方がいいんじゃ無いのか?」
「冒険者ギルド長が商業ギルドに頼みに突撃して来たので、明日から冒険者ギルドの改築に取り掛かると書かれてました・・・。」
「ーー男爵早く領地に戻られよ・・・。」
「・・・そうさせて頂きます。では陛下、御前を失礼致します。」
ウェリーが退室して騎士団長と魔術師長は口を開いた。
「陛下お聞きしたいのですが、なぜ男爵なんぞに廃ダンジョンの所有権をお渡しになられたのですか?入り口は小さいですが実際広大な面積の土地でございませんか?」
「褒美も多くありませんか〜?」
「お前たちが気にしていたのはそれか?所有権は男爵でなく彼奴の抱える錬金術師に与えたまで。それに彼奴はな、愛国心の塊の様な男よ。王が道を外れぬ限り彼奴は国を守るであろう。
ーーその現れが廃ダンジョンの所有権を欲する所だな。」
「そうでございますな。悪魔のいる廃ダンジョンを所有する事はつまりは、そこで何が起こっても男爵が責任を取ると言う事でございます。男爵は早々に廃ダンジョンを潰さなくてはならなくなったのです。こちらから多くの貴族に命令という形を取ると被害が出た場合、王家を快く思わない者が少なからず出てくるのを男爵が所有権を得る事で先に潰したのです。」
「その上、悪魔を倒した廃ダンジョンは潰れたと聞く。多少の鉱物だけの為に悪魔を相手にせねばならんのだ。金貨100枚と微々たる褒賞で責任を引き受けてくれたのだ。お前達、男爵に要らぬ事を言って不快に思わせるで無いぞ?」
「考えが足りず申し開きもございません。」
「ーー浅慮でございました。お恥ずかしいですわ・・・。」
騎士団長と魔術師長は悪魔を屠る力をつけようと慢心していた己の心と訣別した。
♢♢♢♢♢♢♢
アイヲン町
「いやぁ〜、キールさん飲み込み早くて助かるよ。キールには俺が粗方教えたシュウさんとミランダさんとカルロさんに教えながら冒険者ギルドの改築を行なって貰いたい。人に教えていると、自分が出来ていない部分に気付けるから腕が上がるぞ!」
「承知した。冒険者ギルドの事は任せてくれ、先生。」
「宜しく!ナディアさんを置いておくから、何かあったら指示に従って下さいね。」
「あぁ。」
「婆さんにキールが没頭しすぎて暴走しない様に見張りをさせるのかい。アタシにも何か寄越さないかい!!年寄りだからって馬鹿にすんじゃ無いよ!!腕はまだまだ衰えちゃ無いんだからね!!!」
「じゃあ、ナディアさんはマリーちゃんとエミリアさんも連れてくるので、3人でチタンでアクセサリーを作りながら錬成の練習していて下さい。アクセサリーは人の肌に触れるので純度は最低でも99%までは上げてください。練習ですから個数は求めていないので、お願いしますね。」
「久しぶりに腕がなるわい・・・。ヒッヒッヒ・・・。」
セフィールはマリーとエミリアをナディアの所へ連れて行き説明後、ルークとアオとクロと共にポドムの元へ訪れた。
「こんにちは、ポドムさん。今日はステンレス鋼で作った鍋を20個作って来ました。」
「待ってましたぞ、皆様。そちらは全て買い取りますので受付で代金をお受け取り下さい。
皆様にウェリー男爵から鳥が届きました。「槍は陛下がお買い上げ下さったそうで返せないとの事」「その代わり国内の全廃ダンジョンの所有権を得た事」「悪魔の討伐の褒賞をオガルレ街の領主の元へ取りに直ぐに来る事」が書かれておりました。」
「急ぎですか・・・?」
「今から行って貰いたいのだが。無理そうであるか?足は用意するが。」
「ルークは?」
「あー・・・まぁ、キールが教えてるし良いんじゃね?婆さんも精錬作業が好きって話だし問題ねーんじゃね?」
「そうだな。みんなに伝えてから行きます。」
「今回は仕事で
「・・・なぁ、セフィール。ゼルは分かるんだが何で兵士長も護衛なんだろうな?あの人なんかやらかしてんのか?・・・」
「本当になんなんだろうな?」
不思議に思いながらも、前回からポドムを引いただけの顔ぶれでアイヲン町を出発した。
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