第48話 久しぶりの交信







セフィールはアオとクロと一緒のテントに入りロバートが『護衛の任も受けているから』と見張りとして交代の番に当たっている。因みにルークはロバートと同じテントであったが見張りをしていていないので、悠々と身体を伸ばし寝ている。ビクター魔術師団長と補佐官は同じテントでロバートと交代して見張りを行う事になっている。


アオとクロは丸まり既に眠っていた。セフィールも寝ようと毛布の中に入るとスキルが久しぶりに反応した。


 『賢者様カラデス』


側にいるからもうユーリとの連絡は出来ないと思っていたセフィールは驚いてスキルを起動する。



 『     

              フィール


   私のスキルあったみたい。これが私のスキルなのかフィールのスキルの

  延長なのかは不明。

  それからちょっと確認してみたけど、向こうの世界の検索機械の能力も

  あるみたいなんだ。だから、これからも調べる事は出来るから!!

  あと、今日ルークさんのスキルの話になって鑑定していないから

  分からないって言われて発動する鍵となる言葉を考えている時、頭に

  今まで使った事ない単語が出てきたの。

  もしかしたら起動しなくてもある程度の事は脳に直接出てくる可能性

  あるのかも?もう少し調べてみるね。


   あ、後ね。それでルークさん薬師的なスキル持ってたみたいなんだよね。

  まだ試してないから分かんないんだけど。

  一応ミジュア王国とレメヴァーレ王国は仲良く無かったし、あの2人には

  悟られない様にしたいんだよね。フィールも良い?



                       ユーリ    』




 「(そうか、それで食事の時居心地が悪い様な感じがしたのか。どんなスキルなのか早く知りたいな!ルークもきっと早く試したいだろうから、悪魔討伐が終わったらすぐに帰らなきゃなっ!!よしっ早速ユーリに返事をしないとっ!)」


セフィールは久しぶりのユーリとのやりとりに心が踊った。セフィールは1人の期間が長すぎて想いを上手く相手に伝えるのが苦手である。普段は口数がそこまで多くないが、文字にするとやたら饒舌になり想いをきちんと伝えられる事が出来るこのスキルとは相性がかなり良い。




 『  

       愛するユーリ


   久しぶりの手紙凄く嬉しいよ

  ユーリの手紙を読むと心が満たされる感じがするんだ

  たまにはまた手紙を送ってくれると嬉しい


  ルークはスキル持ちだったんだね

  きっと嬉しいだろうね。早くミジュア王国に帰ってスキル

  試させてあげたいね

  そういえばロバートさんはスキル持っているのかな?

  スキル持っているか聞いた事なかったから、今度スキル聞いて

  持ってたらスキルにあった武器を作ろう


   ユーリ寒くない?大丈夫?寒かったら俺のテントで寝ると良いよ

  スキルで温めているし、クロとアオもいるから暖かいよ

  早くユーリに会いたい


                   フィール      』




少ししてテントの外に人の気配がした。


 「・・・フィール」


外にはユーリが毛布を持って身を縮こませしゃがんでいた。セフィールはユーリをテントの中に招き入れる。


 「本当に暖かいね〜、誘われたから来ちゃったよ〜今更ダメとか言わないよね?」


ユーリは毛布を抱きしめながら少し頬を赤らめ恥ずかしそうにセフィールに聞いた。


 「勿論だ。ユーリと一緒に寝るのは幸せな気持ちになるから出来るだけ一緒に寝て欲しい。それに側にいないと何かあったら嫌だし・・・。」

 「ーーうん・・・私もフィールと一緒が良い・・・。」


セフィールは自分の横に座らせたユーリの頭を優しく撫でながら呟く。


 「(くぅっっ!!好きっっっ!!普段は甘い事そんなに言わないのに何なのさっっっ!!イケメンかよっっっ!!これ錬金術師じゃ無かったらフォルテム王国で天然タラシになってたよね!?良かった・・・錬金術師で・・・フィールの一番は私って事だよねっっ!?・・・はぁ〜・・・向こうの世界じゃこんな幸せな気分になるの幼少時に夢中で遊んでた時位だったけど、恋ってこんなに世界愛せる気持ちになるんだ・・・。)」


ユーリは最初は会わないし怪しい奴だと思っていたので思った事をメールで返信していたが、嫌われたく無いと思い始めてから思った事をそのまま書く事や言う事が出来なくなってきている。段々と向こうの世界にいた時と同じように無意識に取り繕おうとしてしまう。


セフィールは横に寄り添う様に横になったユーリの手を毛布の中で繋いだ。ユーリがセフィールを見るとセフィールは真っ直ぐテントの棟の部分に目線をやったままセフィールがユーリに話しかける。


 「ユーリ最初の頃みたいに何でも言いたい事言って欲しい。俺はユーリの飾らない言葉が大好きなんだ。俺にユーリの心を見せてくれ・・・。ユーリに飾られた言葉で伝えられると俺の事が嫌いになったのかと思ってしまうんだ・・・。」


ユーリの手を握ったセフィールの力が少し強くなる。



 「そっか・・・。でも違うんだよね・・・。やり取りし始めた時は嫌われても別に良いやと思ってやり取りしてたけど、今はフィールに嫌われる事が怖くなっちゃって・・・。不安にさせてごめんね?」


 「なんだ、良かった・・・。ーーこれで実はルークかロバートさん好きになったとか言われたらどうしようかと思ったよ。以前の様に気にせず伝えてくれ。」


 「ーー分かった!フィール大好きっっ!!おやすみっっ!!」


セフィールが返事をしようと思ったら、ユーリはセフィールの頬にキスをして急いで毛布を被ってしまった。



 「俺も大好きだよ、おやすみ」




ーー静かな夜が更ける

  

  

  


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