第49話 交錯する思惑
フォルテム王国
「レメヴァーレ王国のダンジョンが廃ダンジョンに変わったと言うのは真か!?」
「その様に報告を受けております。」
「倒し方はまだ分からんのかっっ!?来年は
豪華な部屋で密談を交わしていたのはフォルテム国王と王太子、報告の為にいたミジュア王国に放っていた間者達の内の1人である小柄な男。間者が再びミジュア王国に行く命を受けた為部屋から出ると、1人の華美なドレスを纏った漆黒の髪の美しい女性が入ってきた。
「あらー?まだ見つかりませんの〜??せめて誰が倒したくらいかは突き止めてくれませんと。何をやっているのかしら役に立たない人間は・・・要らなくてよ?」
扇子で口元を隠し国王を蔑んだ目は長い睫毛によって彼女の美貌を引き立てる。
「ベリアナ・・・。すまない、もう少しだけ待ってくれ・・・。」
「母上・・・。」
「
王妃は颯爽と踵を返して部屋を出て行った。困惑する王太子と顔色の悪い国王を残して。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
フォルテム王城から出てミジュア王国に再び向かう間者の男は、フォルテム王国の城下町にある酒場の木箱の積み重なった路地に入る。
「・・・あいつらバッカじゃないの!?そんなに知りたきゃ金持って行って頭でも下げろっっての!!他の国は頭下げてんのに本当バカ過ぎ。無駄な自尊心捨てろっての!!ーーこの国はもうダメだわね。」
木箱の積み重なった影から出て来たのは10代中頃に見える栗色のウエーブがかった肩までの髪の年若い娘であった。フォルテム王国に雇われ5年間間者として働いていた。しかし、この5年でフォルテム王国が危うい政治基盤の上に成り立っている事を記者や王城で働いている下働きのメイドや庭師や食料配達員に至るまで、王に勘づかれないように慎重に調べていた。
彼女は一流の間者である。ただし雇われているのはフォルテム王国のではなくゼフ王国である。
「(さ、鳥飛ばしときますかっ!!)」
彼女は懐から『届け便り』の紙を懐から取り出すと、息をそっと吹き掛けた。彼女のゼフ王国に飛ばした鳥はヒラヒラと蝶の羽根を羽ばたかせながら飛んで行った。
それを見送った彼女はミジュア王国行き乗合馬車の停留所に向かって軽い足取りで歩き始めた。
♢♢♢♢♢♢♢
ーーぐるる・・・『(マズイな・・・)』
ーーきゅう?『(クロ兄たん何がー?)』
ーーがうう・・・『(2体の悪魔と同時に戦う事になるかも知れん・・・)』
ーーきゅきゅ?『(強いの??)』
ーーがううぅー・・・『(分からん。ユーリを守りながら戦わねばならんからな。)』
ーーきゅーう・・・『(姉たんは守らないとね)』
ーーがうがう『(ビクターという奴がどんだけ戦えるかだな。)』
ーーきゅきゅきゅきゅ『(ロバート兄も強いよっ!セフィール兄は土壇場に強い!!)』
ーーぐるる・・・『(そうだな、
ーーきゅうーーー!!『(ボクも全力で戦うのっっ!!!)』
ーーがぁうう『(アオだけを皆んなが褒めるのは癪だ。我も本気で挑むとしよう)』
早朝の森の中でのアオとクロの決起集会であった。その後2匹は森の魔物である程度お腹を満たして、1匹獲物を持ってセフィール達がまだ起きていないテントの方へと戻って行った。
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朝霧で霞む森の中からアオとクロが出てきた。見張りが再び回ってきたロバートは、まさか2匹が出ているとは思っていなかった為思わず剣を抜く程驚いた。驚かせてごめんねとばかりにアオはロバートの顔を舐め回す。皆んなが起きてくる頃にはアオの唾液でベトベトで顰めっ面のロバートに今度はセフィール達が驚く事になった。
それからクロが獲ってきた獲物の肉を使った朝食を皆んなで食べて廃ダンジョンに向かって再出発をした。
昼頃には新しく廃ダンジョンとなった、聖なる泉の岩場と呼ばれるダンジョン跡に辿り着いた。
何かに気が付いたビクター魔術師団長は馬車を降りるなり、ダンジョンと思われる洞窟入り口の横に向かって慌てて駆け寄り膝をついた。
「なんて事だ!!湖が枯れているっ!!国を出る前に全てのダンジョンを確認した時はあんなに・・・」
ビクター魔術師団長は水気が一切なく地面がひび割れた湖があった場所を手で触り確かめている。
湖はカラカラに乾き猛暑でしばらく雨が降っていないかの様である。ビクター魔術師団長の様子を見ながらセフィールがふと口を開いた。
「・・・どうしてなんだ?」
「ん?何が?」
「ほら、お前と倒したアパオシャって悪魔いただろ?あの悪魔ミジュア王国じゃ『
「確かにな・・・。ここの廃ダンジョンは明らかに熱気あって熱いよな。これ中に入って蒸し焼きとかなんないかな??大丈夫だよね??オレまだモテ期来てないから死ねないんですけど?」
「貴様はすぐ人の話の腰を折る・・・!!・・・分かった。お前が蒸し焼きで死ぬより先にオレが楽にしてやろう。」
「ロバートって冗談通じない系だよね?その剣鞘に納めてくれる??」
シュルッと剣を抜いたロバートがジリジリとルークと距離を詰めていると、いつの間にかロバートの脚にアオが噛みつきカジカジしている。
ーーカジカジ・・・
「「・・・・・・」」
「で、中が熱かった場合どうするかーーだよね。・・・ん??」
「どうしたんだろ?」
「さぁ?」
ユーリが廃ダンジョンの入り口に近づきしゃがみこむ。セフィール達が近付いて何を見つけたのか覗いてみるとセフィールとルークは絶句した。そこにあったのは花一本の致死率がかなり高い『雪の処女』と言われる毒草があったからだ。この毒草は発見されて70年間未だに毒消しが作ることが出来ていない毒草である。
「ユーリそれを触るな!それは猛毒だ。」
セフィールに言われてユーリは頷くと下がった。そして、ゴーグルを急いでみんなに背を向けたまま装着し急いでキーボードを打った。ロバートとルークはユーリのスキルを知らないので興味津々に行動を見ている。
『
もしかしたらここの悪魔2体いるか、まだ廃ダンジョンに
なっていないダンジョンと連動しているかも。
恐らくいる悪魔はタルウィかザリチュ。
タルウィは暗闇にして来る可能性が高いよ。
ザリチュが熱攻撃を得意とする悪魔で弱点は水。
後、毒草操るから毒の対処も必要。
ルークさんにお願いしなきゃならないから
薬草は持ってる?後、毒草全フロアで回収して行った方が良いよ。
ルークさんのスキルがぶっつけ本番だから出来るのかが問題だね・・・。
先にどこかで隠れて試せると良いけど・・・。
』
後ろに立っていたセフィールを座ってメールを送信したユーリが見上げる。セフィールもすぐスキルを起動して内容を確認した。
「なぁ、俺ら仲間はずれとか酷くない?こんなに側にいるのにー・・・。」
「読んでも良いぞ?」
不満げなルークにどの道ルークの事なのでセフィールは誘ってみる。
しかし、セフィールが身体を避けてよく見える様に見せられたが、スキルを覗くルークは首を傾げる。
「いや、それ見えんし。」
「・・・・・・。ルークこっちに来い。」
岩場の影にロバートがルークを連れて消えて行った。
「なんだよ〜野郎とこんな所来ても嬉しく無いっっ!!」
「しっ!!阿呆静かにしろ!!・・・お前に見せて良いって事は2人が警戒してんのはこの国の2人だ・・・。理由は分からんが俺達も気をつけた方が良いだろう。」
「・・・そういや昨日、ユーリちゃんは俺のスキルアイツらに気付かれないように気をつけていたな・・・。」
「お前に見せるって事はお前のスキルの可能性がある。薬草を出来るだけ用意したい所だな・・・。」
「必要ないんじゃね?セフィールがいっぱい持ってんぞ?」
セフィールはスキル内に鉱物以外にも素材になる物は薬草や木、花等様々な物を収納している。
「じゃあどこかで一回試しておきたいな〜・・・。」
「タイミングを探しながらダンジョンは進もむぞ。」
しっかりセフィール達の考えに辿り着いた2人は、レメヴァーレ王国の2人が怪しまない様に『ダンジョンに潜る前に済ませとかないとな!!お前らも行っとけよ!』と尿意があったと匂わせ戻ってきた。
セフィールとユーリはそんな2人を見て、お互い顔を見合わせた。意外にも伝わった様子にお互い驚いてしまう。
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