第12話 もしかして厨二病では無い?(賢者サイド)





日曜日の朝、有理はいつもの様にメールチェックをする。


 「(あ、来てる来てる。なになに・・・?おお!!!ステンレス鋼で鍋作ったんだ!!!!どんだけ物作り名人だよ!!どうやって作ったんだろう・・・動画上げてる感じの人なのかな??)」


有理は少し動画サイトで検索してみたが、流石に工場以外では作り方を上げている人はいなかった。まぁネット動画職人では無いのだろうと思いその事は流した。


 「(加工しているのかな?でも、流石に薬品は危ないしなぁ・・・これは触れないでいいか。加工しなくてもただの鉄よか錆びないしね)」


ネットには1000度以上の温度で溶かすという事が書かれているのだが、有理は読んでいる様で読んでいない。薬品をとやかくいう前にいい加減気付くべきである。

セフィールが問題なく作れているのはヒートの魔法と錬金術の力であった。一般の人間が1000度越す設備を用意する事は工場を買い取らない限り不可能に近いであろう。



   『          フィール


     ステンレス鋼作れたんだ!!おめでとうっっっっ!!!

    しかももう、鍋まで作ったんだって?物作りの天才じゃん!

    フィールもう何でも作れるんじゃない??

    鍋いっぱい作って軌道に乗ったら、今度は別の合金作ってみてよ♪

    アルミ合金とかニッケル合金とか鉄合金とか!!!

    もしかしたら、オリジナルの合金作れちゃうんじゃ無いの?

    そしたらフィールの名前歴史に残っちゃうかもねー♪


                    ユーリ       』



有理は相変わらず適当な返事をする。

セフィールも設定あるから気にしないのだろうと有理は思っている。

軽い朝食を用意して食べ終わり、セフィールの次の返事の為に色々と金属についてネット検索を行う事にした。


 「(へぇ〜ステンレス製品って色んな物があるんだ〜便利良いもんね〜鍋の他にも色々作ってから次の合金作りかなぁ〜・・・)」


最近はセフィールとのこのやり取りが楽しみになって来ている有理は、さっき返事したばかりなのについついメールチェックしてしまう。用事があって年に数回稀にメールのやり取りする事はあっても、用事でも知り合いでも無い相手とこんなにもメールのやり取りをしたのはセフィールが初めてであった。


 「(ーーっっ!?もう返信来てる・・・暇人かよっ!)」



  『         ユーリ

    ユーリに褒められて顔のニヤケが止まらないよ

   でも、俺の力と言うよりユーリが合わせる割合を教えてくれたから

   すぐ出来たんだよね。だから俺の力ってよりユーリのお陰なんだけどね

   ステンレス鍋軽くてとっても使いやすいんだ、確かにあれなら売れると

   思う。残りの素材で片手鍋が後15個位は出来るから、それを町に売りに

   行こうと思う。あと、もう隣国に入ったんだ

   ニッケルが思ったよりも鉱物に対しての含有量が少なかったから、

   これからこの国を回って鉱物探しをしようと思う。


   それから、隣国に入ってすぐにフォルテム王国から逃げて移り住んだ

   錬金術師達の村を見つけたんだ。何とか生き延びててくれたけど、

   みんな俺の事すごく警戒してたんだ。ずっとフォルテム王国の影に

   怯えながら暮らしていたって聞いて辛かった。

   今日、村のみんなを集めて錬金術師を苦しめていた法律が廃止された

   事を村で知り合ったルークって奴と一緒に伝える事になったんだ

   ユーリ以外で久しぶりにまともに話をする事が出来たよ


   ステンレス鋼の知識本当にありがとう、もっと良いものを作ったら

   いつかユーリにプレゼントしたいと思っているんだ。

   まだ方法は分からないけど、このスキルがあればいつか出来ると

   信じているんだ 俺のスキルレベルが上がるまで待っていて欲しい

    

                     フィール     』

   


 「(・・・なんだこれ、厨二病なのにイケメン臭いセリフ吐いてんぞ!!ふふ・・・)」


人付き合いで久しぶりに優しい気持ちを抱き、有理は思わず笑みが溢れる。有理は子供の頃から感受性が強過ぎて『どうせ人間は裏切る』『人間はいざとなれば一番冷たい生き物』という考えに23年生きてきて至ってしまった。

有理の小さい頃は博愛的であったが、その考えに至ってしまってからは人間に関心も興味も薄れて行った。最初はセフィールに心を晒して嫌われてメール来なくなっても問題ないと思っていたが、最近はセフィールに嫌われたく無いという気持ちが芽生えて始めている。


 「(さて、返信するか〜)」


  『        フィール

    いやいや、私は調べたらわかる事教えただけだから。

   これは完全にフィールの力だからね!

   いつの間にか隣国に入ってるし!!無事に入れて良かったよ

   凄いね〜鍋15個作るつもりなんだ?スプーンとかフォークとか

   お皿やコップもステンレスで作ったら良いみたいだよ

   真空断熱のコップとかも良いんじゃ無い?

   二重構造になっていて中に空洞を作って、その中の空間の空気を抜いて

   真空状態にすれば冷めにくい温くなりにくいコップになるから

   他に売るならこれが良いんじゃ無い?嵩張らないし。

  

    そっかー・・・ニッケル含有量少なかったのかー・・・

   余り無茶してケガしない様にね?

   無事に逃げ延びた錬金術師さん達いたんだね

   これからはやりたい事たくさん見つけて生きて欲しいね

   

    ステンレスの手作りプレゼント、その気持ちが嬉しいよ

    期待しないで待ってるね♪


                      ユーリ  』


有理の返信する顔には笑みが溢れる。色の無い世界に色が付いた様で、いつもと同じ室内や窓の外が光って見えた。

真空断熱の説明が分かりにくかったかな?と思った有理は画像添付を思いついた。


 「(うーん、画像の添付とかしてもいいかなぁ?その方がきっと伝わると思うんだけどあんまり送ってデータ通信量超えてもセフィールが困るしなぁ・・・私は通信制限無い契約してるから良いけど・・・。うーん・・・返信早いし携帯の可能性高いよなー・・・。そうだ、ドメイン何になっているか見ればいいのか)」


ーーカチカチ


 「え・・・」


送信者のアドレスを見るとそこには『ーーー※※※@※※※ーーー』とあるだけであった。

ドメインがない事も異常であったがアドレスも無い。こんなものがアドレスとして登録されるはずが無い。

驚いた有理は全部届いたアドレスをチェックしたが、どれも同じであった。

ネットでドメインを調べてみたが、一切出て来なかった。



 「ーーー本当に異世界から・・・?」



有理はまだ半信半疑ではあるが、異常なアドレスを前に呆然とノートパソコンの前で固まっていた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る