第27話 年齢と動機と目指すモノ






2時間かけ村に帰り着いたセフィール達は帰って来た事に気付き、出迎えてくれた村の錬金術師達にお土産を配った。最近の村の錬金術師達は、自分達が法律に縛られない事に安堵し笑顔が良く見られ村の雰囲気が明るくなって来ていて、喜んでお土産を受け取ってくれている。



 「わーっっっ!すごく素敵なお人形さんありがとうっっっっ!!!大事にするね!!」

 「美味しそうなお菓子ね・・・。有難く頂戴するわ。それより、ルーク貴方は何で一緒に行ったの?貴方何か出来たのかしら?セフィールさんに集ってたんじゃないのかしら?」

 「はぁっっ!?お前マジ何なの!?ーー俺はセフィールの弟子になったの。俺はこれからセフィールの手足となって錬金術師として働くんだよ。」

 「アンタに出来るわけないでしょ!!大した錬金術も出来ない癖にっ!!!私はアンタと違ってすぐに諦めたりなんかしなかったわよ!!!」


 「・・・エミリアさん。何か思うところがあるんだろうが、親しくても言っちゃいけない事あるだろ。ルークは薬の錬成が得意な様だから、今後薬の錬成を中心に勉強して貰うつもりだ。ルークは伸びしろがあると感じるから勉強し直せば上を目指せると思うんだ。それにルークはついて来てくれると、俺の聞きたいことや言いたい事をすぐ言ってくれたりするから他の人とのやり取りがしやすいしな。」


 「なんだよっっ!!!みんなの前で恥ずかしいじゃねーかっっ!!」



自分の頬が赤くなったのを誤魔化す様にルークがちゃちゃを入れた。その反対でエミリアは俯いて深刻そうな顔をしていた。



 「どうしたの?お姉ちゃん??具合悪いの??」


 「それで錬金術師のみんなにお願いがあるんですが、これからこの領内で錬金術師を登用したいと領主様が仰って下さっているんだ。衣食住は3ヶ月間領主様が持ってくださる上に必要数の品を納めれば最低限のお給金は下さり、能力に応じて賃金上乗せもある。俺達と一緒に行きたい人は明日にでもルークとアイヲン町に行って商業ギルドで登録してきて欲しいんだ。」


セフィールの突然の話を聞いて皆動揺を隠しきれない。



 「騒ぐな騒ぐな、心配すんなギルド登録費用も向こうが持ってくれるらしいからな。後、騙されてるって思うかもしんねーし、実際俺は騙されてるって思ってた。まぁ今も不安だが・・・でもよ、実際領主サマに会ってみて領民の事考えてるヤツなんだって感じたから俺はセフィールと共にフォルテム王国での惨めな錬金術師を辞めて、ミジュア王国の誇れる錬金術師を目指す!!惨めな錬金術師にさよならしたい奴は俺達について来い!!!」


 「それはこのババァでも良いのかい??」

 「あぁ、錬金術が出来るなら問題ない。錬金術師の利点は年齢に関係ないって強みがあるからな。」

 「なら、アタシは一緒に行かせて貰うよ。」

 「婆さん、無茶すんなよ。」

 「お前達はアタシが有名になるのを指を咥えて見てるが良いさ。ヒッヒッヒ。」

 「隣の婆さんが行くならワシも行こう。婆さん一人が有名になる歯痒い思いはしたくないからのぅ」

 「オレも行こうかな・・・。もうコソコソ生きなくて良くなったんだから、錬金術みんなに知ってもらいたいし・・・。母さんや父さんに自分達が間違ってたって気付いて欲しいし・・・。」

 「お姉ちゃんっっ!!マリーも行くっっ!!」

 「え!?マリー!?」

 「お姉ちゃん、ずっと頑張ってたのに行かないの?マリーは錬金術師になる!!」

 「そうか、マリーちゃんはほとんど錬金術勉強してないもんな。これから新しい金属や錬成の事をみんなに教えるから、マリーちゃんもみんなと一緒に勉強だ。」

 「マリー頑張るねっっ!!」


マリーはやる気をみなぎらせ、拳を空に突き上げている。


 「エミリアさんはどうするんだ?1人ここに残るのもアリだとは思うけど・・・」


 「無いわよっっっっ!!!何が『アリだとは思う』よ!!行くわよっっ!!ここで行かなきゃ一生日陰暮らしじゃ無い!!!絶対、絶対、ぜーったいっっ家族や学校の連中を見返してやるんだからっっっ!!!」


 「まー・・・動機なんかなんでも良いんじゃね?続ける事が大事なんだし。じゃあ、明日登録全員して貰うか。」

 「流石に全員はギルドが大変だろうから、半分の4人しに行って貰って良いかな?残りの3人はどの錬金術が得意かどれ位の錬金術が出来るのかをみたいから。」

 「そうだな、じゃあー・・・明日は婆さん爺さんとシュウとミランダで良いか?婆さんと爺さんは流石に往復はキツいだろうから向こうで宿取るから、必要なもんは持って来いよ?」

 「おお!何十年振りかの宿かっっ!!って金は誰が出すんだい!!」

 「大丈夫です。安宿ですけど俺が払いますから。」

 「セフィール坊は優しいのう・・・今度宿代代わりに面白い錬金術を教えてやろう♪」

 「ありがとうございますっっ!!」


80歳の爺さん事カルロと78歳の婆さん事ナディア。


 「あ、え・・・と、頑張りますので、よろしくお願いします・・・。」

 「私は錬金術で人助けをする事が夢だったの。これからよろしくね?リーダー。」


自信なさげな16歳のシュウとセフィールと固い握手を交わす20歳のミランダ。


 「こちらこそ、これからよろしくお願いしますね!」



ーーこの日。村の錬金術師達全員隠れ住むのを止める事を決めた。




翌朝、護衛にクロを付け4人を連れたルークはアイヲン町に向かった。


残ったセフィールは残った3人の錬金術の技量を調べる為にルークの家に集まって貰った。


 「マリーちゃんは錬金術ほとんど知らないのかな?」

 「うん。お姉ちゃんから少しだけ教えて貰っているけど、全然出来ないの。」

 「セフィールさん、マリーが5歳になってから家を出たから学校にも家庭教師にも勉強何も教わってないの。私は魔法学校の錬金術科に中等部までいたわ。」

 「そっか、うん。分かった。じゃあマリーちゃんは、まずはこの小さな石から鉄だけを取り出せる様に練習してみようか?」

 「はい!師匠!!おねがいしますっっ!!」


 「まずは俺のお手本からね?石を触って石と自分の中に流れる魔力を繋ぐ・・・石が身体の一部になる様に感じるんだ。ーー全部の神経を石に繋いで、魔力で繋がったらそこから鉄以外のモノを外していく。鉄だけに意識を残して・・・それ以外をふるいに掛けて落とす様に・・・。

大方の異物が取れたら、今度は空気や紛れている鉄以外の金属を除去する。するとこういった純度の高い鉄が生まれる。これが精錬作業って言うんだ。」


 「えっ!?そうなの!?空気?・・・え?え?学校じゃその一個前の段階で精錬作業って言ってたわよ!?私もそれが精錬作業って思ってたから、それ以上異物取ろうなんて思った事ないし・・・。」

 「オレもエミリアさんと同じ様な感じで学校で習ったぞ?とは言ってもエミリアさんよりも何十年も前だけがな。」

 「・・・と言う事は、もしかしてフォルム王国の学校って錬金術教えられる教師が居なかったのか?」

 「そもそも国全体が錬金術を教えられる程錬金術を知っている人間が居なかったって事か・・・。」

 「セフィールさん、悪いのだがオレ達村人全員にマリーちゃんと同じ様に錬金術を教えてくれまいか?」


 「分かりました。それが良いでしょうね。明日アイヲン町に行ってギルド登録した後、ギルド長にみんなに錬金術を教えるのに良い場所を借りられないか聞いてみましょう。3人とも家にある大事な物を持って来てください。すぐ帰るか分かりませんから。」


 「分かった。これから宜しく頼む。セフィール先生?」

 「歳上なんですから気にせず名前で呼んでください。」

 「歳上とは言っても4歳だけだ。それに貴方の錬金術は美しい。この歳で師を仰ぐ事になろうとは・・・感慨深いな・・・。やはり、オレはケジメとしてセフィールさんの事は先生と呼ばせて頂きたい。その方が貴方も歳上のオレに教えやすいだろう?」

 「ーーそこまで仰るなら俺は構いませんが・・・。」

 「では、先生宜しく頼む。」


セフィールとは歳が近いキールはこれから錬金術の勉強をし直す事に前向きな姿勢を見せている。


 「師匠!よろしくたのむ!」

 「真似しないの!ーー私も先生と呼ばせて貰うわ。これから私達を引っ張って行って下さいね?セフィール先生。」

 「俺に出来る事を精一杯やらせて貰うよ。3人ともよろしく。」




ーー年齢がバラバラな錬金術師達がこれから一緒に錬金術について一から学び直す。





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