第6話 鉱物大量ゲット(錬金術師サイド)
ふらふらと土煙が巻き起こっている中をかき分けながらアオを捜す。
土煙が落ち着いてくると巨大な影が見えてきた。セフィールは魔物に殺されるかも知れない恐怖は無かった。ただ、アオの姿を確認したかった。生きていると信じて捜し続ける。
ーードンッッ!!
セフィールは後頭部を殴られ勢いで倒れた。
「・・・あお・・・。」
最後にアオの側で死にたいな・・・と思いながら目を瞑ると、何故か後頭部が重い。背中を何かでバシバシ殴られる。
「・・・いたいな・・・。」
ーー『きゅーるるるるるー♪』
「・・・あお?・・・アオ?アオなのかっっっ!?」
ーー『きゅー』
頭に乗っかったままのアオがセフィールの顔を細長い舌で舐めてくる。クロが現れアオを加えるとポイっとほったり投げた。頭が軽くなったセフィールは起き上がり周辺を確認する。
土煙が落ち着いてくると巨大な影の正体も分かった。巨大な影の正体はゴーレムであった。
ゴーレムの上半身は砕け散っており、ゴーレムの中には鉱物が大量に詰まっていた。投げられたアオが戻ってきたのでセフィールはアオに怪我がないかを確認した。
「・・・お前は強かったんだな〜?びっくりしたぞ。アオ、もう怖い事はしたらダメだぞ?俺が不安で死んでしまうだろ。でも、よく倒してくれたな、ありがとう!」
優しく持ち上げ腕に抱え額を撫でるとアオは「きゅい!」と鳴きどんなもんだよと言わんばかりの雰囲気を出していた。それにセフィールは苦笑いするとアオを下ろし、残骸になっているゴーレムについて調べる事にした。
「ここにあった何かに魔力が集まって、鉱物で体を作りゴーレムになったのかも知れないな。この鉱物の中に原因が掴める物があるかも知れないな。」
セフィールは鉱物の詰まったゴーレムの中に手を入れ原因になりそうな物を探し始めた。すると、手に明らかな魔力の篭った物が触れた。それを鉱石の中から引き出してみると、黒色の大きな魔石が出てきた。
「なんだこれ・・・。こんなに大きな魔石みた事ないぞ・・・。それに真っ黒ってのも初めてだな・・・。普通の赤紫の魔石とは全く違うな。まだ大量の魔力が残っているみたいだし・・・。これギルドに報告しないといけないのか?あんま行きたくないんだよな〜。あそこ錬金術師に冷たすぎて説明に心折れそう・・・。」
セフィールは巨大な魔石をどうするかで悩んでいるとクロが近付いてきた。それを考えながら見るともなくみているとクロが魔石を咥え「え?」と思った時には遅くガリガリ食べ始めた。
「ちょっ!!ちょっと待てクロ!!!そんなもん食ったら腹壊す!!!ほら、吐き出しなさい!!」
慌てて魔石を取り上げようとするセフィールの手から魔石を守りながら、クロは凄まじい咀嚼音をさせながらみるみるうちに魔石が無くなっていった。クロは問題ないと言いたげに尻尾を振っていた。セフィールはその様子に気持ちを切り替えた。
「・・・。うん!!しょうがないよな!!犬が食べる事もある!!!魔石がたまたまあって、それをたまたま犬が食べたんだ。これはギルドに報告しなくて良いよね??物ないから俺が嘘言っているって言われるだろうし。わざわざ嫌味言われに行くのは嫌だからね!・・・さ、この中から鉄とニッケルとクロム探し出さないとな。」
見無かった事にして、ゴーレムの中の鉱石を地面に出していった。
「うーん・・・黒っぽい鉱石多いぞ?ぱっと見分かんないな・・・。錆びにくいか調べないとクロムか分からないかなー?まー鉄鉱石だけは錆びて赤かったり赤黒かったり変色しているし触った手匂ったら鉄臭いから分かるんだけどなー・・・。取り敢えず鉄だけ分けるか。」
地面に座り山になっている鉱石から鉄鉱石のみ取り出していく。アオとクロも前足や尻尾で取り出している。一通り鉄鉱石は集め終わり、当初の予定より遥かに多かった為に持ってきた袋では入りきらない為どうするかセフィールは考えるがどうしようもないので他の鉱物仕分けに移る。
確認の為に「賢者との交信」を発動する。
『素材ヲボードニ収納シマスカ?』
「あ、え?はい。」
セフィールはよく分からないまま返事をしてしまった。ボードが光り目の前の鉱物の山が一瞬で消えた。
ボードには素材一覧と書かれている。そこには「鉄鉱石(未精錬)70Kg・ペントランド鉱(未精錬)30Kg・クロム鉄鉱(未精錬)10Kg・銅鉱(未精錬)25Kg」等の文字が浮かんでいる。金や銀、ダイヤモンドも少しある様だ。
「このスキルあったらいちいち調べなくてもすぐ分かるとか便利過ぎだろ!!それに鉱石持ち運びも楽だし!!超級魔法の異空間収納に近いだろ!!
んーしかし、ニッケルは手に入らなかったみたいだなー・・・残念。」
『ペンドランド鉱の中ニ、ニッケルガ含マレテイマス。他ニモ別名デ、ニッケルガ含マレテイル鉱石ガアリマスガ、今回ノ鉱石ハペントランド鉱デシタ。精錬シテ「ニッケル」ヲ取リ出シテ下サイ。』
「馴染みのない鉱物の名前ばっかりの上、鉱石の名前も違う物があるのかややこしい・・・。」
「全部の材料が揃ったし、銅も手に入ったな。もしかして全部手に入ったって事はこのゴーレムは他の鉱山を渡り歩いてきたのかもしれないな・・・。普通は全部一気に揃わないだろ・・・。洞窟に戻ったら精錬早速しよう。クロ、アオそろそろ帰るぞ〜」
もう飽き始めた2匹はセフィールの後をトトトトッッとついて来た。外はもう薄暗くなっていた。
「しまったなぁ・・・。こんなに遅くなるつもりなかったのにな〜・・・帰り着く頃には夜中だよな。クロ、アオ今日はこの鉱山で泊まって明日帰るがそれでもいいか?」
クロは森の中に消えていき、アオは坑道に戻って行った。
多分良いって事だろうと2匹の為に持ってきていたお皿に、水を錬金術用の水魔法でゆっくり溜めた。
自分の水も水筒にゆっくり溜めた。朝の残りのお肉は少しになっていたが、パン一個を分け合うよりセフィールにはよっぽど有難かったので鼻歌まじりに3等分する。2匹は食べ盛りだろうと肉を多めに分けておいた。
薄汚れた深緑のコートを地面に敷いてその上に座るとカットしたお肉を摘みながら、現状をユーリに伝えようと賢者との交信を発動した。
『 ユーリ
一昨日はステンレス鋼に必要な鉱物を詳しく教えてくれてありがとう。
お陰で必要な鉱物を揃えることが出来たよ。後は精錬して、教えて貰った
割合で錬成を試みるだけだよ。ステンレス鋼出来たら報告するね。
原子の話もとても勉強になった。
これを知らないまま死ななくて良かった本当にありがとう。
後、縁を切られた原因なんだが、実はこのスキルも関係があって
スキルを生まれ持っている子供は5人に1人程度の確率って言うのはユーリの
住んでいる国も同じだとは思うんだが、実用性の高いスキルが多いから
当然期待されて、スキルを持っている事が分かってうちの両親や村中が
お祝いしてくれたんだ。
5歳にスキルを持っている事がわかった後、12歳まで発動出来なかったから
役立たずスキルを持つ子供として捨てられたってだけだ。
弟はスキル持ちじゃなかったが、俺みたいに村中で陰口や嫌味を言われない
から普通に生活していたよ。スキル持ってて期待してたのに使えない奴より
最初から使えない方が周りの目も違うから俺を捨て弟を取ったんだろうな。
それに、俺が発動できる魔法が錬金術師特有の魔法ってのも
良くなかったんだろうな。錬金術師特有魔法は、魔法術師と違って
ヒートで温めるだけ、クールで覚ますだけ、水魔法はコップいっぱいに
するのに1分はかかる。電気魔法はしょぼいし。
俺の国だと錬金術師は冒険者登録もさせて貰えない。
こっちの愚痴ばっかり聞いて貰って申し訳ないから、ユーリも
何か悩みや愚痴があったら聞かせて欲しい。
俺じゃ役に立たないだろうけど聞くだけなら俺でも出来るから。
あ、友達この前まで居なかったんだけど黒い犬のクロと青い大きな
蜥蜴のアオが友達になってくれました。ユーリの事も友達って勝手に
思ってます。
失礼過ぎたよね、ごめん。
セフィール』
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