第7話 安らぎの時間(前半賢者サイド/後半錬金術師サイド)







 休みの朝、有理はいつもより遅く起きて顔を洗い歯を磨き服を着替えてからノートパソコンを起動して、その間に冷蔵庫からお茶の入ったペットボトルを出してコップに注ぎテーブルに置いてからノートパソコンに自称錬金術師君からメールが来てないかチェックをする。

まだ来ていなかったのでネットでTV番組を観ながら、朝食用に買っていたナンドックを電子レンジで加熱して食べ今日はコンビニじゃなくてスーパーマーケットに行こうか考える。


メールをもう一回確認したら行ってこようとメールを開くと、メールアドレスで振分ける様に自称錬金術師のアドレスの専用ボックスを作ったのだがそこに一件新着のマークが付いていた。



 「(おっナイスタイミング!!!なんて返してきたかな〜?)」



お茶を飲んでから、早速開いてみると前回よりも長くなった返信が来ていた。


 「(一昨日?昨日返信したのに何言ってんだ?・・・まぁいいか。えーっと、え?昨晩から今の間に鉱物揃えたって設定?厳しくない?流石にちゃんと設定練ってくれないと・・・。まぁいいや。

んで、縁切られた原因は・・・っと。ふぅーん、スキルねぇ・・・全員持っている訳でもないスキル発動しなかっただけで村中の白い目に耐えられないで12歳で追い出すとか、鬼親かー・・・。まぁ放任か虐待受けて生きてきたのかもね・・・。話的にはどっちも含んでいるのかも?)」


虐待や放任によって辛い日々を送ったから、メールで見ず知らずの他人と関わろうと頑張っているとか?と有理は考えていた。知り合いよりも全く見ず知らずの他人の方が話せることもあるしな!と思考をまとめ続きを読む。



 「(へー・・・錬金術師に向いた魔法があるんだ?それで錬金術師選ぶしか無かったって事か〜・・・なーるほど。分からなくも無い設定だね。

おお、気遣いできる男だー。『聞くだけなら俺でも出来る』って敢えて『俺に支えさせて』とか言わないのが良いね。俺に支えさせてくれとか、こんな関係で言われたら結婚詐欺師じゃん!!ってなるよね。

へー・・・犬と蜥蜴買っているんだ。うん、1人暮らしってのは分かったわ。ほほう・・・私を友達認定しているのか。この後友達に金貸してとか泊めてとか言って来そうな、怪しさこの上ないセリフだけどその時は切るだけだしね。)」


このメールに返信したらスーパーマーケットに行ってこようと、有理は返信を打ち始めた。




 『           フィール


   素材集めるのめちゃくちゃ早かったね!!びっくりしたよ!!

  フィールなら出来るよ!!応援してるっ!!!


   スキルって後から目覚めるもんじゃ無いの?フィールは普通なんじゃ無い?

  経験積むのに必要な年月ってみんな違うんじゃ無い?親と村人は早計だよね。

  過去を無かった事には出来ないだろうけど、フィールが頑張ったから

  出来たんだし、そこは胸を張って欲しいかも。


   後、錬金術師特有の魔法ってしょぼいって言ってたやつなんだけど

  それってしょぼいとかじゃ無いんじゃ無い?

  水ってもしかして精製水だから時間かかってるとかなんじゃ?

  不純物取り除いているから時間掛かっているとか?

  ヒートって熱くしょうとしたら金属溶かせるまで熱く出来たりしない?

  クールも均一に一気に冷却出来るんじゃ?電気は電気分解とかする用とか。

  

   今は悩みは無いかなー田舎でやる事無いって位かな。

  なんか相談したい事出来たらよろしくー


   犬とトカゲ飼い始めたの?1人暮らしだと世話大変じゃ無い?

  飼えなくなったらちゃんと里親探すんだよー?もし見つかりそうに無かったら

  私も里親探すから。捨てちゃダメだよ〜


               ユーリ     』


                                 

 「(まーこんなもんでいいか。取り敢えずスーパーマーケットに行ってお菓子とカップ麺と冷凍食品にパンも買って来ようかな。)」


送信した後、買い物の用意をし有理は買い物に出て行った。



   

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 残り物の夕御飯を食べた後、セフィールは一気に色んな鉱物が手に入った事に浮かれていた。

このままだと寝付ける気がし無いと思い、せめて精錬だけして寝ようと思いいそいそとスキルを発動すると素材収納ボードを選択する。余りにも大量にある為、一種類のみ精錬する事にした。


 「クロムってのを精錬してみるか。量少ない方だし。」


ーーゴロゴロゴロ・・・


10キロのクロム鉄鉱石が地面に転がり落ちた。その脇にセフィールは座ると目を閉じ手を石にかざし錬金術を行う。

クロムと思われる物を感じ取り、その他不純物を落としていく。集中して練り上げて行くと一切の不純物の無い状態まで行き着いた。


 「これがクロム・・・ユーリ様のおっしゃる通り銀色になったな・・・」


目を開いたそこには銀色の塊が残っていた。だいぶん量は減ったがそれでも実験するには十分な量だ。

鍋の生産を始めるので有ればもっと必要だろうが今はまず、ステンレス鋼を成功させない事には話にならない。

高揚した気分が精錬した事で少し落ち着き、寝る事にしたのでクロムを素材収納ボードに収納する。素材一覧の『クロム鉄鉱(未精錬)10Kg』と取り出す前は書かれてあったのが精錬後に収納すると『クロム 4・5Kg』と変わっていた。


コートの上に横になると夜になり冷えて来た洞窟内にヒートの魔法を使い温めた。食事を終えたアオがセフィールの近くで地べたに丸まり既に寝ている。クロを見るといつの間にか戻って来ていて置いていた肉を食べ終わっており、横になっているセフィールの背後に移動するとセフィールに守る様に寄り添い伏せた。



 「2とも大好きだよ、お休み・・・」


 返事をクロがする様に長い尻尾をセフィールの脚に撫でる様に乗せた。ぼっち歴の長いセフィールにはもう2匹は家族になっていた。今までの人生の中で一番安らげている時間であった。







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