第44話 有理と3人の特使
有理はみんなが王と対面している間、待合室で1人物思いに耽る。
「はぁー・・・(何となく勢いで結婚しちゃったけど、フィールにとって私って何なんだろ?嫌じゃ無いのかな・・・。私みたいな荒んだ心の人間がフィールみたいな優しい人間に相応しく無いよね・・・。めんどくさいって思われてそうだし、私の荒み具合が伝染したらどうしよう・・・。それより嫌われるのが先だよねー・・・。だからと言ってこんな知らない世界で放り出されたら死んじゃうよね・・・あぁー・・・)」
大きな溜息を吐いたと同時にドアをノックする音が聞こえ、慌てて有理は返事をすると騎士が1人入ってきた。
「失礼致します。こちらの方々も待合室にご一緒させて頂くのですがよろしいですか?」
騎士の後ろから美しい女性と2人の男性、その侍従らしき人達が姿を見せた。
「あっ、はいっ!どうぞどうぞっっ!!」
知らない土地で知らない人と関わる際はやはりお国柄が出てしまう。商人の様な腰の低さでささっと隅へ移動した有理は入ってきた人たちが座るまで立って待っている。騎士は全員が入ると一礼して出て行った。
「(えっとー・・・上座ってこの世界あるのかな・・・?確実にこのブロンド美女は良いとこの貴族でしょ?歳が結構上のイケオジは騎士服っぽいしんだよね。でも手もゴツゴツしてないし筋肉質じゃ無いから・・・魔導師?魔術師?とかそんなのかな?この人も勲章いっぱい付けてるし位高いよね〜。最後はこの軽薄そうな兄ちゃんか・・・。」
ちらっと隣に座るローブを羽織っているメガネを掛けた歳が同じ位であろう男を見遣る。
男は有理と目が合うとウインクを飛ばしてきた。
「(んー・・・・・・。魔法使い?魔法使いでも戦うんだから筋肉多少はいるでしょ。・・・筋力も何も無さそう。こんな所に来れる人なんだからきっと頭の回転が良いのか・・・。そうなると文官・・・いや、文官がこんな場所で貴族を前に我関せずウインクしてくる人ほとんど居ないと思うんだよね・・・貴族にしては微妙・・・洗練さ特に無いんだよね。・・・この人も賢者とか政治指南役とかその辺かも・・・?)」
有理は他人に関心は無いが、余り人間が好きでは無い故に自分にとって安全な人間かを観察するのは好きである。スイッチが入り推測を立てていると肩をトントンと叩かれ、有理は我に返った。
「ねぇ?キミ大丈夫??」
「え?何がでしょうか?」
「さっきからキミに話しかけていたんだけど?」
上流階級だと思われる女性と男性2人、侍従の視線を浴びている事にようやく有理は気が付いた。
「っ!?それは気づかず、大変失礼致しましたっっ!」
「ふふ、体調が優れないのかと思いましたが要らぬ杞憂でしたわね?」
「では、改めて。折角こちらで会ったのでご縁かと思いましてご挨拶をと。ーー僕はゼフ王国の賢者でレイドラン・ラクート。よろしくね?お嬢さん?」
「・・・私はレメヴァーレ王国魔術師団長、ジェイルド・ビクターだ。」
「
全員の挨拶を聞いて有理は後悔した。「これ一番最初に私が挨拶しなきゃならなかった案件ですよね!?あ、でも位が上の人からパターンもあるか??でも、オチが平民とか痛すぎる・・・。」と。そして、大人しく城下で待っていれば良かったと・・・。
「皆様すごい肩書きで私が最後になってしまって名乗りにくいのですが、・・・ミジュア王国の平民で有理と申します。」
誰も口にこそ出さなかったが、そこにいる全員が驚いた空気を有理は感じ取り背中にじっとりと汗をかく。
「(あーっっっ!!帰りたい帰りたいっっ!!この雰囲気絶対平民に挨拶した感じじゃ無いじゃん!!)」
「・・・平民と言ってもこの様な場所に来れるのですもの、きっと何か功績でもあるのでしょう?」
「え、いえ。功績なんて無いです。昨日この国に来たばかりなんです。」
「では、何か
無いとは思うがもしやこの娘が悪魔討伐を知っている可能性があるのでは?と3人は考え、質問の方向を変えていく。
「
有理は仲良くも無い人間に自分の中に踏み込まれるのが好きでは無い。有理の心の壁は高くて厚い。だから有理はのらりくらりと質問を躱し、こちらから質問責めに変える。
「え?えぇ。一緒に謁見はしますけど、知り合ったのはこちらのお城に着いてからよ。」
「そう言えば・・・ユーリは最近この国に悪魔が出たって知ってる?」
「悪魔ですか?出たって話は聞きましたけどーー悪魔って他の国には出ないんですか?遠い所に住んでてこちらに来たので世情に詳しく無いんで宜しかったら浅学
「あー、うん。教えてあげるね?どの国も数年から100年の間に一度悪魔が現れて甚大な被害をもたらすんだ。大体8日程度被害をもたらすと、どこへとも無く姿を消す。これが古い書物では1000年前から続いている記録があるんだよ。ユーリはどこに消えたと思う?」
「悪魔なんだから魔界があるんじゃ無いんですか??ーーそう言えば、この間現れたって言う悪魔がドゥルジ・ナスって名前らしいんですけど、この名前って意味あるんですか?」
「ーー意味とは?」
「名前って何かから取って付けたりするじゃ無いですか?『ドゥルジ』又は『ナス』の由来って何なのかなと。語呂が良かったのかな?」
「さぁ・・・悪魔の名前の由来なんて聞いた事ないな。似た様な単語も僕の国では聞いた事ないよ。」
「私の国でも無いな。」
「
「こちらの国の言葉じゃ無いのかい?誰かに聞いてみたら?」
「そうですね、そうします!それじゃあ、皆様の国に出る悪魔の名前の由来聞いた事ありますか?」
「・・・いや無いな。固有名詞なのかな・・・。」
「同じく。」
「そう言えば知らないわね・・・。」
確かに悪魔の名前の由来を聞いた事が無いことに3人は違和感を覚えた。「そうですかー、成る程〜。」と考える様子に、この娘は何か自分達が気が付いていない事に気が付いているのではと思い話を聞き出そうとレイドランが口を開こうとした瞬間、扉がノックされた。
「失礼致します。ユーリ様お連れ様がお戻りになられました。こちらへ。」
部屋に残った人達に軽く会釈した有理を騎士が連れて出て行く。
「(あの娘が疑問に思ったことは一体なんなんだ?名前の由来が一体何だと言うんだ!?あーっっっ!!どこに居るのか聞いとけば良かったーっっっ!!)」
ーー3人は悶々としたままミジュア国王の謁見へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます