第45話 0と1の世界と干渉者
城を出た後セフィール達は王都にいる間お世話になる、ウェリー男爵の王都にあるセカンドハウスに案内された。
「みんなご苦労だった。王への謁見は緊張しただろう?ゆっくり2、3日王都を満喫して帰ると良い。」
「本当疲れた〜、俺もユーリちゃんと控え室で待っときゃ良かったわ〜・・・。」
ルークは応接室のソファーに脚を開いてのけぞる様に深く座った。その隣にロバートが座り反対側のソファーにセフィールとユーリが座った。アオとクロはユーリの座るソファーの横にごろりと横になった。
「ルークさん!!こっちはこっちで大変だったんですからね!?なんか騎士が王女様や魔術師団長、賢者も同室に入れて来やがったんですよ!!緊張しっぱなしだし、変に探り入れてくる感じで疲れた〜・・・。」
「そうなのか?・・・ユーリに酷い事言ったりして来なかったか?」
「うん、大丈夫!!心配してくれてありがとうっ!!ーーあっ!!そうそう、ずっと疑問に思ってたんだけど、悪魔の名前の由来ってみんな知ってる?その3人にも聞いたんだけど知る限り聞いたことないんだって。」
ユーリは気になっていた事を聞いた後、テーブルに出されたお菓子を摘んで口に入れシンプルな美味しさに感動している。アオとクロはそれを見てユーリにおねだりを開始している。「魔獣だし問題ないよね??」とユーリは小声で喋りながら周りから見えない様にこそこそと、アオとクロにお菓子を食べさせている。
「名前の由来?俺たちがいたフォルテム王国は『ドゥルズーヤー』『ムーシュ』が出るな。後、2つダンジョンがあるから2体いるんだろうけど。んーーーセフィールは由来知ってるか?」
「いや、フォルテム王国内にあった図書館の閲覧可能な本は全て読んできたがそんな記述は見かけたことないな・・・。ウェリー男爵は聞いた事ありますか?」
「全く無いな。ーーそれで何が分かったのだね?」
ーーはぐはぐ・・・
ーーかじかじ・・・
「(わぁーっっ!アオとクロ可愛いっっっ!!)ん?あっ私か!・・・私の故郷には悪魔は物理的に恐らく居ないんですが、昔から悪魔や鬼といったモノは伝承で多く残っています。その中にここに出る悪魔と同じ名前の悪魔の記述があるんです。名前の由来もあります。ーーどう思う?フィール。」
「もしかして・・・、ユーリの故郷と関係があるのか?でも、実際には居ないんだろ?」
「うん。そうなんだけど、もし・・・。・・・仮の話は今するべきじゃないよね?もう少し決定的な事を見つけられてから男爵様にお伝えしてよろしいですか?」
「分かった。では、もう少し具体的に話す事が出来る様になってから報告を頼む。私は所用があるので出掛けるがお前達はゆっくりしてくれ。」
ウェリー男爵が部屋を出て行き残ったのはセフィール、ルーク、ロバート、ユーリとアオにクロだ。
セフィールがユーリに向き直り微笑み掛ける。
「ユーリ、それで分かっている事を聞いても良い?この2人ならきっと問題ないよ。」
「ーーうん。
私の予想を聞いて男爵様に伝えるか決めて貰いたいんだよね。
私の住んでいた所ではさっき言った通り悪魔に名前に由来があるの。
実際には居ないんだけど、物理でなく精神に存在しているって言うのかな?
恐怖の対象を明確にする事により人間の戒めにして、己の行いを律する。
ーーそういう対象って悪魔じゃなくても己を律する点では神様でも同じ様なもんじゃない・・・かな?」
宗教と政治の話は論争の火種になるからしない方が良いと言うのが、世界共通セオリーなのでユーリは恐る恐る反応を探りながら喋る。
「俺が住める場所を求めて様々な土地へと行ったが、確かにそういった土地神を祀っていた所はある。それで何が分かるのだ?」
「・・・ユーリ言ってもいいからな?」
セフィールがユーリの手を握るとユーリの手は冷たくなっていた。
「・・・。私はここの世界の人間じゃないんだよね・・・。」
「「は?」」
「よし、ユーリここからは俺が2人に話すよ。」
ユーリは小さく頷いた。
「俺の今まで発動できなかったスキルが目覚めたのはフォルテム王国を出る少し前なんだ。俺のスキルは異世界にいるユーリと文章のやり取りができるスキルで、目覚めてからずっと交流してたんだ。そこで錬金術師が不遇だという話をしていたらユーリの発想で新しい金属を作ることに成功した。」
「あぁ!それが最初のステンレスって金属か。確かに知らなかったもんな。」
「そうなんだ。それからもずっとユーリと交流していたらいつの間にか悪魔をみんなで倒してたって訳なんだ。ーーで、ユーリここからさっきの話に関係するんだろ?」
「・・・うん。ーー私とフィールは2回私の世界でも無い、この世界でも無い空間で会ったことがあるんだよね。その間私が一人でこちらに来ることは無く元の世界に戻れていたんだけど、突然その空間に吸い込まれて出られなくなってずっとフィールが来るのを待っていたの。フィールが来てくれたらいつの間にかこっちに落っこちてた。」
「その空間がこっちとそっちの世界を繋ぐ扉みたいなもんなのか?」
「あぁ、恐らくな。」
「ここからが憶測なんだけど、フィールはあそこに行く時0と1の数字見なかった?」
そこで以前アオとクロが0と1の数字に包まれているのを目撃した後に、白い空間に行ったことをセフィールは思い出した。
「ーーーあった。確かに0と1の数字を見かけた後に白い空間に吸い込まれた。あの数字は一体なんだったんだ?」
「あそこは電子空間なんじゃ無いかなって思う・・・。フィールスキル発動してみて?」
「分かった。」
白い半透明の板が現れた。
「へぇ〜・・・こういうのでメールしてきてたんだ・・・。あっ、このスキルだけどこれ自体が0と1で管理されてるって言うか、例えば文字打つでしょ?それが全部0と1の配列で出来ているんだけど分かりにくいよね?」
「今まで文字打っていたのが全部0と1??なんかよく分からないな・・・。ーーあぁ!確かに違いは表せるか・・・。しかし膨大な数になるな。」
「もうお前は納得したのか・・・。俺はお前らが何言っているのか全く分からん。」
「ロバートとレベル同じか〜・・・。」
「それでね、話を戻すけど悪魔とか神様の多くの文献が0と1の世界には膨大な量の記録が写されているし、日々更新されているんだけどそのデーターがこちらの世界で具現化しているんじゃ無いかと・・・。」
「多くの神も文献にはいるんだよな?神の話は聞いたことないな・・・。それがこちらに出て来て来ないのを考えると意図的なものを感じる。ユーリの世界の人間が手引きする事は考え辛いから、こちら側にいる何者かか・・・。」
万が一本当に悪魔を手引きしている者が居るならば、ダンジョンが現れてからと言うことになる。それは随分と昔の事であり、そんな人間が生きているとは思えない事をセフィールは考えていた。
「それってどんだけ長生きしている奴だよ!!悪魔が元々この星に居ないんなら無理じゃね?」
「ーーそうとも言い切れないんだよね。私がフィールの手紙に返事したのが届いて半年経ってからなんだけどフィールはどの位で返事来た?」
「翌日だ。」
「「っっっ!?」」
「そう言う事。あの空間は時間の感覚がどうもおかしいんだよ。あの電子空間にいるのか、こちら側から空間に干渉しているのかは分からないけど今犯人が生きている可能性は十分あり得ると思う。」
「ーー未来から送り込んでいるのならば、まだ生まれていない可能性すらあるな。」
「過去からだったら悪魔を倒せば良いだけなんだよな?」
「未来からの場合は更に干渉してくる可能性もあると言う事だ。」
「ま、私の推測だから当たってない場合も十分あり得るから。その可能性も視野に入れておいて欲しいって話。男爵様には伝える?」
ユーリが話し終えて冷めてしまった紅茶を飲む。
「いや、確信できる事を掴んでから伝えよう。無闇に惑わせても指揮が遅れる原因にもなるしな。」
「そうだな、それが良いだろう。俺も第三者による手引きの可能性も注意して情報収集に当たろう。」
「おうっ!そういう可能性がある事だけでも分かっていた方が俺みたいなのには有難いぜ!!」
セフィールとユーリはすんなり受け入れてくれた2人に感謝し安堵した。
ルークは深く考えるのがめんどくさくなり結論だけを拾い、ロバートは考えすぎてよく分からなくなったので追い追い考える事にしただけでもある。アオとクロはそんな2人を呆れた様に半眼で見やっていた。
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