第39話 創造錬金術
オガルレ街に戻ったセフィール達は、直ぐにウェリー男爵との面会を行う事ができた。セフィールは挨拶を軽く済ませ本題に入ろうとすると領主が微笑んで口を開いた。
「して、セフィール殿そちらのレディの紹介はして頂けないのかな?」
自分の事を言われたのだと気が付いた有理は思わずセフィールを見上げた。ばっちり目が合ったセフィールがユーリに微笑むと領主に紹介を行った。
「ほう、セフィール殿に知恵を与えていたのはこの様に可愛らしいレディとは思いませんでした。フォルテム王国の出身ですか?」
「いえ、私は・・・根無草の様なものですので・・・。」
どの道正直に答えても説明に説明を重ねるのが面倒だった有理は曖昧に微笑んではぐらかした。異世界転移した所で根本的な性格が一朝一夕で変わる筈もなく、面倒くさいものは面倒くさいのだ。
セフィールとロバートの廃ダンジョンの報告が行われた。最下層では鉱物を収集したが、悪魔は出て来なかった事と収集した途端崩壊が始まった事を伝えた。ミジュア王国の廃ダンジョンは全部で2つなので、今生きている1つのダンジョンが廃ダンジョンにならない限りもうミジュア王国は悪魔の心配は無い。
領主が部屋を用意してくれたので、セフィール達は一泊してアイヲン町に一旦戻る事にした。
領主から夕食に誘われて皆で食事をした後、男3人と2匹が同じ部屋なので他の部屋を用意されていたユーリがセフィール達のいる部屋に訪れた。今後の方針を話し合う為だ。
「アイヲン町に残った錬金術師達はもう、領主様の求められた品を納品できる様になるとはな・・・。流石と言うべきか分からんが。これから、アイヲン町は一気に栄える可能性が高いだろうな。」
「そうだろなー。つか、みんな本当吸収力良すぎな。それと、ゼルがもう回復してアイヲン町で兵士に復帰してるなんか信じられねーぜ!!」
「・・・本当によかった・・・、本当によかった・・・ありがとう゛っっっセフィール!!」
「そう言ってもユーリのお陰で治せたんだけどね。改めてありがとう、ユーリ。」
セフィールはお礼を込めて隣に座っていたユーリの頭を撫でる。
「だからー、それはフィールの腕前であって私は助言にならない助言しただけだからっっ!私の適当な話で誰でも理解できるなら、錬金術師みんな支配者になれるって!!」
口調は怒った口調だが、頭を撫でるセフィールの手を払ったりはしない。むしろもっと撫でて貰おうと、セフィールに近づいた。
「それで、今後の予定だが・・・。」
「領主様が食事の時王都の王城に来て欲しいって言ってたけど行くの?」
「そうだなー、領主様の顔立てた方が良いよな?だから行くよ。ユーリはどうする?出来れば一緒に来て欲しいんだけど、王都まで馬車で1日掛かるから野宿しないと行けないんだ。辛いと思うから明日帰るアイヲン町に残って帰り待ってても良いけど?」
「俺はユーリちゃん連れて行きたいな〜♪こんな男ばっかで何日も一緒にいたらおかしくなるって。」
「行くよ?でもお城では謁見とかしないで隠れとく。めんどいし。」
「俺は少女を連れ回すのには反対だ。親御さんも心配しているだろうし、明日帰りなさい。」
「ロバートさん・・・。あのっ、私23歳なんで少女では無いので大丈夫ですよ?それに、帰る家が(この世界に)無いんです。両親も(この世界に)いませんし・・・。」
「っっっっ!!!そ・・・そうなのかっっ・・・。すまない・・・辛いことを聞いてしまった・・・。俺は・・・俺は何と言うことを・・・!!許してくれとは言わない・・・、気の済むまで踏んでくれ!!」
「・・・おっさん・・・まさかそんな趣味だったのか・・・。」
「なっっっっ!!!断じて違うぞっっっ!!!女性が素手で殴れば手を痛めるだろうが!!!蹴っても脚を痛めるだろう!!だからユーリ嬢が痛くならない様に踏むのが最良だろうと思っただけなんだっっっ!!」
絨毯に崩れ落ちたロバートを思わずセフィールとルークは憐れんだ目でロバートを見てしまう。
「ほっっ本当に違うんだっっっ!!!ユーリ嬢っっ信じてくれっっっっ!!!」
「必死さが余計・・・。」
「あぁ・・・。」
「え?踏んで欲しいんですか?ーーじゃあ踏みますね?」
ーーグニッッ
絨毯に崩れ落ちたロバートの背中を有理は躊躇無く足蹴にする。
「ロバートさん、安心して下さい。ーー私誰にも言いませんから・・・。」
こういうの強く踏んだ方が良いのかな?と思った有理は踵でロバートの背中を強めにぐりぐりと踏みつける。
突如有理は浮遊感に襲われた。
「ユーリ、もうその辺で止めとこうな?」
セフィールに脇を抱えられ持ち上げられた有理は足元をみると、光悦とした表情のロバートがいた。
有理はロバートの事は『残念な脳筋』として脳に刻まれた。
大体の予定が決まった所でユーリはセフィールを連れ出し、自身に用意された部屋に招いた。
「・・・どうしたんだユーリ?悩み事か?俺には何でも相談して欲しい。」
「う・・・うん・・・。あのね・・・私、こっちに来たでしょ?今まで、調べた事をフィールに伝えてたんだけど・・・その調べる機械・・・道具が無いからこれからフィールの役に立てないと思うんだ・・・。」
「うん」
「それでね?もし私がこの世界で魔法の一つも覚えられなかったら、どこかに行こうと思う。」
「それは、俺の事を考えてなんだろ?別にもう調べられなくても良いから、俺はユーリにずっと側にいて欲しいんだ。ーーダメかな?」
『信頼基準値突破ヲ確認シマシタ。マスタート賢者ガ一緒ニイル場合ノミ、創造錬金術ガ使用可能トナリマシタ。』
「何の声?」
「俺のスキル喋るんだよ。ちょっと見てみよう」
セフィールはスキルを起動した。今までと違う項目が目に入った。
「創造錬金術・・・。」
開くとセフィールの知らない単語が並んでいる。
横から覗いていたユーリは知っている様で「へぇー・・・それも作れるのか・・・ヤバない?」と独り言を言っている。
「ユーリこのマシンガンってなんだ?」
「あーーー・・・。金属の小さい玉が物凄い速さで何十発も発射される危険な武器だよ。あっ、意外と武器以外もあるよ!!ほらっここ見て眼鏡作れるよ!」
「眼鏡はこっちでも作れるよ?何か違うのか?」
「フレームがチタンで出来るからじゃない?それにガラスのレンズか有機ガラスのレンズか選べるみたいだね。多分この有機ガラスって、めちゃくちゃ軽いレンズの事だと思うよ?でも、材料集まってない様な気がするんだけど・・・まさかこれに載っているのって素材として持っている鉱物とか分解して原子レベルで作り出すって事!?」
「それがどうしたんだ?」
「・・・これ、秘密にしよう。もうレベルが創造神とかそんなレベルだよ・・・。どうしよう・・・。怖くなってきた・・・。」
ボードを見つめるユーリの顔色は青くなっている。
「別に錬成するのは良いんじゃないか?2人一緒に居ないと意味ないんだし、俺がどっかの国に連れ攫われても作る事が出来ないなら安全だろ?ユーリが攫われたら困るからそこは何か対策をしよう。それと、ユーリが賢者だとバレたら政略結婚や国に取り込まれる可能性も十分ある。賢者だとバレない様にしないとな。」
「それって、・・・フィールと結婚したらどうかな?フィールが嫌じゃなきゃ書類上でもいいから結婚しておいて貰え無いかな?」
「喜んでっっっ!!!」
有理はセフィールの何処ぞの居酒屋の様な返答に戸惑いつつも、翌朝オガルレ街の商業ギルドで身分証を貰った後2人は書類上夫婦となった。
アイヲン町に帰るまでの道のりは延々と勿論ルークのやっかみが続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます