第28話 手紙
イマイは手紙を携えて、俺の元に来ていた。
「マリア王女から手紙?」
「はい、こちらに預かっております。」
「・・・受け取る気にならないな。」
「えっ?受け取って貰わないと私が困ってしまいます。どうか受け取ってくださいませ。」
イマイが顔を青くして、手紙を差出してくる。
「いや、すまん、確かにイマイさんには関係ない話だな。
受け取るだけ受け取ろう。」
俺は手紙を受け取り、無造作に机に放り投げる。
「ああ・・・」
王女からの手紙を無造作に扱う事に悲嘆の声が漏れた。
「そんな事より取引の話をしようか。」
「お、お待ちを!どうか手紙の返事をいただけませんか?」
「・・・イマイさん、あなたは取引に来ているのではないのですか?
俺は商売相手として話しているのであって、それ以上でもそれ以下でもないつもりだが、この件に踏み込んで来るなら、他の商人と話させてもらう。」
「お、お待ちを!ですがトリスタン王国と取引するためにも王女との関係は重要かと!」
「別にトリスタン王国と取引しなくてはならない訳ではない、俺としてはバルス帝国でも構わない。」
イマイの表情は青くなる。
確かに一応の独立国であるダオ王国がバルス帝国と取引しても問題は無い。
現状の国力を考えれば、バルス帝国に近付くのは悪い話でも無かった。
そのため、イマイは手紙の話を出せなくなるのだった。
取引の話をまとめ、イマイは返事を貰えぬまま、トリスタン王国に帰っていった。
「タツマさん!あの手紙はなんですか?」
マイはモヤモヤした気持ちになり手紙の事を聞く。
「マイは知ってるだろ、俺がこの国に来た話を。」
「冤罪をかけられたとか・・・」
「そう、それでその時戦場から連れて帰った姫様が手紙の主、何で俺の居場所がわかったのか知らないが、今更関わる気にはなれないな。」
「タツマさんの怪我を考えれば行かないのが当然です!」
「まあ、トリスタン王国は隣だからな、いざという時は俺を差し出したらいいよ。」
「そんなことできません!私の命の恩人ですし、それに・・・」
マイはモジモジしながら語尾の声が小さくなる。
「ありがとう、でも大丈夫だろう、バルス帝国にこっぴどくやられてたからな、こっちに向ける兵力は無い筈だ。」
「あぅあぅ、そうじゃなくて、ううん、それもあるんだけど・・・」
俺はマイの頭を撫でる。
「さあ、家に帰るか?」
「はにゃ!・・・うん、一緒に帰ろう♪」
マイは俺の腕を取り一緒に帰るのだった。
その光景を見ていた町の人達は仲睦まじい二人を温かく祝福していた。
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