第27話 壊れかけのマリア

「アナベル姉さま、どうなさったのですか・・・」

生気を失った瞳でマリアは見ている。

「マリア・・・今日はいい美容液が手に入ったのよ、ほら一緒に使いましょ。」

「アナベル姉さまだけでお使いください、私は美容などいいですから・・・」

「そんなことを言わないで、ほら見て、エルフの美容液よ、御伽噺は聞いたことあるでしょ?実在したのよ。」

「そうなんですか・・・」

マリアの反応が悪い事に少し落胆しながらも美容液を取り出しマリアに使おうとすると。

「・・・えっ!」

マリアが急に美容液を入れていた箱の中の匂いをかぎ始めた。


「マリアどうしたの!箱の中はここよ。」

ついに壊れてしまったのかと心配になるが・・・

「タツマさんの匂いが微かにします・・・アナベル姉さま!これを持ってきた方は!」

マリアはアナベルに詰め寄る、さっきまでとは違い目に力が宿っていた。


「これを持ってきたのはイマイという商人ですよ。それよりどうしたのですか急に。」

「タツマさんです!この商品を触った方にタツマさんがいるはずです。

アナベル姉さま、この商人の方にお会いして聞きたい事があるのです。」

「わかりました、すぐに呼び出します。ですが、まずはマリア身だしなみを整えましょう。

タツマ言う方に話が伝わった時に恥ずかしくないようにしましょうね。」

アナベルの言葉にマリアは自身の姿を見る。

改めて見ると顔に疲れも出ているし、髪もぐちゃぐちゃだった。

「あー、なにこれ、ちょっと直してきます。」

マリアは慌ただしく身支度を整えるのだった。

そして、活力が戻った義妹にアナベルは安堵しつつ、イマイを呼び出したのだった。


「イマイさん、再度呼び出し手申し訳無いわ、少しあなたに聞きたい事がありまして、お話よろしいですか?」

イマイが再び呼び出されるとそこにはアナベルとマリアがいたのだった。

「何なりとお聞きくださいませ。このイマイ隠すことなどございませぬ。」 

「イマイさん、この商品を何処で手に入れたのですか!」

マリアは慌てるように質問する。

しかし、商人に商品の入手先を聞き出そうとするのは褒められた行為ではなかった。

「マリア、慌て過ぎです、イマイさん失礼しました。

私達は商品の入手先を聞きたいのではないのです、そこにタツマという方はおられませんか?」

「タツマ様でございますか?それならこの商品を取り扱っておられる方にございます。」

イマイは場所を明かさず、その上、答えれる限り答える姿勢を取る。


「良かった・・・生きていてくださったのですね・・・」

マリアは大粒の涙を流し始める。

「イマイさん、そのタツマと言う方に手紙を渡すことは出来ますか?」

「出来ます、お渡しすることは可能です。」

「ならば、あなたに手紙を託す事になると思います。マリア、手紙を書きますよね?」

泣いているマリアに質問すると、

「かきます・・・絶対に書きますので。」

泣きながらも手紙を書くと伝える。


「イマイさん、この通りマリアは少し感情的になっていますので、手紙を後日預けたいのですがよろしいですか?」

「はい、いつでもお渡しくださいますれば、お届けすると誓いましょう。」

「何と頼もしいお言葉、出来ればお返事も貰って来てもらいたいのてすが?」

「お任せあれ!タツマ様に書いてもらえるよう頼んでみます。」

イマイは王家に近付く事が出来る事を喜んでいた。

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