第23話 既成事実
町に戻ると住人達が祝福の声を上げている。
「姫さま、結婚おめでとうございます。」
「末永くお幸せに〜」
「ありがとう、幸せになりますね。」
俺の隣でマイが嬉しそうに答えている。
「いや!違うから!」
「タツマさま、何を照れているんですか、その姿を見せておいて何が違うのですか?」
俺と腕を組み、幸せそうに手を振るマイの姿に説得力は無かった。
だが、マイの行動はそれだけでは無かった。
俺がどう誤解を無くすか考えていると・・・
頬に何かが当たる。
住人達から大きな歓声があがったのだ。
俺がマイに振り返ると何故かとろんとした瞳のマイが今度は俺の頬にキスをしてきたのだった。
「マイ、なにを!」
「タツマさん、しちゃいました♪」
イタズラに成功した事を喜んでいるような楽しそうな笑顔を浮かばながらも、少し艶のある、幸せそうな表情を浮かべていた。
「いやいや、お姫様がしちゃだめでしょ!」
「あーまたお姫様って言いましたね。私も怒っちゃいますよ。」
「いや、そんな話じゃなくて、なんでキスするのさ!」
「だって、タツマさんが行方不明って聞いて心配して、でも、無事に帰ってきてくれて。
国民の皆さんに祝福されてたら、幸せな気分になって・・・そしたら・・・気持ちが抑えられなくなりました♪」
「本当にどうしよう・・・」
俺の悩みが増えたが、更に・・・
チュ!
もう一度マイがキスをしてくる。
「なんで、二回目!」
「どうしよう、もう抑えれない。タツマさん。もっとしましょう。」
どうやらマイはキス魔の習性があったようだ。
気持ちの高ぶりで感情の爆発が抑えられないのだろう。
「早く、城の中に入ろう。ねっ?」
「はい、続きはお部屋ですね。でも、もう一回お願いします。」
マイは再びキスを迫ってくる。
俺はキスできないようにマイを抱きしめて、
「違うけど、早く馬をだして!」
俺は住人達の前でこれ以上の醜態をマイが晒す前に城の中に避難しようとしていた。
「タツマさんが求めてくれるならわたし、今日大人になりますね。」
マイが嬉しそうに漏らした言葉を聞いたものも多数いたのだった。
俺の懸命な努力も虚しく、
住人達からすると子作りの為に部屋に向かったとしか思えなかった。
この日より、タツマとマイの関係が婚約者として認知され、そして、子供の誕生を待たれる事となる。
後継者がいなかったこの国としては歓迎すべき事柄であり、お祝いムードが国中に広がっていった。
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