第17話 帰宅

俺達は王都に来た。

マイは帰宅となるが・・・


マイの馬車が進むと住人の視線が集まる。

王族は各自馬車を持っているとの事で、この馬車はマイ専用との事だ。

不治の病で田舎に移った事は広く知られており、そのマイが王都に帰って来たことに騒然となっていた。


城に入るとノブヒデが待っていた。

手を広げて抱き締めようとしながら近付いてくる

「マイ、長旅で身体を壊してないかい?」

「大丈夫です。」

マイは俺の腕にしがみつき、ノブヒデの抱きしめを回避する。

これは・・・

俺はノブヒデの嫉妬からの攻撃に身構えていると。

残念そうに肩を落としながらも何も言って来なかった。


「あれ?マイ、王様どうしたんだろう?」

「きっとタツマさんの事を認めてくれたのですよ。」

マイはニコニコしながら俺の腕を取り、城の中に向かった。


「おお、マイ姫ご機嫌麗しゅう。」

城に入ると、貴族と思われる、キラキラした男がマイに声をかけてきた。

「これはハヤシ候爵、久しぶりですね、貴方から声をかけてくるとは・・・病気がうつるから近寄らないのでは無かったのですか?」

マイは俺が初めて見る冷たい視線をハヤシと呼ばれる男に向けていた。


「これは冷たいお言葉、完治なされたと聞き及んでおります故、このハヤシとも交流を持っていただきたく声をお掛けした次第にございます。」


「そうですか、しかし、私が交流する相手は私が決めますので、以後話しかけないで貰えますか?」

そう言うと俺を連れ、立ち去った。


「マイ、いいのか?」

「はい、タツマさんに王宮の悪い部分を見せたくはなかったのですが、私の病気が治った事で私の利用価値が上がったのでしょう。

あのような者が近付いてくるのです。」

気丈に振る舞っているが俺の腕を掴む手は少し震えていた。


「大丈夫、俺がいるから、何をされても守ってやるよ。」

「本当ですか!」

マイの表情は明るくなる。

「ああ、何せ命の恩人だからな。」

「それはタツマさんも同じですよ。」

その後、マイは俺にベッタリくっついており、時折見せる貴族達は声をかける事も出来ずにただただ見ているだけとなっていた。


俺とマイは謁見室に入る。

「タツマよ、そなたを特別軍事顧問に任命する。

そなたに命令出来るのは王のワシのみとする。

他の者もタツマに文句があるならワシを通すように!」

マイの帰宅の報告かと思っていたら、どうやら俺の任命式だったようだ。


「陛下お待ちを、何処の者かもわからぬ男を軍事顧問にするとは些か早計ではありませぬか?」

「シバタ伯、そなたの申す事もわからぬではない、しかし、この者は我が兵を強くする可能性があるのだ、ワシの顔を立て、従ってくれぬか?」

「陛下がそこまでおっしゃるなら、私に異存はございません。」

シバタ伯は引き下がる。


「一つお聞きしたい、何故、姫様はその男の横におられるのだ?」


「ニワ伯、それはな、マイの病気を治してから、どうやらマイが懐いたようだ。

思えばマイには今まで辛い思いをさせてきた、ワシはこれからはマイの好きにさせてやろうと思っておる。」

「そ、そういう事にございますか。わかりました。」

俺は話すこと無くただ聞くだけであった。



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