第10話 王城

「へぇーこれが王都か・・・」

俺は初めての王都に感嘆の声をもらしていた。

「ふふ、タツマさん、子供みたいですよ。」

マリアは優しく笑いかける。

「いや、仕方ないだろ。初めて見たんだから、おーあれが城か!」

はしゃぐ俺を見つめながら、

「今からあそこの中に入るのですから、楽しみにしていて下さいね。」


馬車は城までは順調に進む、しかし、城の門で騒動になる。

「何故、姫の馬車に平民が乗っておる!」

門ですれ違った貴族がマリアに挨拶をしようとしたところ、横にいた俺を問題視したのだ。

「マロニー伯私の客人に何か問題がおありですか?」


「マリア姫、未婚の女性の馬車に男を乗せるだけでも問題ですのに、それが平民とは許されざる問題にございます。

悪い事は言いません、今すぐその者を馬車から下ろし、客として招くなら平民入口より入れるべきにございます。」


「マロニー伯、彼は私の命の恩人です。私の馬車に乗せて何が悪いのですか。」

「これは伝統にございます。しかと私の従者が案内しますのでどうかお願いいたします。」

マリアとマロニーが揉めているのを見た俺は、

「マリア、一度降りるよ、後で合流しよう。それまでに報酬を用意してくれよ。」

「しかし!」

「いいから、案内もしてくれるみたいだしな。」


俺は馬車を降り、マロニーの従者に連れられ門に向かう。

「剣をお預かりします。」

俺は腰にある剣を渡す。そして、案内されるまま奥の部屋に向かう。

「うん?此処は?」

案内された部屋は石畳の狭い部屋であった。

「平民には、手続きがあるんだ、其処の椅子に座れ。」

俺は言われるままに椅子に座ると・・・

手錠をされる。


「何をする!」

「お前ごときが姫様に近付くなどこの身の程知らずが!」

案内していた男が棒で殴り付けてくる。

「ぐっ!」

「どうした、平民風情だと、この程度でも痛みを感じるのだな。

所詮は下賎の輩だ!」

それからも従者の男は殴り付けてくる、

俺は殴られながらも何とか手錠を外そうともがいていた。


一方、マリアは帰国を兄アレクと姉クリスに報告していた。

次兄のクレイマーは現在地方に回っているようで不在であった。


マリアは其処で父マルスの死を聞かされる、

そして、泣き崩れてしまった。

アレクとクリスはマリアが落ち着くまでゆっくりと待ってくれており、一息つくまでに二時間はかかっていた。


少し落ち着いたマリアにアレクは気が紛れるように別の話をする、

「マリアが無事で良かったよ、ルーマ国には何か礼を贈らないとな。」

アレクの言葉にマリアはタツマがまだ来ていない事を不思議に思う。

「お兄様、私が助かったのはタツマという一人の兵士のお陰にございます。

王都まで一緒に馬車で来たのですが、入口でマロニー伯に止められ平民の彼は別の入口に案内されたのですが、未だに来ていません。

どうか、調べてもらえませんか?」

「おかしいな?たとえ平民といえど王族の馬車に乗るものを降ろす権利等無いのだが・・・しかも、マロニーか、奴は貴族派、いやな予感がするな、誰か、平民入口に行き、タツマというものを探してこい。」

「はっ!」

近衛兵の一人が走り出した、その瞬間、

「脱走者だ!懲罰室から逃げた奴がいるぞ!」

「城壁に逃げたぞ、逃がすな!絶対に捕まえろ!」

遠くから兵士の声が響いて来た。

マリアは嫌な予感しかしていなかった・・・

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