第11話 逃走

「さて、そろそろ死んでもらうか。」

俺をひとしきり殴った男は棒を剣に持ちかえる。

「おまえ、何のつもりだ・・・」

「平民ごときが姫様に触れたのだ、その罪を償わせてやる。」

「裁判も無しに始末をしていいのか?」

「不敬罪だ、平民ごときに裁判など必要ない!」


「そうかい、なら俺も遠慮は入らんな。」

従者の男が嬉しそうに話している内に手錠を解くことが出来た。

「なっ!」

俺は従者を殴り、剣を奪い逃走を開始する。


「脱走者だ!すぐに斬れ!」

部屋の外に出ると見張りの兵に声を上げられる、俺は喉を斬り黙らせるが、すぐに応援が来てしまう。

多勢に無勢、そして、身体はボロボロ、殴られ過ぎて何ヵ所か骨が折れているようだった。

俺は追いかけてくる兵を斬り伏せながら、逃げる。

しかし、作りがわからない為に城壁の上に追い詰められた。

この頃になると一般兵士ではない騎士が混じっていた。


「おい!抵抗は止めて降伏しろ!」

「降伏したら助けるってか?」

「平民風情が!生意気な!」


俺に襲いかかるのは綺麗な鎧を着た同じ国の騎士、俺は徴兵で戦場に行っただけなのに、

それがなんの因果か、命を狙われている。

マリアを姫様を助けて連れてきたらこんな有り様だ。


「騎士さんよぉ、来るなら覚悟しろよ。相討ちぐらいには持ち込んでやる。」


俺は覚悟を決めて道連れを増やす気であった。


「そのケガで強気だな、やれ!」

騎士の命令で兵士が襲いかかってくる。

俺は1人を斬ったがその後が続かない。もう1人に背中を斬られ、膝をつく。


「やっと、動けなくなったか。お前のせいで大事な国の兵士が何人死んだと思っている。このゴミが!」


「ゴミはどっちだよ、俺は姫さんを助けただけじゃねぇか!なんで殺されなきゃならん。」


「ふん、それはなお前が平民だからだよ。お前のような奴が姫様に触ったなど不敬もいいとこだ。大人しく首を差し出せ。」

どうやら、目の前の騎士はことの顛末を知る男のようだ。

こんな奴に首を渡すぐらいなら


「やなこった!」

俺は最後の力で城壁から飛び降りた、堀になっている下の川に向かって・・・



マリアはタツマが城壁の上にいるのを遠目で見てすぐに走り出した。

タツマを助けたい一心で。

しかし、マリアがつく前にタツマが城壁から飛び降りる。

その光景を走りながら見ていたマリアは・・・

「いやぁぁぁぁぁ・・・」

マリアは悲鳴を上げ、そのまま意識を失った・・・

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