第12話 命拾い
堀に飛び込んだ俺は意識を失い、川を流されていた。
「お兄さん、お兄さん、起きてください。」
俺の頬を叩きながらかけてくる声に意識を取り戻す。
「君は・・・?」
俺が目をあけると其処には少女が心配そうな目で見つめていた。
そして、また意識を失った。
次に目を覚ましたら、ベッドの上であった、そして、身体中を包帯で巻かれていた。
どうやら手当てをしてくれたようだ。
そして、部屋を見渡すと豪華な調度品に囲まれており、裕福な家だということがわかる。
「あの子は何処に?」
俺が布団から出ると同時にあの少女が入って来た。
「君は・・・」
「お、お兄さん、げ、元気になって良かったですけど・・・」
少女は顔を真っ赤にしながら此方を見ようとしない。
「どうした?いやまずは御礼を言いたい。取り敢えず此方を見てくれないか?」
「あ、あの、その・・・」
「いや、どうしたんだ?」
「服をきてください!!」
少女に言われて自分の姿を見ると包帯に巻かれているとはいえ・・・ノーパンでプラプラしている部分があった。
「のぉぉぉぉ!」
俺はあわててシーツで隠す。
「す、すまない、年頃の少女に見せる物ではなかった。」
「い、いえ、仕方ない事はわかっております。
これ父様のお下がりになりますが着てください。
お兄さんの服はボロボロで着れる状態では無かったので。」
少女は服を渡すと部屋から出ていく。
俺は着替えて部屋の外に出ると使用人が別の部屋に案内してくれた。
其処には食事が用意されており、ひとまずそれを食べていると少女が部屋に入って来た。
「私はマイと申します。川で流れていたお兄さんを連れて来て、治療を致しました。」
「ありがとうございます。俺はタツマ、平民だが・・・トリスタン王国出身で城で冤罪をかけられて逃げる為に川に飛び込んだ。」
「・・・詳しい事情を伺っても?」
俺はマイに事情を全て話した。
「タツマさんに悪いところなんて無いじゃないですか!ゴホッゴホッ!」
マイは叫んだせいか咳き込みだす。
「おい、大丈夫か?」
「はあはあ、大丈夫です、少し興奮しました。」
「病気か?」
「はい、少し持病がありまして、気管が弱っているのです。」
「気脈がずれているな・・・治療はしているのか?」
「これは不治の病なのです、ですので、少しだけでも長生き出来るように父が空気のいい此処の屋敷を私に作ってくれたのです。」
マイは暗い顔を浮かべる。
「不治の病?それがか?」
「・・・タツマ様、治す術があるのですか?」
「ああ、たぶん治せるぞ。まだ軽いみたいだしな。」
「お願いいたします、どうか治療を!」
「落ち着けって、俺も命の恩人の頼みは聞きたいのだが・・・」
「だが何ですか?」
「いや、治療の為には裸になって貰わなければならないのだが、君みたいな可愛い女の子が男に裸を見せろというのはダメだろ?」
「治療の為なら構いません。それに私もタツマさんの裸を見ましたし、お互いさまということでどうか治療をお願いいたします。」
「わかった、だが道具がいる、裁縫針でいいから針を10本ほど貰えないか?」
「すぐに用意致します。」
マイが出ていったあと、俺は食事を取る。
食事が終わった頃にマイが戻ってきた。
一緒に侍女も来る。
「マイさん、其方は?」
「私の侍女で一緒に屋敷に住んでくれている、サユリさんです。」
「マイ様の裸を見ようとする不埒者を始末するつもりです。」
サユリは冷たい視線を此方に向けている。
「サユリさん!」
マイはサユリを嗜めるが、
「いや、俺もそう思うよ。男が見ていいものではないしな。」
「貴方はマイ様を助けないと言うのですか!」
サユリは激昂する。
「どっちだよ!」
「マイ様の裸を見ないように治しなさい。」
「それは無理だ、治療は繊細なものだし、異物が入るといけないから裸でないといけないんだ。」
「そもそも、どんな治療なんですか!」
「針をさして、気脈を治す。」
「そんな治療聞いたこともありません。」
「そうか?俺も師匠に教わっただけだからな。世間で有名かどうかは知らん。」
「そんなものをマイ様に使用とは!」
「いや、本当にどうしたいんだよ。俺としては治してあげたいけど、恥ずかしいのもわかるから、治療するかはマイさんに任せるよ。」
「お願いいたします。どうせ、このままだと、長く無いのです、それならば、駄目でも可能性があるなら試してみたいのです。」
「しかし、殿方に裸を見られるということは・・・」
「いいんです、どうせ病が治らないと見せる相手もいませんからね。」
「わかりました、タツマ様がマイ様に不埒な真似をしないように私も一緒に見てますから。」
「では、始めましょうか。マイさんが横になれる部屋を用意して貰えますか?」
俺はマイさん、サユリと共に部屋に入り治療を開始する。
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