第31話 手紙の行方
「タツマさん!誰にお手紙を出したのですか!」
俺が商人に手紙を託した事を聞いたマイが部屋にやってきていた。
「以前世話になった人と最初の弟子にな。」
俺はロレンスとロラン、そして弟子のローラについてマイに話した。
「そんな、タツマさんの初めては私じゃないんですか・・・」
「1ヶ月程剣を教えたな。」
「うー、なんかモヤモヤします・・・」
「なんでだよ、それに気の使い方は教えてないから、気の使い方までになるとマイが初めてだな。」
何故か初めてにこだわるマイに納得してもらおうと初めての所を探して伝える事にする。
「そうですか・・・タツマさんの全てを教えてもらったのは私が初めて。」
「まだ、全てじゃないだろ?剣の道は先が長いぞ?」
「そうなんだけど、そうじゃないです・・・」
マイは頬を赤らめ、キャーキャー言いながら妄想にふけっているようだった。
一方、ロレンスは・・・
「タツマは無事であったか!」
タツマから届いた手紙に喜んでいた。
トリスタン王国に向かってから音信不通、マリア王女に連絡を取ろうとしても容態が悪いと連絡も取れない状況であった。
ロレンスは手紙を読む、そこには事の経緯と現在ダオ王国に滞在していること、そして、戦場から逃走した際、保護したロレンスへの感謝を綴っていた。
「タツマ・・・」
苦労したであろうタツマを思い、ロレンスの目頭が熱くなる。
「お父様、せんせいから手紙が届いたと聞きました!」
ローラが手紙の事を聞き、走ってロレンスの書斎に入ってくる。
「ローラ、はしたない、マナーを守らないと淑女になれんぞ!」
「そんなことはあと・・・せんせいは元気なの?」
「う、うむ、今は元気なようだ。」
「今はってどういうこと?」
ローラはまっすぐとロレンスを見る。
「実はな・・・」
ロレンスはローラに伝える。
「ひどい・・・せんせい、かわいそう・・・」
ローラは自分の事のように泣き始める。
「ローラ泣かんでもよいぞ、ほらタツマも元気だからこのような贈り物も。」
ロレンスはタツマから届いた贈り物をあける。
中には3つの物が入っており。
ロレンスにエルフの傷薬、これは重傷でも治すといわれているが中々手に入る事の無い1品であり、戦場に立つ者なら持っておきたい物であった。
ロランにはドワーフが作った鋼の剣、通常作られている物とは格が違い、装飾こそ少ないが簡単に折れる事が無い実用性に長けたものであった。
そして、ローラには竜の鱗を加工したネックレスが贈られていた。
竜の鱗には魔力があり、鱗を加工することで簡易な魔法を無効化する効果がある。
しかし、これも簡単に手に入る物ではない。
どれも国王に献上しても問題無い物であった。
「こ、これは・・・」
ロレンスは想定外だった。
安い物でも喜んで受け取るつもりだったが、まさかこれ程の物を贈られるとは・・・
ロレンスが固まっているうちにローラがネックレスを身に着ける。
「せんせいからの贈り物・・・」
ローラは頬を染めて喜んでいるのがわかる。
貴族の娘として育てたはずなのだが、装飾品に興味を示さないローラがネックレスで喜んでいるのはロレンスとしても驚きではあった・・・
「お父様、御礼と返事をしないと、せんせいはどこに?」
「ああ、ダオ王国にいると書いてあるな。」
「お父様、私が直接御礼に行って来ます。」
「ならん、まだお前は子供じゃないか!」
「もう、騎士より強い。守られる子供じゃない。
それよりせんせいを守りたい。」
「タツマは守られる程弱くないぞ。」
「貴族の悪意から守る。ルーマ王国の盾と呼ばれるお父様の庇護があれば簡単に傷つけられないはず。」
「庇護を与えるのは構わない、だがお前が行く必要は無い。」
「娘の私が隣にいれば庇護がわかりやすい。
たとえお父様が反対したとしても私は行く。」
ローラは頑固な所があった。
一度決めると何を言われても実行しようとする。
「ならんならん!」
ロレンスが反対するもののローラが強行するのは時間の問題であった。
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