第36話 ローラの腕前

「そういえばローラ、得た名声とか言ってたけど、なにかしたの?」

勝負のあと、落ち着いてから部屋に戻りノンビリしていたが、ふとローラがいった言葉に引っかかっていたので聞くことにした。


「たいした事はしてない、ルーマ王国で行われた大会で優勝しただけ。」

「ルーマ王国の大会って、他国からも猛者が集まってくる大会だろ?」

「そうでも無かった、せんせいの方が強い。」

「今度、俺も出てみようかな。」

「それならローラと一緒に出る、師弟で1位2位を独占する。」

ローラの目が輝く。

あれ、俺に会う前は人見知りする少女だったはずなのだが、何処でこうなったのだろう。

少し冷たい汗が流れる。


「出場するなら私も一緒です、そして1位2位は私とタツマさんです、ローラさんは3位で私達二人を見上げていてください。」

「マイには負けない。

せんせいの隣は私のもの。」

「ゆ、譲りません!タツマさんの隣は私のです。」

「負け犬はキャンキャン吠えるだけ。」

「だ、だれが負け犬ですか!」

ローラはマイを指差す。

「うーーー!次は負けません。

タツマさん、もっと私に教えてください。」

「それならせんせいに私も教えてもらうから差が埋まる事はない、マイは諦めるべき。」

二人がヒートアップしそうだったので俺は止める。 


「落ち着け、ローラも滞在する以上マイと仲良くすること。

マイもローラと喧嘩しないように。」

「せんせいが言うなら仲良くする。」

「うー、タツマさんが言うなら・・・」

二人は言い合いを止める。


二人はすぐに争いを始めるが歳も近い事だし、いい友人になれると俺は思っていた。

「せんせいはどこかの大会に出たことはないのですか?」

「俺は田舎出身だったからね、徴兵されて戦場に行くまでは村から出たこともなかったよ。」

「えっ?ならマリア姫と一緒にいたのはなぜなのでしょう?

姫の騎士ではなかったのですか?」

「戦場で巡り合っただけだよ、本来なら話すこともできないぐらいの差があったよ。

まあ、実際に味わったけどね・・・」

「せんせい何があったの?」

俺の表情が暗くなった為かローラが心配してきた。

そして俺は起きた事を説明する。


「トリスタン王国はおかしい、お父様がせんせいの事を問い合わせても何も教えてくれなかった。

同盟しているのに不誠実。

マリア姫もマリア姫、恩を仇で返すなんて最低。」

ローラは俺以上に怒っていた。


「ありがとう、でも、大丈夫。

俺はこうして元気に過ごせているしね。」

俺はマイの頭を撫でる。

「タツマさん・・・」

マイは嬉しそうに俺に身体を預けてくる。

「だめ、せんせいはマイに誑かされてる。

せんせい、ローラも撫でてほしい。」

ローラは頭を差出し撫でてもらおうとする。


「ローラも俺の為に怒ってくれてありがとう。」

俺はローラの頭も撫でた。


「あータツマさん、ダメです。

可愛がる女の子は私だけにしてください。」

「せんせいが弟子を可愛がるのは当然です。

それより、せんせいはお姫様恐怖症を発症している恐れがあります。

マイ姫はせんせいから離れるべき。」

「そんな病気になってません。

タツマさんは私にメロメロなんです。」

マイはたいして膨らんでない胸を俺に押し付け、ローラにアピールする。

「せんせいは優しいだけ。

メロメロなのは初めての弟子のローラに決まっている。」

二人はまた言い合いを始めた。


「ほら、喧嘩をするなら撫でるのを止めるよ。」

俺がそう言うと二人は顔を見合わせ、言い合いを止めて俺の胸に顔を押し付けてくるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

孤児の剣士、国を追われて将軍になる!? カティ @fortune-Katty

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ