第29話 商人の一コマ

俺の店にはイマイ以外にも何人かの貿易商人が訪れるようになって来ていた。

予想外にエルフの美容液の需要が高く、一度購入した商人が慌ててもう一度やってくるが生産量が多くない為に購入制限をかけざるおれなかった。

「頼む!エルフの美容液を買って帰らないとならないのだ!」

「すいませんね、本日は売り切れです。

次回の入荷をお待ちください。」

「と、取り置きはできないのか!」

「取り置きはやってないんです、いつ入荷されるかわからない不安定な物ですし、日持ちの都合もございますので。」

「増産は、増産の目処はたってないのか?」

「こればかりは何とも・・・店長の付き合いから入手しているものでして、エルフの気難しさは知っているでしょう。」


色々な国にエルフは存在する。

一部地方では森の守護神として崇めるところもあるぐらいだ。

だが、彼らは気難しく、人族からすると何が原因で怒り始めるかわからない上、彼らと争うと森や田畑が枯れていき、その後の凶作へと繋がる為に関わらない選択を取るものが多くいた。


タツマは獣人経由での取引の為に気にしていないが、エルフの商品が店先に並ぶことは非常に稀なことだったのだ。


「店長・・・店長は誰でどこにいるんだ?」

商人は店長に直接交渉をしようと考えていた。

持って帰らないと貴族が怖いのである。


「店長はタツマさんで城に・・・いや、城の横に住んでますよ。」

「城の横だな、こうしちゃおれん、失礼させてもらう。」

商人は慌てたようにタツマの家を目指した走り出す。

「いや、直接行っても!・・・行っちまったよ、姫様の婿さんに簡単に会えるかな?」

タツマに番頭を任されているムツは呆れながらも次の商人の相手を忙しそうに行うのだった。


タツマの家についた商人は屋敷を見て固まる、どう見ても貴族の屋敷であった。

もっと詳しく調べて置けばよかったと後悔しつつも来た以上手ぶらでも帰れないダメ元で面会を申し込むのだった。

「ルーマ国の商人、マネクレさんですか。」

「はい、タツマさんにエルフの美容液を手配していただきたく面会出来ませんか?」

「少々、お待ちください。」

商人はしばらく待たされたあと、面会が叶うと伝えられ、メイドに案内されるのだった。

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