孤児の剣士、国を追われて将軍になる!?

カティ

第1話 プロローグ

「おい!抵抗は止めて降伏しろ!」

「降伏したら助けるってか?」

「平民風情が!生意気な!」


俺に襲いかかるのは綺麗な鎧を着た同じ国の騎士、俺は徴兵で戦場に行ったただの田舎者だ。

それがなんの因果か、命を狙われていた。

悪さをしたわけでもなく、国に尽くした結果がこの有り様だ。


「騎士さんよぉ、来るなら覚悟しろよ。相討ちぐらいには持ち込んでやる。」


俺は剣の腕には自信がある、万全ならこの程度、切り抜けれるが今は重症の身。勝てるとは思えなかった。


「そのケガで強気だな、やれ!」

騎士の命令で兵士が襲いかかってくる。

俺は1人を斬ったがその後が続かない。もう1人に背中を斬られ、膝をつく。


「やっと、動けなくなったか。お前のせいで大事な国の兵士が何人死んだと思っている。このゴミが!」


「ゴミはどっちだよ、俺は姫さんを助けただけじゃねぇか!なんで殺されなきゃならん。」


「ふん、それはなお前が平民だからだよ。お前のような奴が姫様に触ったなど不敬もいいとこだ。大人しく首を差し出せ。」


「やなこった!」

俺は最後の力で城壁から飛び降りた、下の川に向かって・・・




話は少し戻る。

俺はトリスタン王国の田舎にあるセス村の孤児タツマだ。

教会に併設されている孤児院で育ったが、十五歳になったある日、村に徴兵の木札が立てられた。どうやら戦争の為、村から十人出さなければならないらしい。


村では話し合いが持たれた。

「おい、誰を出す?」

「代表として村長の次男のセシルくんは行くらしい。それにともなって九人までは取り巻きの仲間を連れて行くそうだが、あと一人か・・・」

「孤児のタツマを出そう、アイツなら身寄りもないしいいだろう。」

「アイツか、いいな。」

「ヨシ、決まりだな。」

話し合いとは、名ばかりで俺に押し付けられる事になった。


出発の日、

セシルは村人に別れを告げていた。

「父上、必ず手柄を立てて身を立ててくるから。」


「セシル、無理はするんじゃないぞ。必ず生きて帰るんだ。」


セシルを含めみんなが涙を浮かべ家族と別れを惜しむ。

だが、俺には別れを惜しむ相手はいなかった。


世話になっていた孤児院も三年前に育ててくれた先生がなくなってからは搾取しかしないクソやろうが赴任してきた。

おかげで俺に貯金もない。ホントに手ぶらでの出兵だった。


「タツマ行くぞ、ボーとするな!」

どうやら別れを済ませたセシルが出発をうながす。

「はいはい、行きますか。」

「貴様、セシル様に生意気だ!」

取り巻きの一人が殴りかかってきたが、蹴り飛ばし、軽く脅しておく。


「これからは村の連中に守ってもらえねぇんだからてめえこそ口の聞き方に気を付けな!」

効果覿面で集結場所に着くまで変なチョッカイをかけられる事はなかった。


集結場所に着くと既に一万の兵士が集まっていた。

話によるとこれから国王自ら隣国のバルス帝国に戦争を仕掛けるということがわかった。

そして、ここにいるのは一部で全体で十万の大部隊になるとの事だった。


「セス村から来ました。代表のセシル、十人です。」

セシルは受付に着任報告をしていたが、賄賂の1つも贈らないらしい。


「そうか、君は世渡りが下手だな。ここに行きなさい。」

受付から札を渡され俺達の部隊が決まった。

左軍最前線、それが俺達の戦場になる。


其処からはさらに戦場に向かい配置に着く。

戦場は広大な平地に多少の森川を挟んで向かいに敵軍およそ三万が待ち構えていた。


十万対三万普通に考えれば勝ち戦だった。

その為か、陣内は楽観的な奴等が多かった。

そして、それは軍を率いる者達も。


その日は本陣にて酒宴がとりおこなわれていた。

国王マルスの元にルガーニ伯爵がやってくる。

「陛下、帝国をいかがなされますか?そのまま併合なさいますか。」

「これこれ、まだ倒した訳ではないからのぅ」

「ははは、ご冗談を。この兵力差勝ったようなものです。」

そこに一人の女の子が入ってくる。

「御父様。」

「おお、マリアか。こっちに来なさい。」

マルスが招く。

周囲からは

「相変わらず御美しい。」

「婚約者はまだお決めになられておらぬようだ。うちの息子と縁が持てぬものか?」


「マリアよ、いかがした?」

「御父様、あまりに油断しすぎなのでは?」

「何を言うかと思えば、マリア、戦は男に任せておればよい。姉のクリスのようになるなよ。」

マルスには二人の息子と二人の娘がいた。


長男のアレク(20歳)は政治に優れ、時期国王として期待されていた。今回の戦争に反対しており、留守を任されていた。


その反面次男のクレイマー(15歳)は嫉妬深く、思慮に欠けており家臣から将来を不安視されていた。国王としては今回の戦争で手柄を立てさせ。帝国領の一部を割譲して貴族にする予定であった。


長女のクリス(23歳)は武勇に優れ、軍部の中では神格化されており、今回の戦争でも一軍を率いていた。国王としては早く嫁にいってもらいたいのだが本人にその気がなく、悩みの種でもあった。


次女のマリア(14歳)は特段優れたところはないがその美貌と優しさで心引かれる者は多く、求婚を求める者はあとをたたなかったが、本人は男性に苦手意識があり、国王としては姉のようにならないか心配していた。


「お姉さまは素晴らしい方ですよ。でも、私ではなれそうにないのは残念ですが・・・それより、以前お姉さまが言っておられました。『軍を率いる者がゆるめば兵士全てがゆるむ、戦に出る以上、勝つ以外の事を考えてはならぬ。』と、今見る限り兵士もゆるんでいると思われます。このような状況で戦えば被害が大きくなるかと。」


「マリア、口を出すなと言っただろ。さあ下がりなさい。」

「しかし、御父様!」

「下がれと言っただろ。」

「わかりました。最後に、明日、軍を慰安してきてよろしいでしょうか?せめて王族の一人として引き締めをはかりたいと思います。」


「勝手にしろ!」

マリアは下がっていく。


「いやはや、クリス様の影響ですかな?」

宰相のマルクスが話しかけてくる。


「クリスはマリアを大層可愛がってるからな。ワシとしては早く婿を見つけて大人しくしてもらいたいものだ。」

マルスは愚痴を洩らしつつも宴は盛り上がり、楽しい一夜となった。

これが国王マルスの最後の夜であった。



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