ゲーセンの巻② ※
音ゲーコーナーに向かうと、『メイメイ』と『チュウズム』があった。マッチングやソロプレイをしているのは他行の高校生達だった。
皆さんの為にちょっと軽く説明しよう。『メイメイ』はドラム型洗濯機のような形をした音ゲーだ。ちょうど洗濯機の入り口にタッチパネル式のディスプレイと縁の周りに八個のボタンがある。それを使い、ディスプレイに表示される枠とノーツを重なるタイミングでボタンを押すだけのシンプルなゲームだ。ワンコインで三曲プレイでき、セイミーパスカードと言うICカードを持っていればプレイ記録を保存できる。
「さて……やるか」
財布からワンプレイ(百円)分とセイミーパスカードを取り出す。
……そう言えば、玲愛は音ゲーって初めてなのかな? ちょっと聞いてみよう。
「玲愛って音ゲーって初めて?」
「ううん、何回かやった事あるよ。あんまり得意じゃないけど……」
「ふぅ~ん……じゃあ、こいつもやった事ある?」
ゲーセンコーナーのゲーム機に指差しして質問する。
「まあ、ちょっと一回試しにやったぐらいかな?」
「なるほど……。それならいきなりだけど、マッチングやってみない?」
「うん、いいよ! マッチングやろう!」
玲愛は嬉しそうな表情で答えた。嬉しそうな表情かわいいなぁ……見惚れちゃうよ……。
早速俺達はワンコイン分をコイン投入口にいれ、セイミーパスをカードリーダーにかざした。
『メイメイへようこそ! これでプレイしますか?』と言うアナウンスが流れる。ディスプレイには俺のペンネーム「RIKKUN」、メイメイのレート(一二.四五)、東奉の真梨沙のアイコン、無地のネームプレートが表示した。
その後に表示された『イエス』ボタンを押す。イベント開催予告のお知らせをポンポンとスキップして、今日のデイリーボーナスを入手した。
「玲愛、曲どうする?」
楽曲選択画面が表示された後、俺は玲愛に声をかけた。
「どうしようかなぁ……最初は海水くんに任せるよ」
「わかった。そうだなぁ……曲何にしようかなぁ……?」
このゲームは人気のアニソン、ミコミコ動画、ボカロ、オリジナルなどの総曲二百曲以上の豊富な楽曲が入っている。
いつもやっている曲はボカロの方なんだけど、玲愛に曲の温度差が激しいボカロをやらせてもいいのかな? まあ、いいか……難易度は低くてもいいし、玲愛のペースでやってもらえれば。
「ボカロ曲でいいか?」
「いいよ~~マッチングの準備は済ませたからいつでもオッケーだよ!」
「はいよ~~」
そう返事した後、『みっくみくの消失』と言う楽曲を選んだ。この曲は結構ハードな楽曲だ。急にリズムが早くなったり遅くなったり普通になったり……。まるで、梅雨の季節の天気みたいにころころとリズムが変わる。初心者にはお勧めしない曲だ。
「えっと……難易度はマスターっと」
俺は難易度選択でエキスパートの隣、マスターを選んだ。難易度はLV一四とこのゲーム内では最高難易度の一つだ。説明し忘れたが、このゲームの難易度はイージー、ノーマル、エキスパート、マスターの四つの難易度がある。初心者にはイージーかノーマル、中級者にはエキスパート、上級者にはマスターにするのがおススメである。
俺は数か月前から何度もプレイしているのでほぼ上級者なのだ。マスターのフルコンは出来ないけど、スコアはよい方だと思う。
(さてマッチング募集を出して……と、おっ来た来た――)
難易度の隣にマッチング募集を開くと、すぐに隣の玲愛のアイコンが出てきた。そこにはペンネームとレートが書かれてある。
(どれどれ……玲愛のレートは――うげっ!? じゅ、一五.〇六の虹レート!?)
曲が流れる前に玲愛の虹レートを見て思わず驚いてしまった。 に、虹レートはマスターレベルをフルコンかAP(オールパーフェクト)を何度もトライしないと取れないぞ。音ゲーの詳しい友達から聞いた話ではっ! れ、玲愛は数回しかやってない、ちょっと苦手だって言っていたのに!?
「ん? 海水くん、私の顔に何かついている? まさか……ゾンビメイク落ちていないよね!? 剥がれていないよねっ!?」
なんてメイクが剥がれていないか不安そうに訴えていた。そうじゃん、ゲームの事考えて彼女がゾンビという事に忘れそうになった。
「だ、大丈夫だよ……! メイクは落ちていないから!」
「そ、そう……よ、よかったぁぁ~~」
安堵の表情を浮かべる玲愛。……俺は玲愛の虹レートに動揺を隠しきれていなかった。
(嘘だろ……本当にちょっとしかやっていないのか? ま、まぁいい……とりあえず、曲をプレイしよう……レートの事は後回しでいい)
ポチっと『プレイする』の表示をタッチしてゲームを開始した。さて……今回こそ、この曲をフルコン出来るかな? あと、四ミスを無くせばフルコンなんだよ……。
『アーユーレディ?』と言う文字が出た後、タンタンタンと三拍子が流れる。
(来るぞ……)
緊迫した空気が流れる。もうそろそろ、タップがやってくる。何度もやっているが、最初の出だしの方の大量に流れる連打タップが苦手だ。いつもそこでミスをしている。今回こそくクリアして見せる!
(それと……玲愛の腕前見せてもらうじゃないか……!)
じろりと玲愛を睨みつける。上手いのか、下手なのか……拝見しましょうか。
そして、地獄のリズムゲームが始まった――――
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