ゲーセンの巻① ※

 ――テスト最終日。午前中にテストを終えた俺は学校近くの食堂で昼食を取っていた。


「うまっ……ずずずっ……」とラーメンをすする。


 ここの食堂のラーメンは美味い。鶏ガラと煮干しの出汁が醤油とマッチしている。しかも太麺なので食べ応えがある。こんな贅沢な出汁と麺を使用しているのに、三百円と学生のお財布に優しいリーズナブルな価格だ。プラス一〇〇円出せば大盛に変更できる。

 まあ、ラーメンの事は置いといて……本来のテスト期間中の俺はテストが終わったら、即刻家に帰ってゲームをしている。昼食だって食堂に寄らず家で食べている。じゃあ、なんで家にも帰らず、食堂に寄ってラーメンを食べているのか――それは彼女を待っているのだ。


「はぁ……はぁ……」


 店の外から息を整える人影が見えた。言い忘れていたが、食堂入り口の引き戸はプライバシーガラスになっている。


 がらら……と入り口の引き戸が開くと、息切れをした彼女――玲愛がやってきた。


「お、おまたせぇ……」

「おう、玲愛! テストお疲れ!」

「お疲れぇぇ……ひゃぁぁ~~今日は二時間連続……優等生でも連続でテストは嫌ぁ~~」


 玲愛は俺の前に席に着くと、ばたりとテーブルの上で寝そべり始めた。行儀悪いなぁ……優等生ならもう少し行儀よくしろよ。一応、食堂は公共の場だぜ?


「玲愛、お昼は食べたのか?」

「うん、さっき購買でパン何個か買って食べた」

「そう。それじゃ、俺が食べ終わるまでちょっと待ってくれねーか? あとスープだけだから」

「うん」と玲愛が頷くと同時に俺スープを一気に飲み干した。

「ぶはぁ……よし、行くか!」

「うん!」


 席を立ち昼食代金を払って、店を出てぐっと体を伸ばした。うぅ……気持ちぃ……体伸ばすと本当に気持ちいい。なんてただ気持ちいいを味わいたいだけで、体を伸ばしたのである。


「さて、テスト終わって飯を食べた事だし、初デート――行こうか」

「うん!」


 玲愛と俺はお互い顔を合わせて頷き、デートを開始した。

 テスト期間は今日で終了し、暇となった俺達は初デートをすることにした。放課後デートーー恋愛ゲームや漫画では定番のシチュエーション。俺はテスト二日目……付き合って翌日に速攻デートの約束をして、すんなりオッケーを貰ったのだ。


「とりあえず、どうする? どこか行きたいところある?」


 玲愛に何処に行きたいか尋ねる。


「うーん、そうだなぁ……これと言って行きたい場所無いんだよなぁ……」


 なんて呟きながら、何処に行きたいのか悩み始めた。まあ、最近の田舎の若者あるあるだよな……。

 都会みたいに可愛いカフェやアニメショップなどの面白い所が、こんな田んぼだらけの場所にある訳がない。


「海水くんは何処に行きたい?」


 逆に玲愛が俺に行きたいところを尋ねた。


「そうだなぁ……」

 

 正直デートのプラン何も考えていないんだよなぁ……すべて玲愛が行きたい場所に行けばいいと思っていたんだけど……。どうしよう?


「うぅん……どうしようかなぁ~~?」


 お互い初デートだし、あまり変なところ行って彼女の機嫌を損ねる事は避けないとなぁ……。どうしよう――――ん?


 ――ピロピロ……と言うゲームの操作音の音が聞こえたので、音が鳴っている方向に首を向ける。そこは県内チェーン店のイピナと言う名のゲーセンだった。


「あれ……こんなところにゲーセンが出来たんだ」


 俺の記憶では昔はパチンコ屋だったのに、いつの間にか改装してゲーセンになっているじゃん。そう言えば、今週の日曜日に新しいゲーセンが出来るって聞いたけど、ここだったんだ。


「海水くん? ……あぁ、パチンコ屋だったところが大改装してゲーセンになってるんだ。――ねえ、ゲーセンに行ってみない?」


 玲愛がそう提案する。ゲーセンかぁ……最近行ってないんだよなぁ……。久々だし、行ってみるか。


「そうだな……よし、ゲーセンで遊んでいくか」

「うん」


 玲愛はこくりと頷く。よし、初デートはゲーセンで決まりだな。早速ゲーセンの方へ向かおう。

 俺達はゲーセンへ向かい、二重の入り口を通り抜けると、がやがやと賑やかにゲームを楽しむ人々で賑わっていた。見知った顔――うちの高校の生徒の先輩や後輩がちらほらと見かける。考えている事は同じか……テスト終わったからゲーセン行こうぜ――そんな感じかな?

 とりあえず、ゲームをプレイする前にちょっとだけ店内を散策してみよう。定番のクレーンゲームやメダルゲームがあるのはもちろん、カードゲームやパチンコ・スロット、最新のゲームまで幅広いゲーム機が兼ねそろえていた。


「すげぇ……色々あるなぁ……普通なら市街地のゲーセンにしかない最新のゲームが四台も置いてあるぞ。音ゲーもあるし、スマホゲームのアーケード版もあるし、『トレインでGO!!』もあるじゃん! すげぇ……すげぇ……」


 なんて俺は思わず感激してしまった。こんな最新ゲームを投入するなんてすばらしい!


「ねえ、海水くん! どのゲームやる?」と、ワクワクした表情で玲愛は尋ねた。

「そうだなぁ……音ゲーの『メイメイ』と『チュウズム』でもいい?」

「いいよ!」


 玲愛はこくりと頷く。早速店舗の奥にある音ゲーコーナへ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る