リゾートプールへ行こう 前編
――八月に突入し、本格的な夏がやってきた。そして、夏と言えばアレを拝める季節でもある!
「来たぞぉぉぉぉぉ! 常夏の楽園――リゾートプールに!!」
ザザァァン……と波のあるプールの前で仁王立ちした友達の誠一がそう叫んだ。まさに漢を見せつけている……そんな感じだったが、その光景に俺は呆れた様子で見つめていた。
「誠一さ、叫ぶのをやめろよ。恥ずかしい……」
「立夏、これはな……リゾートプールの神様に宣言しているんだ! いいか、もうすぐお前の彼女と妹、エレン、雪菜の水着を拝むんだぞ! さあ、リゾートプールの神様にお礼を言うんだ!」
「いや、いいよ……」
誠一の意味不明なセリフと興奮にドン引きしながら断った。
今日は親友の誠一と雪菜、エレン、妹の七海、彼女の玲愛と一緒に市街地にある大型屋内リゾートプールにやってきた。そのプールは地域最大級の広さを持っている。定番の流れるプールや巨大スライダー、県大会でも使用できる二十五メートルプールが完備しているのだ。
正直、あんまりプールなんて俺は行く気に無かった。けど、玲愛も一緒にプールに行くと誠一から聞いたので、俺も行く事に決めたのだ。
「さて……そろそろ、女子達が来ると思うんだけどなぁ……?」
うぉぉぉぉ……と漢のオーラを醸し出している誠一をほっといて、キョロキョロと女子達を探す。
「お、居た居た! おーい、お待たせー!」
聞き覚えのある声が聞こえたので振り向くと、手を振る雪菜を筆頭にぞろぞろと女子組がやってきた。
「おー、こっちこっち~~! 随分時間が――――」
女子達の水着姿に俺は惚けた表情で眺めていた。じょ、女子達の水着姿……すげぇ可愛い! 雪菜はいつも部活で使用しているスタイリッシュな競泳水着か……。ぺったりと肌に密着した水着生地が、彼女のボディシルエットを美しく描いている。かっこいいけど、際どいⅤ字ラインがすらりと綺麗な脚の艶めかしさを引き出しているなぁ……。競泳水着フェチとしてはたまらんわ!
「ワァオ! 広いプールデース!」
エレンの水着は定番のビキニタイプか。巨大な二つの果実の立体感を出す水着のラインと括(くび)れたお腹周り……。そして金髪ロングヘアにマッチするフリルが付いた白い水着がとても似合っている。……まるでセクシー女優のようにエロティシズムの雰囲気を醸し出していた。あぁ……これはアウトだろ! エロすぎるよ! だってもう、周りの男とどもエレンの水着姿に釘付けになっているもん!
「むむぅ……」
七海はぎろりとエレンの豊満な果実に向かって睨んでいた。彼女の水着はパレオタイプだった。昔は子供っぽい水着を着ていたのがもう過去なんだなぁ……。お洒落で可愛い水着を着るようになったのかぁ……成長したなぁ……七海。なんて思いながら、しみじみとした表情で成長した妹の七海を眺めた。
「あれ……玲愛は? 居ないの?」
きょろきょろと周囲を見回すが、玲愛の姿が見当たらない。一体どこにいるんだろう?
「ううん、私の後ろに隠れてる……ほら、れーちゃん! 私の後ろに隠れていないで、彼氏に水着姿見せなさい!」
「えぇ……は、恥ずかしいよ……! ちょ、ゆっきー腕引っ張らないでッ!?」
雪菜は後ろに隠れていた玲愛をグイッと引っ張って俺の前へ出した。
「ど、どうかな……? 海水くん……」
玲愛はもじもじと恥ずかしそうな表情で俺を見つめている。さて……本命の玲愛の水着姿は一体何だろうか? 一度逸らしていた視線を玲愛の方へ向けると、雪菜と同じ競泳水着だった。水着の生地が、彼女の芸術的なボディラインにフィットして、美形な身体を魅せるように描いている。
(か、かわえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!)
なんて玲愛の姿を見た俺は脳内で叫んでいた。えぇなにこれ……奇跡的な相性でしょ!? 競泳水着ってショートヘアなキャラしか似合わないって勝手に思っていたけど……。黒髪ロングの玲愛と競泳水着……めっちゃマッチしているぅぅ!! やべぇ……今の状態でお持ち帰りしたいわぁ~~!
「あ、うん……とても似合っているよ! でもなんで競泳水着?」
「えっ……その――か、可愛い水着を買うお金が無くて……それで競泳水着を着てきたの……」
あぁ……恥じらって答える玲愛がめっちゃかわえぇぇなぁ!! このままエロゲみたいな美味しい展開へ行っちゃうか? ぐふふぅ~~!
「――ねえ、海水くん。口から涎が出ているけど、どうしたの?」
まじまじと水着姿を見つめる俺に対して、玲愛は首をかしげてそう質問する。
「えっ……? あっ……い、いや、なんでもない!」
「絶対やましいこと考えたでしょ? 『今晩のオカズはこれだな』って――」
背後から呆れた声で呟く雪菜の言葉に、ぎくりと身を震わせた。なっ……、こ、こいつ……俺の心を読んだのか!?
「んな訳ないだろ! ただ、その……玲愛の水着姿が可愛いから見惚れちゃって――」
「か、可愛い――かわわわわわわわわわわわ……」
ぽりぽりと頬を掻きながら答えた後、玲愛は突然ボン……と呂律が回っていない状態で頬を赤らめた。
「う、海水くんにか、可愛いって言われた…‥地味だなって言われる思っていたけど、可愛いって……」
なんて俺の耳には入らないトーンでぼそぼそと呟いていた。何か俺、変な事でも言ったのかな?
「そ、それよりもさ、早く遊ぼうぜ! 巨大スライダーに行くなら早く行かないと混むからさ!」
「う、うん、そうだね! 最初はスライダーで遊びましょう!」
むにゅんと冷たくて柔らかい玲愛の胸の谷間に、俺の右腕を引っ張って挟み込んだ。
「お、おう、そうだな……!」
こくりと頷いて、俺達はこの施設内で一番人気のある巨大スライダーへ向かった。
「くそ……何イチャついているのよ……。あのカップル……ムカつく」
「あぁ……、彼女が居ない俺達に見せつけているよな……。ムカつく……!」
「くく……お兄ちゃんの方が先に彼女を作るなんてぇ……妬ましい……!」
俺の後ろで彼氏彼女が居ない三トリオ (雪菜、誠一、七海)が、陰湿じみた嫉妬の言葉をブツブツと呟いていた。
(ふふふ……ざまーないぜ! 非リア充ども! 玲愛と付き合う前はあっち側の人間だったけど、五月から離脱したもんねぇ~~!! 悔しかったら早く作ってみやがれ!)
なんて思いながら、蔑んだ目で三トリオを見つめた。
「よーし! いっぱい遊んじゃいマース!! 皆さん、一緒に行きましょう!」
むぎゅ……と反対側の腕に巨大な果実の谷間を挟み込んできた。
「ちょッ!? え、エレン!? 何をして!?」
「リッカから借りたラノベにあったスキンシップデース! 気にしないでくだサーイ!」
(き、気にするよ! え、エレンの巨大な果実が……俺の腕を挟んでぇぇ!!)
「ちょっと、エレン! 私の恋人から離れなさいよ! 困っているじゃない!」
その光景を見た玲愛は、軽蔑するような眼差しでエレンにそう言った。まるでアサシンのような鋭い目つきだ。こえぇよ……!
「別にイイじゃないデスカ! リッカ、早く行きましょう!」
「そ、そうだな……」
「よくな~~~~いッ!! も~~~~ッ!! 早く立夏君から離れてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
玲愛の叫び声が、ドーム状のリゾートプールに木霊するのであった。
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