ショッピングモールデート in 女性ファッション専門店 ②



 ――数分後、『り――海水くんの意見聞きたいから、試着室の方へ来て』と言うLINE通知が来たので、俺は冷静を取り戻して玲愛がいる更衣室の前へ戻ってきた。


「れ、玲愛ぁ……。き、着替えたのか?」


「う、うん! 着替えたよ!」


 玲愛はそう答えてシャーと試着室のカーテンを開けた。これより、玲愛のファッションショーが始まるのだ――!


「ど、どう? この服……」と、きょろきょろと服の着心地を確認しながら俺に質問する。


 彼女は、先ほど俺が選んだ黒色の首掛けのタンクトップと黒色のゴムベルトタイプのスカートを着ていた。黒髪だから、黒のデザインがいいなって全部黒色に統一して選んだが……お、おいおい……可愛いじゃないか! Tシャツとは違い、タンクトップは美しい背中を露出しているから艶美な雰囲気を醸した女性に見える!


(可愛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! めっちゃかわぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!)


 なんて、俺は玲愛の可愛さにある事をしようと考えた。そう――玲愛の家で泊った時にやった、あれ・・をやろう!


「な、なあなあ……玲愛。腰を前の方に屈んで、右手を腰につけて! 左手を膝の上に置いて!」


「うえぇぇぇ!? えっと……こ、こんなかんじ?」


 玲愛は俺の指示通りにポーズを取る。この光景はそう――一緒に海に入ろうよと誘っているようなポーズ(?)だ。


「か、かわぇぇぇぇ……! そ、そのまま、このポーズを維持して! 写真撮るから!」


「うえぇぇぇぇぇ!? ちょ、海水くん!? しゃ、写真撮るの!?」


「うん、大丈夫個人観賞しか使わないから!」


「そ、それなら……いいけど」


「よっしゃ! それじゃ、撮影始めるぜぇぇぇ!!」


 早速スマホを取り出してカメラアプリを起動し、パシャパシャパシャパシャと今の玲愛を撮影し始めた。


「きゃっ……ちょ、海水くん! へ、変な角度から写真撮らないでよ!」


「へへっ、この前のお泊まりにやった罰ゲームのお返しだ!」


 パシャパシャパシャパシャ……本来の目的を忘れて、俺は玲愛の可愛いポーズと服を写真に収める!


「ちょ、いやぁぁん! は、恥ずかしいよぉ……際どい角度から写真撮られるなんて……。う、うわぁぁぁん! あの時の海水くん気持ちが分かったから、許してぇぇぇぇぇぇ!!」


「ヒャッホーッ! お持ち帰りしたいィィィィィィィ!! あともう少しだから、もうちょいポーズ維持してね~~!」


「そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 なんて玲愛は嘆いていた。それを無視してパシャパシャパシャパシャ……と玲愛を連写し続ける俺であった。


 △▽



「そ、それで、ど、どうなの……? 海水くん……」


 ――数分後、写真を撮られて動いていなかったのに「はぁ……はぁ……」と玲愛は息を乱しながらそう言った。


「とっても似合っているぜ! それに玲愛にピッタリな色合いだよ!」


「そう? えへへへへぇ……似合っているって、言われちゃった言われちゃった言われちゃった言われちゃった言われちゃった言われちゃった言われちゃった!」


 なんて玲愛はにやけながら後ろ向きで座り込んで、なにかぶつぶつ言っていた。


「玲愛? 何か言った?」


「あ、いやいや! 何でもないわ! 次はわ、私が選んだ服を着るから、ちょっと待ってね!」


 玲愛は噛み噛みに言った後、シャーとカーテンを閉めて着替え始めた。その間、俺は近くにあるパイプ椅子に座りスマホをいじって待つことにした。


「着替えたよぉ~~!」と、玲愛はそう言った。


 早いな……着替えるの……と思いながら、スマホをポケットに突っ込んで立ち上がった。


「そ、それじゃ、いくよ! じゃじゃーん!」


 カーテンを開き、玲愛は自分で選んだ服を俺にお披露目した。それは、最近流行りのフリルが付いたロングスカートとポリエステル繊維を使用した無地の白Tシャツの衣装だった。

 やべぇぇぇ……めっちゃかわぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! さっき俺が選んだ服よりもめっちゃかわぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! このシンプルな衣服が玲愛の可愛さを引き出しているぅぅぅ!!


「どう? 上半身はジャージにしてスカートは最近の流行りに合わせてみたんだ! 似合うでしょ?」


 スカートをつまんでバレリーナみたいに一回転しながら言う。

「うんうんうんうんうん! その衣装、めっちゃ似合っているよ!」



「え、ほんと!? よかったぁ……。さ、これも購入しよう!」


 玲愛は俺の意見を聞いて安堵の表情を浮かべ、シャーとカーテンを閉めて着替え始めた。次はどんな服に着替えるのだろう? わくわくするなぁ……!

 ――数分後、シャーとカーテンを開くと今朝から着ていたカーディガンと白いワンピース姿に戻っていた。


「あれ、もう終わり?」


「うん、海水くんが選んだ服と自分で選んだ服でちょうど予算内に収まるの。ありがとう、海水くん! おかげでいい服、見つかったわ!」


 玲愛はニコニコと微笑みながら、感謝の気持ちを伝えていた。多分、付き合ってから初めて見るとびっきりの笑顔だった。


「私、お会計してくるから、海水くんは先に店の外で待ってね!」


「うん……分かった」


 俺がこくりと頷くと、玲愛はレジの方へ向かって行った。


「……こ、これでよかったのかな? まあ、玲愛が喜んでくれているならそれでいいか」


 そう思いながら、俺は店の外に出て玲愛を待った。


「お待たせ―海水くん!」


 右手に大きな紙袋を持ち、左手で俺の方に手を振って戻ってきた。


「大きな紙袋だなぁ……玲愛、その荷物俺が持つよ」


 彼氏らしいことをしようと、俺は大きな紙袋に手を伸ばした。


「あ、じゃあ……お願い、海水くん!」


 玲愛は俺の伸ばした手に紙袋を渡した。いいよ、と断られると思っていたが、すんなりと受け入れてくれるなんて……。まあ、些細な疑問を考えるのは別にいいか。


「玲愛、他に寄りたいところあるかい?」


「海水くんが選んでくれた夏服が買えたから、もう寄りたいところは無いかな」


「そう?」


「海水くんは寄りたいところある?」


「うーん、俺も特に寄る所は無いかな?」


 アニメ&同人ショップに寄ろうと思ったけど特に買うもの無いし、この間ネットで新作のラノベとコミックを買ったばかりだ。


(そう言えば、今何時なんだろう?)


 スマホ画面の時計を見ると、一五時過ぎになっていた。ここでデートを終了してもいいが、ちょっと早いんだよなぁ……? 後二時間――一八時までは玲愛と一緒に居たいなぁ……。


「なぁ、玲愛。今、一五時過ぎ――――」


「ね、ねぇ……海水くん! 私、化粧室の方に行ってきてもいい?」


「あ、うん……いいよ。俺、ここで待っているから」


「はーい、分かったぁ!!」


 そう言って、玲愛はビューンと風をきるような音を出して駆け抜けていった。


「さて、俺は玲愛が来るまでソファーに座って待ってよ」


 近くにあるソファーに座り、玲愛が来るまで待つことにした。

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