ショッピングモールデート幕間:倉宮玲愛は誕生日プレゼントを買いたい 玲愛side


 ――立夏君が待っている間、私は化粧室ではなくパワーストーンが売っている店へ向かっていた。もうすぐ立夏君の誕生日だ。誕生日プレゼントを何あげようかと考えて、パワーストーンをプレゼントすることにしたのだ。

 シアター側の三階フロアにパワーストーン専門店がある。私はその店に到着して、早速ずらーと並ぶパワーストーンの商品を眺めていた。

 やる気や活力を上げるブラッドストーン、成功と繁栄をもたらすと言われている翡翠色のストーン、癒しを与えるアクアマリンなど……色々なパワーストーンが並んでいた。

 しかし、私が誕生日にあげようと思っているは誕生石のパワーストーンだ。立夏君の誕生月である7月の誕生石はどれなんだろう?


「いらっしゃいませ、何かお探しでしょうか?」


 背後から、ストーンを探している私を見ていた女性店員さんが声をかけた。


「えっと、誕生石は何処にありますか?」


「――えっと、今月の誕生石ですか?」


「え、えぇ……はい」


「レジ前に今月の誕生石コーナーにあります」


「ありがとうございます」


 お礼を言って、レジの前の今月の誕生石コーナーに向かった。そこには7月の誕生石である――ルビーとサンプル原石と加工した石が並んでいた。


(7月の誕生石はルビーだけなんだ……)


 そのコーナーにあった商品紹介のカードがあったので見てみると、『ルビーはダイヤモンドに次いで知られている鉱石で、7月の誕生石である。この石の石言葉は情熱や深い愛情に恵まれ、成功へ導いてくれるでしょう。特に恋愛を前進させたいと思っている方にピッタリなパワーストーンです』と書いてあった。


「誕生石はルビーのみだからルビーを買う訳だけど、一体どんな形をしたルビーを贈ればいいかな? 普通に親指ぐらいの大きさのルビーにしようかな……?」


 そう考えた私は早速、親指ぐらいの大きさのルビーストーンの値段を確認すると、軽く税別一万円オーバーしていた。


(ガガガっ!? くくくくくくくくくく、くそ高けぇぇぇぇ!? 確かにルビーは高いのは知っていたけど、お、親指ぐらいの大きさのルビーでい、一万円!? しかもぜ、税別表記だとぉぉ!?)


 なんて、親の支給も無くバイトだけで生活する私にとって驚きの値段であった。


(だ、ダメだわ……税別一万オーバーは流石に無理! 一週間半分の食費がなくなっちゃうわ! 諦めて、もう少し値段が安い石を探そう)


 親指ぐらいの大きさのルビーは止めて、もう少し安い石を探し始めた。


「えっと……どれが安いかな? う、うぅん……?」


「お客様、何かお探しでしょうか?」と、背後から違う女性店員さんが声をかけた。


「えっと……誕生石を買いたいんですけど、その……安く買える商品ってありませんか?」


 私は誕生石コーナーに向けて指差しして、店員さんにそう尋ねた。


「そうですね……このコーナーで安いパワーストーンはビーズ一個と言ったところですかね~~?」


 店員さんはそう言うと、誕生石コーナーにあったルビーのビーズが入った瓶を手に持って私に見せてくれた。瓶に貼ってあった値段を見ると、ビーズ一個の値段は税別二百円とリーズナブルな価格だ。でも、ビーズ一個だけ買うのはちょっと寂しいような気がする……。


「……うーん、どうすればいいのかな? 一個だけじゃちょっと寂しいですよね?」


「まあ、そうですね……使用用途によっては1個だけ買う人はいますが、プレゼントとして贈る人で一個の購入はあまりいませんね」


「そうですか……うぅん。どうしようかな?」


「――誰かに贈るのですか?」と、店員さんはそう質問してきた。


「え、えぇ……ちょっと彼氏の誕生日が近いので誕生石をプレゼントしようかなって思って……」


「それでしたら、この商品とビーズの組み合わせはどうでしょうか?」


 店員さんが持ってきたのは、ビーズぐらいの大きさのルビー勾玉だった。勿論、これも誕生石コーナーに置いていた品物だ。


「勾玉かぁ……」


「ビーズと組み合せてもいいですが、単品でも十分にアクセサリーになりますね」


「因みに、お値段は?」


「一個で千二百円です」


 勾玉一個で千二百円だし、単品でもアクセサリーになるって言うなら、勾玉一個だけで十分かな――よし決めた! 勾玉一個だけ購入して立夏君にプレゼントしよう!


「それじゃ、ビーズは止めて勾玉一個買います」


「ありがとうございます。よろしかったら、勾玉を入れるお守り袋はいかがでしょうか?」


(お守り袋……そうだね。勾玉を入れる袋が欲しかったし、買っちゃおう)


「それじゃ、お守り袋もお願いします。あと、お守り袋に勾玉入れてください」


「柄の方はどうしますか? 三種類あります」


 店員さんが手を差し伸べた方向へ視線を向けると、風鈴の絵柄が入った水色のお守り袋、雲の柄が入った黒のお守り袋、新選組の羽織をイメージしたお守り袋があった。


「――それじゃ、風鈴の絵柄が入ったお守り袋でお願いします」


 立夏君は夏生まれだし、夏に似合う風鈴の絵柄の方がピッタリだな。


「わかりました、今お入れしますのでレジにてお待ちください」


 店員さんがそう言うと、私はレジの前に立って財布を取り出した。


「お待たせしました。こちら誕生日プレゼントとして贈るのでしたら、ラッピング袋を無料でお付けします」


「お願いします」


「ありがとうございます。それでは先にお会計の方をお願いします。合計で一九九〇円になります」


 タブレット端末で表示された金額を確認して、二千円をトレイに置いた。


「二千円お預かりします。十円のおつりとレシートです。袋詰めしますので少々お待ちください」


 レシートとおつりを受け取って財布に入れて、袋詰めが終わるまでレジ横で待った。


「お待たせいたしました」と店員さんから商品が入った小さなラッピング袋を貰い、店を後にした。


「むふふ……買っちゃった! 立夏君の誕生日プレゼント買っちゃった!」


 立夏君のプレゼントを胸に当てて、初の恋人にあげるプレゼントを買えて喜んでいた。去年は立夏君の誕生日なんて知らなくて渡せなかったけど、今年はちゃんと誕生日を聞く事が出来た。あとは渡すだけだ。


(早く誕生日にならないかなぁ~~今すぐ渡したいなぁ~~)


 なんて誕生日前からウキウキした気持ちになりながら、立夏君が待つあのファッション専門店前へ向かった。




 ――『誕生日編』に続く。

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