玲愛の家に行こう ③※
「さて……最初はどうする? 俺がコース決めちゃっていいか?」
「うん、いいよ。私、初めてだから分からないし……」
「わかった」
とりあえず世界のコースを選び、検索でクリア率が五十パーセントぐらいのコースを探す。玲愛は初心者だから簡単なコースでトライした方がいいだろう。
「コースはこれでよし……勝負っすか! ルールは先にゴールした方が勝ち――それでいいな!」
「了解! 私、絶対に負けないわよ!」
「へッ、それはこっちのセリフだぜ!」
コースのローディングが終わり、二体のキャラが出てくる。俺が操作するキャラはにゃんにゃんと言う名の茶色の猫、玲愛はにゃんにゃと言う名の黒い猫だ。二人プレイの場合はカウントが終わってからスタートする。――フライング防止のためだ。
スタートまでのカウントが始まる。三、二、一――スタート!
(五十パーセントの割には最初敵と落とし穴などの障害物が多いな……。まあ、避けたり倒したりすれば問題ない)
ポチポチとAボタンと十字ボタンを交互に押して、敵と障害物をすんなりと避ける。
(さて俺は簡単に突破できたが、玲愛の方はどうかなぁ~~?)
ちらっと視線を彼女の方に向けると、最初の敵の方で苦戦していた。
「うぅっ……羽根つきの敵がウザいぃ……」
小さな画面を睨みつけるように見ながらボタンを押して敵を避けた。だが、その敵の背後に居た地面を歩く敵にぶつかって死んでしまった。
「ふにゃぁぁッ!? し、死んだぁぁぁッ!」
「へっ、ざまーないぜ! おらよっ、中間地点突破ッ!」
なんて挑発的な口調で言うと、ぴろりん……と中間地点の旗を取る!
「ふえっ!? も、もう中間地点!?」
のんびりと苦戦している玲愛をあざ笑うかのように、敵と障害物をひょいひょいと避ける。遂にゴールの旗が見え、そのままポールを掴んで一番乗りした!
「――よっしゃッ! ゴール!」
「ふぇぇぇぇぇぇぇ!? も、もうゴールしちゃったの!?」
呆然とした表情で玲愛はゲーム画面を見ていた。
「あぁぁッ!! く、くやぢぃ!!」
玲愛は床に寝転がってじたばたと暴れ始め、某駄女神の変顔みたいな泣き顔して悔しがっていた。
その光景に、俺は思わずぶぶっ……と笑ってしまった。
(お、面白れぇ……!)
暫く腹を押さえて笑っていた。勿論、彼女に気づかれないようにね。
「しょ、初心者の私を虐めてない!?」
「虐めてはいませぇぇん~~むふっふふふぅ~~」
鼻をほじくり、上目線で玲愛を見下して挑発させる。
「う、海水くん! も、もう一度勝負しよ! 今度こそ、絶対に負けないわ!」
「いいぜ! 今度こそ俺に勝てるかなぁ~~? ムッフフフ~~」
「今度は私がコースを選ぶね!」
玲愛は怒った口調で言い、コースを選んでいた。
(まあ、難しいコースを選んでも俺に勝てるはずないけどね! このゲームを五百時間もプレイしているんだ! そのおかげで、クリア率〇.一パーセントのコースを一発クリアできるもんね……)
イキリな事を内心で呟き、ポチポチとコースを探している玲愛を眺める。
「これにするわ!」
「どれどれ……?」
玲愛が選んだコースの詳細を見てみる。外国人が作成したコースでクリア率はなんと――〇.一三パーセントと言う鬼畜コースであった。これはクソコースだな……と何となく悟った。
「おっ……クリア率〇.一三パーセントか……難しいコースを選ぶな~~玲愛」
「ま、まあね! さっきのコースで肩慣らしできたから、このぐらいよゆーでしょ?」
「ほほぉ~~さっきは肩慣らしと言う訳かぁ……。それじゃ、お手並み拝見と行きましょうか――君の腕前を!」
俺は内心微笑みながら、玲愛にプレッシャーをかけるように言った。
「よ、よゆぅーよゆぅ……私は簡単にクリアできるもん」
玲愛はガタガタと震わせながら、コントローラーを握りしめている。
(れ、玲愛の奴、だ、大丈夫か?)
様子がおかしい彼女を見ていると、コースのローディングが終わってカウントが始まっていた。と、とりあえず今はゲームに集中しなきゃ!
カウントがゼロになりゲームがスタートする。先頭に立ったのは俺だ。
(うわっ!? な、なんじゃこりゃぁぁぁ!?)
クリア率の低いコースを見て俺は驚いていた。このコース――異常なまでに敵と障害物が多い! 土管から敵が出てきて当たって死ぬし、足場が無くて落下するし! とにかくこのコースは上級者の俺でも難しい! こりゃクリア率が〇.一三パーセントになるわ……。
「うぎゃぁぁぁぁぁ!! ま、また敵に当たったぁぁぁぁ!! うわぁぁん!! なんで最初からスタートしなきゃならないのぉぉ……? 全然海水くんに追い付けないィィィィ!! わああああああん!!」
さっきからうるさいなぁ……。視線を彼女の方へ向けると、アニメの作画崩壊みたいに変な形相をしながらプレイしている。例えばそう――ブヂ切れ猿のような口を大きく開けているような表情だった。
「ぐぶぶぶっ……!?」
そんな変顔するのだから思わず笑ってしまった。イライラするような大声だけど、か、顔が……面白れぇ!
(なんだよこれ……モノマネコントを見ているのか? それとも、変顔で俺を油断させる作戦なのか?)
なんて思っていると、いつの間にかゴールの旗が見えた。
「あら、もうゴールじゃん」
茶にゃんにゃんをジャンプさせて、ゴールポールに掴まりゴールした。
「うぇぇぇぇぇぇぇッ!? も、もうゴールしちゃったの!?」
その目撃した玲愛は呆然とした表情で、勝利のポーズを決める茶にゃんにゃんを見ていた。
「――も、もう一回! もう一回勝負だよ! 海水くん!! コース、私が選ぶね!」
「い、いいけどさ……もう少しクリア率が高い奴からトライした方が――――」
「あぁ!? なんか言った? 噛み殺すよ!!」
ゾンビの牙をチラつかせた玲愛の剣幕に恐怖を感じ、俺は黙り込んだ。ゾンビの牙をチラつかせて黙らせようなんて……卑怯なやり方だろ。
「よし、このコースに決定! それじゃ、始めるよ!」
玲愛はまたクリア率の低い鬼畜コースを選び、張り切った声でゲーム開始を宣言した。果たして玲愛は俺に勝てるのだろうか!?
次回に続く!
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