エピローグ

 佑李ゆうりくんと一緒にある場所にやって来た。

 そこは街が一望できるビルの展望台だった。

「きれいだね。佑李くん、ここは」

「うん。誘って良かった」

 一緒に展望台を降りると、行きつけのカフェに向かった。

 それは佑李くんの母方のおばあちゃんがオーナーの神崎かんざきさんだったの。

 わたしはそのことを聞いてびっくりしてしまった。

 意外と世間は狭いみたい。


 帰るときに佑李くんと手を繋いでいく。

「楽しかったね。佑李くん」

「うん、みっちゃん。またどこかに行こう」

 佑李くんはそっと肩を抱き寄せられる。

 そのときに視線が合った。

 同じクラスになったときには怖かったし、とても嫌いだった。

 でも、いまは違う。

 とても好きだ。

 そっと唇が重なって、顔が熱くなる。

「佑李くん……?」

 佑李くんは顔を赤いけど微笑んだ。

 わたしは心臓がバクバクと激しく波打っている。

「佑李くん……ずるい」

 これからこんなこと、されると心臓が持たなくなりそう。

 そのままそっと手を繋いで歩いていく。

「みっちゃん、帰ろっか……」

「うん」

 歩きながら指を絡めた繋ぎ方にして、二人で並んで歩いていく。

「これからも、こうやって歩きたいね」

「うん」

 未来のことは誰にもわからない。

 いつか何年も経っても、こうやって歩いていきたい。














 夕焼け色に染まる空を見つめながら、佑李くんが話している。

「――なんてことあったな?」

 ふと昔の出来事を思い出して、歩きながらずっと話していた。

 高校時代の話をずっとしていたんだ。

「うん。懐かしいね」

 お互いに左の薬指には同じデザインの指輪がはめられている。

 佑李くんはオリンピックに二度出場して、個人戦でメダルは取れなかったけど上位入賞をした。

 二度目のオリンピックを最後に現役引退して結婚して、あと数ヵ月で二十年になるんだ。

 いまだ手を繋いで帰ることもある。

「父さんと母さん。また手を繋いでるよ」

「いつもラブラブだよね~。うちとれんが高校生になっても」

「だよな~」

 後ろからそんな声が聞こえてくる。

「こら! あん、蓮。聞こえてるぞ」

 黒髪の杏とダークブラウンの髪の蓮が少しだけ見つめている。

 二人は子どもで高校生になった双子の姉弟だ。

 この子たちは選手だった佑李くんに影響され、フィギュアスケートをしている。

 コーチはもちろん佑李くんだ。

 似たようなバレたという表情で、笑いながら走っていった。

 フィギュアスケートで杏と蓮を支えるために、佑李くんと一緒に話したりもしている。

 二人の衣装を作ったり、送り迎えをしたりしている。

 二人ともそれに応えるように世界で活躍する選手になっている。

「やれやれ……あの二人は誰に似たのか」

「わからないね」

 そんなことを言いながら、家に帰っていっく。

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世界一嫌いで好きな人 須川  庚 @akatuki12

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