第2話 文化祭のモデル
文化祭の準備は夏休みのときから始まっていて、もうあと二週間後に当日を迎えることになるんだ。
わたしは被服手芸部が部室として使っている被服室にいた。
「
授業が終わってから、いきなり
正直、何をされるのかわからなくて、怖くなっていた。
「ないけど? 部活の展示の準備も整ってるし……」
「うん、いきなりだけど、被服手芸部のモデルになってくれないか?」
被服手芸部は毎年文化祭でファッションショーをしている。その衣装は完成度が高いんだよね。
「え、でも……いいけど、露出は低いのがいいよ」
わたしは一応希望を言っておいたけど、上遠野はとても嬉しそうな表情を浮かべていた。
「上遠野、めちゃくちゃかっこいいね」
「あんな表情できるんだね」
「普段はあんなに怖いのにね……」
そういったクラスメイトの言葉が聞こえてきたけど、本人はモデルが一人増えた嬉しさでいっぱいのようだった。
そのまま荷物をまとめて、すぐに被服室に直行して、いまに至るんだよね。
「わぁ! めちゃくちゃかわいい子を連れてきたね。
「そうね~、彼女?」
「違います! クラスメイトの碧峰です」
部員は二、三年生が五人ずつ、一年生は七人の十七人だった。
「碧峰
部員は上遠野以外は女子で肩身が狭そうだ。
すぐにファッションショーで着るための衣装合わせが始まっていた。
「え~と。碧峰さんは露出は低いのがいい?」
「はい。あんまり好きじゃなくて……」
わたしが話すと、部長の三年生の先輩が首もとから胸元、腕全体を覆うドレスの前に向かわせた。
「これが一番いいかもね。碧峰さんは背も少し高いし、スタイルも良いしね」
わたしもうなずくと、上遠野が消えていることに気がついた。
「取りあえず、ドレスの試着を試してみよう! 佑李くんもいま衣装の試着で消えてるから」
部長さんがマネキンのドレスを脱がせて、そのまますぐに衣装を置く小部屋で衣装を着替えるのを手伝ってくれた。
「どうかな? 碧峰さん。余裕とかは」
「余裕はあります、ちょうどいい感じです」
ヘアスタイルもハーフアップにしてもらって、そこからレースのベールをつけた。
それはまるでウェディングドレスのようなデザインで、めちゃくちゃびっくりしてしまっていた。
そのまま造花の花束を持ったまま、部長さんはコクコクとうなずいていた。
「似合ってるね。黒髪がきれいに映えるから、ハーフアップでもかわいいね」
ここまで言われるのは慣れてなくて、思わず照れてしまったの。
「ありがとうございます……?」
わたしは上履きの代わりに白いヒールき履き替えて、被服室に戻ろうとしたときだった。
「うわ、佑李くん! めちゃくちゃイケメンだよ?」
「結婚式のモデルさんだよ!! オールバックの方が好きだよ」
わたしはドアを開けようとしたけど、部長さんが止めて被服室にいる部員にアイコンタクトを取っていた。
「碧峰さん。入ってきていいよ!」
わたしは被服室に繋がる部屋のドアを開けた。
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