第1章 夏から秋

第1話 嫌いで怖い

 上遠野かとおのは人を寄せつけない雰囲気を持つ。

 というか……寄せつけられないと思うんだよね。

 クラスメイトに冷たい態度をとったり、きつい言葉で話したりするんだ。

 そのせいかクラスメイトからは遠巻きに見られたりしている。

 あと、先生からの生活指導のときとかもあるから……ちょっと大変。

「上遠野くん……そのピアスを取りなさい! 何度目ですか!」

「ああ? ダメなのかよ、開けたばっかりなんだってーの!」

「いいから、早く取りなさい!」

「また始まった。上遠野と学年主任の先生との戦い」

 クラスメイトの誰かが言って、朝礼から帰るときに振り返った。

 上遠野は両耳にピアスをしてきたことを先生にバレていたようだった。

 よく生活指導が入るときに、よく引っ掛かることがある。

「ピアスって、上遠野……一年のときからつけてるんじゃ」

「だよね? ミッチー」

 わたしのすぐ後ろにいた稲木いなき英梨えりちゃんと教室に戻ってから話していた。

「ミッチー、上遠野とまた隣の席なの?」

 わたしは英梨ちゃんの机に突っ伏す。

「そうなんだよ……上遠野が怖くて」

 最初の上遠野の第一印象は冷たい、怖いっていう感じだった。

 上遠野が乱暴にイスを派手な音を立てながら、イライラしているのか不機嫌そうに座っていた。

「かなりイラついてるね……」

 わたしが自分の机にある筆記用具を取ったとき。

「あ? なに見てんだよ?」

 目つきが鋭くて、思わず目を逸らしてしまう。ちょっと口調もイラつていると、かなりキツくなってしまうのは知ってるけど。

「ちょっと。上遠野、その言い方はないじゃない?」

 英梨ちゃんがわたしよりも先に上遠野に話していく。

「あーあー、そうですか! わかりました。静かにしてればいいんですよね!?」

 完全に開き直って、上遠野は机に突っ伏して寝る体勢になっていた。

 わたしはそのきつめの言い方がとても怖かった。

「なんで、あんなことを言うの……?」

 わたしはそのことを言えなかった。

 めちゃくちゃ怖いし……なにか言われたらって思うと言いにくかったの。

 そのときに上遠野と目線が合った。

 緑色と茶色が混ざったような不思議な色合いをした瞳でこっちを見つめられると、そのときに引き込まれそうになってしまいそうになる。

 ハッとして、ロッカーにある教科書とかを出すことにした。

 少しだけドキッとしてしまう。

「上遠野の目……きれいな色だったな」

 でも、上遠野が取る態度や口調がとても高圧的なような感じがする。

 小学校の頃からそういった感じの子が苦手なわたしは、すぐに嫌いになってしまった。

 あと半年も一緒にいるかと思うと、気が遠くなる。

「ミッチー、もうすぐ授業だし……戻った方がいいよ?」

「うん……わかった」

 一時限目の英語はとてもいい声をしている男の先生が担当だった。

 紫原しはら嶺生れお先生は去年新卒で学校にやって来た若い先生だ。

 先生の授業は終始和やかな雰囲気で終わった。

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