第34話 テスト返却
目が覚めたのは深夜二時半。
「寝落ち、してた……」
大会のサイトで結果が出ていたの。
そこに佑李くんの名前は一番上に書かれてあり、その下にはアレクサンドル・ペトロフ選手が二位になっていた。
「ほんとに……優勝したんだ」
優勝して佑李くんはびっくりしていると思うんだよなぁ……。
そのときにLINEを起動させると、佑李くんからメッセージが送られてきていた。
『優勝した。応援してくれて、ありがとう』
メッセージは深夜になる頃(向こうは夜のはず)に来ていた。
スタンプを送って、もう一度寝ることにした。
今日も学年末テストのテスト返却で、結果に一喜一憂しながら授業受けていた。
「あぁ~、低いね。ミッチーも」
さっきまで化学のテスト返却が行われていて、平均点は低くて赤点はクラスの三分の一の人数だった。
テストの解答用紙にある点数は黒板に書かれてある赤点の点数を回避している。
もともと理数系の教科は赤点にはならないけど軒並み低い。
「ミッチー。テストどうだった?」
隣の席に座っている
「化学は赤点じゃなかったよ。赤点回避できたよ……疲れた」
「うん。うちもギリギリだったの。赤点じゃなかったけど……」
化学はギリギリだったらしいけど、赤点回避
「次の授業って、なんだっけ?」
「コミュ英。
先生の名前を聞いただけで突っ伏していた上半身を起こして、いきいきとした表情でロッカーの方へと向かった。
わたしもロッカーでコミュ英の教科書とノート、ワークを持つと、机に戻ることにした。
「みんな、おはよう!」
紫原先生が来るとどよーんとしていた雰囲気が明るくなる。
「おはようございます。紫原先生、今日はどうしたの? めちゃくちゃおしゃれしてんじゃん」
「ちょっとな! 中学の同窓会があるんだよ」
先生は仕事の直後に行くらしく、その服装で学校に来ていたという。
英梨ちゃんは席に戻ると、じっと先生を見ているんだ。
「ミッチー。先生、かっこいい~」
「すごいおしゃれだよね。スーツが」
いつも先生が着ているスーツは普通のもので、でも今日はブランドものなのか上質なものを着ている。
「じゃあ、授業を始めるよ~。号令をお願いします」
すぐに号令をしてから、授業が始まった。
「え~と。出席を取ります。
「あ、はい!」
「
「はーい!!」
次々と名前を呼んでいき、先生の声が教室内に聞こえる。
「
佑李くんの席を見て、出席簿に何か書いている。
そのあと全員の名前を呼び終えてから、先生は教卓に置いてあった自分の教科書を開いた。
「それじゃあ、授業を始めます。前回の続きで教科書は――」
わたしは教科書とノートを出すと、授業の板書を書き始めた。
いま習っている単元はグレートバリアリーフのサンゴについてだった。
「え~と、オーストラリアにあるグレートバリアリーフは世界遺産であり、世界最大のサンゴ礁です、その数はかなりあって約二千九百種類。もちろん色とりどりのサンゴが見られます」
先生の声はよく通る。
たまに朝礼で静かにするのを促す声が聞こえてくる。
「このグレートバリアリーフには現在危機に直面しています。その理由を教科書の本文から三つを見つけて、マーカーで線を引いてください」
教科書の本文から見つけたのは「
わたしは授業の板書を再び書き始めた。
英梨ちゃんが肩をつついてきた。
「どうしたの?」
「これであってる? 確かめたくて」
英梨ちゃんが教科書を見せると、わたしと同じところに線を引いてあった。
「あってる、大丈夫」
なんか最近佑李くんがいないことに慣れてきた。
試合で結果を残して、学校の勉強も両立してるのがすごいと感じた。
佑李くんが帰国してきたら、何を話そうかな? と考え始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます