第14話 静かで寂しい
理由は本人が教えたくなかったようで、先生しか知らないようだ。
「あれ? 上遠野、休みなんだ~」
「体調が優れないのかもね?」
「数学の宿題、やった? ミッチー」
「やってない!」
授業が始まる前まで英梨ちゃんと数学の宿題をやっていた。
でも、だれも休むことに関しては不思議ではなかった。
「上遠野、インフルになったのかな?」
「あ~、たぶん。そうじゃない?」
「確かにね~。体調の波もあるかもしれないしね」
「学校でもインフル、多くなってきたもんね……上遠野、大丈夫かな?」
クラスメイトたちが話しているのが聞こえてきた。
学校でもインフルが流行り出していたのと、上遠野が前から体調を崩していたこともあったからそう考えるのが自然だった。
そして、授業が始まった。
いつものように進んでいるはずなのに、やけに左側が静かなのが落ち着かない。
よく上遠野に数学の問題を教わったりもしていたから、そのせいでもあるんだけどね。
「う~ん……どうなんだろう」
わたしは昔からの癖で左側を見てしまうことがある。
ただそこには誰もいなくて、空席となっている上遠野の席。
いつも遅刻とかでいないのに、わたしは少しだけ落ち着かなかった。
なんか上遠野がいないのは寂しく感じてしまう。
こんな気持ちになるとは思ってなかった。
「それでは、
「あ、はい」
黒板に答えを書くと、そのまま席に戻る。
ふとしたときにあの記憶がよみがえってくる。
なぜかいつもリンクと金色に近い茶髪に明るいヘーゼルブラウンの瞳をしている男の子が一緒だった。
その子をどこかで見たことがあるんだよなぁ……。
でも、普通とはちょっと違う子で一人でいることが多かった。リンクでは人の視線を集めるようなスケーティングをしていた。
あの子は全く違うって、思ってしまうほどだった。
上遠野が休んで四日が過ぎた。
わたしは放課後に部活をやって、一人で帰ることにしたときだ。
そのときにLINEがやって来た。
『緊張してきた。ヤバい……』と上遠野からメッセージが送られてきた。
『大丈夫?』
『ムリ。実力が出せないよ』
わたしはそのメッセージに少しだけ気になった。
『実力が出せない……?」
どうやら上遠野がめちゃくちゃ緊張しているみたいで、実力が出なさそうだという。
どうしてだろう? 今日は休みのはずなのに。
『上遠野って、いまどこにいるの?』と送ると、すぐに既読がついて返信がやって来た。
「え……うそ!?」
わたしは玄関で叫びそうになった。
それはちょっと心臓が破裂しそうになったくらいだった。
びっくりさせられて、めちゃくちゃ怖くなった。
スマホを持つ手が震えて落としそうになってしまう。
「どうしよう……上遠野が」
家に入って部屋に戻ると、そのままベッドにダイブした。
「はぁ……うそでしょ~」
わたしは心臓がドキドキして、とても落ち着かない。
メッセージを見つめると、それが現実なんだと感じた。
返信は『大阪にいる』とメッセージだった。
それは今年のフィギュアスケートの全日本選手権が開催されている場所。
上遠野は選手として、大阪の会場にいるようだった。
そのときにリンクにいたあの子が上遠野なんじゃないかって思い始めた。
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