第6話 ファッションショー
ファッションショーの直前になって、緊張で手足が震えてきた。
「大丈夫?
「うん、緊張しちゃって……」
わたしは深呼吸をして、薄暗いなかで
「毎年、緊張するんだよな……俺も。ファッションショーは慣れない」
ファッションショーが始まるアナウンスが体育館に響いたとき、体がビクッと反応してしまったんだ。
「心配はない。俺を信じて、ランウェイを歩けばいいから」
上遠野の話を信じて、わたしは舞台袖でショーを見ていた。
音楽を合図に
そして、和服をアレンジした衣装をつけた人が出てからすぐに曲調が変わって、カウボーイの格好をした先輩が歩く。
そのときに舞台裏は大慌てで着替えをしたりもしているんだ。
そして、その出番がやって来た。
心臓が破裂しそうなくらいドキドキしている。
「次、上遠野と碧峰さん! 行って」
「うん」
そのときに上遠野の腕に手を置いた。
「じゃあ。行こう」
手足の震えなんかお構いなしに、すぐに舞台袖から歩き始めた。
スポットライトがとてもまぶしくて、目を細めそうになった。
「あんまり、目を細めない方がいい。遠くを見ていろ」
上遠野のアドバイスを見てから、すぐにわたしは舞台からランウェイに降りる。
観客席からは黄色い声援が聞こえてきた。
たぶん、上遠野の姿を見て反応してしまってるかもしれない。
いまは前髪をオールバックにしているから、普段とは印象が変わってもう別人のような気がする。
わたしが少しだけ違う気持ちになった。
「ここでポーズだ」
言ったときに上遠野がお姫様抱っこされてたんだ。
「え!?」
「キャアア!!」
ここで最大の黄色い声援が体育館に響く、共学なのに女子の声がめちゃくちゃ多く話している。
ランウェイにおりると、わたしは観客席にブーケを投げた。
そのときにはもう楽しくて仕方がなくて、一日目のショーが終わったときはホッとしたし、ずっとドキドキしていたの。
「お疲れ様、碧峰~」
ファッションショーが終わった。
着替えとメイク落としを済ませて、被服室に衣装を戻しに来たときに上遠野に声をかけられた。
「うん、上遠野もお疲れ様、持ち上げられたときはびっくりしたけど……」
上遠野はほぼアドリブであれをやっていたみたいで、部員のみんなも頭をもみくちゃにしていたんだ。
「うん……また明日な!」
上遠野は顔を真っ赤にして被服室を出ていってしまった。
わたしはその表情にドキッとしてしまった。心臓の鼓動が自然と速くなっていく。
英梨ちゃんが声をかけてくれるまで、しばらくはボーッと上遠野の走っていった方を見つめていた。
二日目のファッションショーがとても楽しくて、クラスも部活も文化祭は大成功で終わったんだ。
そのときに上遠野がクラスの輪に入っていくような雰囲気で、それはこれからも大丈夫だと思わせてくれた。
でも、どこか上遠野の表情には影があった。
そのことがわかったのは、冬になる直前だった。
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