第23話 初詣

 今日は朝に起きたら午前九時過ぎだった。

 朝におせちのなかでもあっさりとしたものを食べる。

 そのあとに母さんに出してもらったシンプルな柄の着物と羽織のアンサンブルを着付けて、最寄り駅にある大きな神社へ初詣に行くことにした。

 着たのは赤地に格子柄の模様がついたもので、わたしは髪を一つにまとめて少しメイクもして行く。

 足袋と草履を履いて、家を出ると壱ノ原いちのはら神社へ向かうことにした。

 とても寒くて、カイロを片手に持ってきて良かったような気がする。

「あれ? みっちゃん!」

 聞き慣れた声が聞こえてきて、目の前には蒼生あおいくんともう一人の女の子が来ていた。

「あ、蒼生くんと美樹みきちゃん。明けましておめでとう!」

 蒼生くんの隣にいるのは舘野たての美樹ちゃん。

 この子も元リンクメイトで全日本選手権五位の実力者で、今年の二月にある四大陸選手権の代表になっている。

「みっちゃんも着物だ! かわいいし、大人っぽい」

「美樹ちゃんも振袖だね、まるでモデルさんみたい」

 美樹ちゃんが着ていたのは白い振袖で、とてもきれいなもの。成人式のときに着る予定みたい。

 蒼生くんは私服でダウンジャケットの上にマフラーと手袋と完全防寒で来てる。

「早く参拝しに行こう」

「うん。久しぶりに三人が揃ったよね」

 この三人は同じ地元で小学校までは一緒のクラブに通っていた。

「確かにね。壱中に行ったの、このなかじゃみっちゃんだけだしね」

 中学は蒼生くんがフィギュアスケート部のある中高一貫校である私立山都やまと学院、美樹ちゃんはフィギュアスケートの名門である私立聖橋せいきょう学院中学へ進学した。

 わたしは学区である市立壱ノ原中学へ進学して、ホームリンクも東原FSCフィギュアスケートクラブのままだった。

 二人はホームリンクを進学先の学校が持っているリンクに移したの。長期休暇となる夏休みと冬休み、春休みくらいしかあんまり会うことがなくなった。

 さらにフィギュアスケートを辞めてからは会う接点が徐々に減っていった。

 でも、ときどきLINEで連絡を取ったりしているんだよね。

「あれ? みっちゃん、彼氏とかいないの?」

 一緒に本殿でお参りするために両親とお兄ちゃんとは別行動で三人になって話をする。

 すると美樹ちゃんに本殿まで暇つぶしで話しかけてきた。

「え……いないよ!? 美樹ちゃんは?」

「え。いない」

「そうなんだね。いるのかと思った」

 蒼生くんは初耳だったらしくて、驚きの表情を浮かべている。

「蒼生くんは?」

「いないし。みっちゃんは? 好きな人」

「え~……わたし……いるけどさ」

 わたしは心臓がバクバクと鼓動が激しく波打っていくと、とてもすごく恥ずかしくなっている。

「いるの!? みっちゃん、誰なの?」

 美樹ちゃんにとても食いつかれていて、後に引けなくなってしまった。

「クラスメイトの上遠野かとおの……。佑李ゆうりくんなの」

「えぇ!? 佑李。マジかよ。アイツ、もともとみっちゃんのこと……」

 蒼生くんは美樹ちゃんと驚いたんだけど、ちょっと気になっているんだ。

「わたしのこと……? 何か?」

 わたしは二人を見ると、ちょっと気にしていたんだ。

「絶対にみっちゃんのこと、好きじゃん? 知らないけどさ」

 蒼生くんがちょっと気になっていたのか、思ったことを話してくれたんだ。

「年末に会って、よろしくって言ったときに嬉しそうにしてたもん……佑李。めちゃくちゃ」

「両片想いってわけね~、ノービス最後の一年間はずっと佑李くんと仲も良かったしね」

 美樹ちゃんは思い出すように話してくれたけど、本殿にやって来たので参拝をする。

 ――今年も一年間、健康に過ごせますように。

 それをお願いして、おみくじを引くことにした。

 わたしは中吉だった。

「でも、いい感じじゃない?」

「うん……恋みくじ、結構当たってるんだけど……同い年が良くて……」

 わたしはそのおみくじをくくった。

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