第5章 3学期
第25話 始業式
翌日。三学期の始業式が始まり、
「おはよう。
「あ、ゆ……おはよう!」
学校ではいつものように名字の呼び捨てで呼んでいて、わたしも
「か、
校内で暴力を受けてからはピアスをする姿を見るのも少なくなって、柔らかい印象を抱くようになった。
「うん。ピアスは休みの日にしてる。あれに頼らなくても、大丈夫だからね」
始業式なのでネクタイもちゃんとしているのを見ると、改めて佑李くんってイケメンだなって思う。
「あ、
「ミッチー! どうだった? 映画」
英梨ちゃんを廊下に引きずり出すと、そのまま話すことにした。
「映画は行ったけど……何も進展はなかった」
「マジで言ってる? てっきり告白したのかと」
英梨ちゃんは驚きの表情を浮かべている。
「うん。その……」
「信じられないけど、その様子じゃしてないね。どこかで告白してみたら?」
そのときに教室に戻ると、佑李くんは眠そうに机に突っ伏している。
「碧峰? どうした?」
「なんでもない、被服手芸部って、どうしたの?」
「ああ。被服手芸部を継続するのは難しくなって、来年は入部しないつもり」
「そうだったんだね……。ちょっとだけ残念だなって」
部活をしていた時間を練習時間に充てたいと思いきった決断をしたみたいだった。
「うん。もう大丈夫だよ、俺は服を作るのは好きだし……たまに衣装を改造したりもしてる。今シーズンのショートプログラムの衣装がその例だけど」
あの衣装のどこを改造したのかは教えてくれなかったけど、尊敬している先輩からもらった衣装をリメイクしたらしい。
今日は始業式を終えて各々部活に向かったり、下校する生徒が昇降口近くの廊下は混んでいる。
「また明日~。ミッチー!」
英梨ちゃんはダンス部のミーティングで、体育館へと向かった。
「またね。英梨ちゃん!」
今日は部活もないので家に帰る。
一人で歩いていくと、後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。
「みっちゃん!」
この声を聞くと、ドキッとする。
「佑李くん……ちょうどよかった。今度の試合のお守りにしてほしい」
年末に買ったブレスレットを渡すことにした。
「え? これ、めちゃくちゃ好きなやつ」
佑李くんはとても嬉しそう。
「うん。ちょっと前、雑誌の切り抜きを持ってたじゃん? あれの広告で気づいたよ」
それから手首につけると、嬉しそうに笑っていた。
「ほんとにありがとう……なんか申し訳ないね。お返しはまた考えておくからね」
「いいの、ブレスレットが紺色で似合いそうだって。思ったから……」
その笑顔を見るだけでなんかドキドキする。余計に意識してしまう。
「応援してくれる?
蒼生くんはジュニアの選手で普通はシニアの大会に出られないんじゃ? って思っていたときもあった。
シニアの国際大会に出場する規定の得点を去年のうちにクリアして、年齢制限もクリアしていたので四大陸選手権に出場することになったらしい。
美樹ちゃんは四大陸選手権の出場は初めてではないので、心強そうに見える気がする。
「うん、応援してる」
「途中まで一緒に行く?」
「いいよ?」
わたしはそのまま並んで駅まで行くと、佑李くんは近くにある私立小学校の制服を着た男の子のもとに向かう。
「兄ちゃん、遅い」
「
光輝くんは小五で四月には最上級生になるんだ。
「あ、
「光輝くん、久しぶりだね。その制服、
白いシャツに赤いネクタイをして、ダークグレーのブレザーにグレンチェックのズボン姿で私立桜木学院の制服だと気づいた。
「ありがとう、美智姉ちゃん。兄ちゃん、一緒に帰ろう」
光輝くんがうなずくと、改札を抜けて一緒の電車に乗って帰った。
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