第36話
「ふふ、幽霊なんて怖くないし。わたくしがひどい顔で絶叫するとか、あるわけないでしょう」
幽霊役の
髪をかき上げ、自慢の美貌はいかなる状況でも崩れないことをアピール……。
「いや、もう遅いですよ、お姉さま?」
「今の悲鳴、こっちがびっくりした……」
「忘れなさい。忘れて」
そして静流、
「火蔵さん、後輩に『お姉さま』なんて呼ばせてるのですか」
仲良さそうな響きがあって、ちょっとジェラシー。
「
宮子、にこっと微笑んで、
「中等部の時から、菊花寮で一緒ですもの。まあ、2人とも妹分みたいなものよ」
そう言って、
潔癖症の司の方は、触られると嫌がる……それを知っているぐらいには、付き合いがあるのだ。
「それよりお姉さま。今年はまた……ずいぶんとレアな相手を釣り上げましたね?」
今夜の「お相手」と、誤解しているらしい。
「ふふ、わたくしってば罪深い女よね♡ 氷の風紀委員も獣になっちゃうなんて♡」
「違い、ます、からっ!」
聞こえてた。
「
顔を真っ赤にする静流に、ニコニコする宮子……話が進まないので、司が痺れを切らした。
「で? その風紀委員さんが、何か用です? 私たち、幽霊役をちゃんとやってますけど」
風紀委員に睨まれる理由は、何一つないと、司がアピール。
「む。確かに。美滝さんみたいに、皆を気絶させてる様子もないですね」
「何やってるんですかね、あの暴走機関車は……!」
百合葉のやり過ぎ具合を聞いて、司のこめかみがピクピク。
「観客を気絶させるとか、ほんっと、お馬鹿。演劇という物を、何も理解していない……!」
「まあまあ。とにかく、そんなわけで。私たちは無罪放免ってことで、いいですよね?」
優等生の演技をしながら、にこっと静流へ微笑む棗。
静流は納得するが、宮子は今一つ刺激が足りない様子だ。
「つまらないわね。
そして、さらっと爆弾発言。
「今年はエッチしないの? 毎年、いっぱい誘われてるじゃない」
何ですと!?と風紀委員モードに入る静流を前に、
彼女、宮子や御所園
「ボクは本当に好き合った相手とだけなので。お姉さまと一緒にしないでくれます?」
「よくもそんな出任せを。知っていてよ? 演劇部の墨山さん。わたくしも、ちょっと狙ってたもの」
くすくすと、
「ああ、ちなみに貴女たち双子と寝たことは無いけど。わたくしは、いつでもOKよ♡」
「……お断りします」
かなりガチなトーンで断られて、宮子ちょっぴり凹むけど、構わず
「だって、お姉さまは、誰でもいいのでしょう?」
愛されたいという願望の強い
一夜を共にするのも、その延長線上でのこと。
けれど、
「ただエッチなだけじゃないですかー!!」
「ぐっ……。否定はできないけどっ……」
星花女子学園で浮名を流す、少女たち。
「ハーレム全員に本気」と言い切る、博愛主義の御所園
そして、単にエッチな宮子さん。
「リスペクトが無い!?」
「日頃の行いですよ、火蔵さん」
静流に続き、泉見司も、宮子へ冷たい視線。
「お姉さま、消毒します?」
スプレーを向けて、心底嫌そうに、
「この話題、やめません? だいたい、この『悲鳴と嬌声の夜』って、私嫌いなんですよね。そんな行為、ただでさえバッチいのに。山の中でなんて、考えただけで……!」
ああ、おぞましい、と身震いする。
潔癖症気味な点で通じ合う静流、うんうん、と頷いて、
「とにかく。普通の肝試しとして、盛り上げてくださる分には、
宮子が文句を言う。
「嫌よ、こんな怖いの! エッチなほうがいい!!」
「だーめーでーすっ!?」
素顔でぶつかり合う静流と宮子。
……こんな相手、自分には。
少し、静流を怖がらせたくなる。
「先輩は、平気なんですねえ? 私の幽霊、かなり完成度高いと思うんですけど」
恨めしや、とポーズを取ってみせるけど。
静流は、何でもないことのように、
「ええ。本物を見慣れてますので」
そして。心底不思議そうに。
「気付いてませんでしたの? 今だって、いるじゃないですか」
「ほら……貴女の後ろに」
泉見姉妹と、ついでに宮子は、気を失った。
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