第17話
「「「女・帝! 女・帝! 女・帝! 女・帝! 女・帝!」」」
星花の女帝、御所園
アイドル&天才コンビと戦った1回戦と比べても、アウェー感はさらに上だ。
「やるわね咲瑠。こんな恥ずかしいコールを浴びながら、真顔で試合できるなんて、やっぱりただ者じゃないわ!」
明らかに褒めてない宮子の言葉にも、咲瑠動じず、優雅に髪をかき上げる。
「ふっ、強制はしてませんのよ? けれど、わたくしは天上の薔薇。皆がわたくしの美しさに焦がれるあまり、女帝と讃え、
「な、何という自信……」
静流、ちょっぴり羨ましくすら感じる。
宮子とも、美滝百合葉ともまた異なる、強烈な輝き。
日陰を容赦なく焼き払う、真夏の太陽のようなそれは、咲瑠の強烈な自負から来るのだろう。
その輝きに相応しく、彼女はビーチバレーでも強かった。
一球一球がまるで名スナイパーの弾丸のように、宮子と静流がカバーし切れない弱点を狙い撃つ。
「わたくしの
目を抑えるかっこいいポーズを決めながら、咲瑠は自らの秘技の名を告げる。
「『御所園
「すごい……テニスの漫画で見たこと有る!」
つい目をキラキラさせるのは、咲瑠に連れて来られた1年の鈴木さん。
「ふふ、ありがとう。けれどわたくしが力を発揮できてるのは、貴女のフォロー有ってこそなのよ?」
さりげなく鈴木さんを褒めて、その頬を赤くさせる咲瑠。さすが星花で1、2を争うイケ面ガール。ただの愉快な人ではないのだ。
「またすぐ人を口説いて……。貴女って本当に節操が無いのね」
「火蔵さんがそれ言います……?」
宮子と静流の声に、ふと、咲瑠は真剣な顔をして、
「恋多き女! ええ、それで結構ですとも。わたくし、ハーレムの全ての子に、本気ですから」
試合の最中でも、咲瑠はファンの子たちへ、手を振ったり、微笑みかけたりを忘れない。
「わたくしの目が届く範囲は、わたくしの王国。そこでは、誰一人として、女の子に悲しい顔などさせません。それがこの、御所園咲瑠の矜持ですわ」
ラリーを制し、女王然と腰に手を当てながら、咲瑠は宮子へ問い掛ける。
「貴女はどうなの、宮子? 今はわたくしのハーレムにいる中にも、貴女に泣かされた子はいましてよ」
「……何よ。まさか、そんな文句を言う為に、対戦を申し込んだじゃないでしょうね?」
宮子と咲瑠の間に、ピリッとした空気が流れる。
一瞬睨み合った後、咲瑠はふっと微笑んだ。
「さて、どうかしら。けれど、宣言しておきますわ。遊び半分で肌を重ねては捨てる、そんな貴女では、わたくしには勝てない」
どんっ!と効果音が付きそうな迫力で、
「わたくしは! 星花の全ての子を恋人にする女! 宮子に、雪川さんも。わたくしのハーレムで、愛の何たるかを教え込んで差し上げますわ。カラダに!!!」
試合も後半、完全に咲瑠&加奈子ペアの優勢だ。
けれどここに、試合の流れにも、そして何より咲瑠の言葉に納得のいかない少女がいた。
雪川静流だ。
(不本意ながらも)火蔵宮子を誰より見続けて、(不本意ながらも)誰より追い掛けてきた、静流にはわかる。
「火蔵さんは、そんな人じゃありません!」
ボールを打ちながら、思わず咲瑠へ叫んでいた。
「か、カラダの相性とか、私には分かりませんけどっ。火蔵さんは、本当に相性ぴったりのパートナーを探してるだけなんです」
ときおり、ふと見せる物憂げな顔。誰より愛に飢えて、けれど愛され方の分からない、孤独な少女。
宮子が色んな女の子と寝るのは、その孤独を埋める相手を探す為。
いつか、本物のパートナーと出会うのを夢見る、まるでお姫様のような……。
と静流が思ったら、当の宮子が小悪魔顔で、
「うーん? わたくしは、単にエッチ大好きなだけよ?」
「人がフォローしてるのに何なんですか貴女はぁぁ―ッ!?」
静流がキレた。
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