第16話

 りんりん学校1日目の昼。

 夏の海辺で、ビーチバレー大会の2回戦。

 銀髪ロリで白い水着の静流と、セクシー黒ビキニの宮子チームは、緒戦に続いて注目カードに挑むことに。


「意外ね。咲瑠えみるってば『疾風はやて』ファンだったかしら」


「ふふ、ご冗談を」


 唇をなぞりつつ優雅に微笑む、対戦相手。

 高等部2年の御所園咲瑠と言えば、宮子と人気を二分する美少女で、「66期生の双璧」と人は呼ぶ。

 見るからに高貴でしなやかな肉食獣と言った印象の容姿に、水着はあえてのピンクで可愛い系を選択。大輪の赤薔薇のような、強烈な印象だ。


「子猫ちゃんたちがビーチに集まってるのに、わたくしの活躍を見せないだなんて。こんな罪深いことが有りまして?」


 貴女だって、同じような出場理由でしょう?と言う咲瑠に対し、宮子は、


「お生憎ね。わたくしは、ただ負けるのが嫌いなだけよ。貴女ほど自己顕示欲、強くないの。……ところで」


 さっきから咲瑠が手を握っている、ペアの子へ目を向ける。


「確か1年の……どなたでしたっけ」


「えっと。5組の、鈴木加奈子って言います。先輩とは、知り合いでも何でもないんですけど。砂浜をお散歩してたら、捕まって……!」


 中肉中背に黒髪、水着も星花の学園指定のものと、普通を絵に描いたような子。

 学園の女王クイーンたる咲瑠に手をさわさわされて、すでに泣きそうだ!


「ふふっ。だって、こんな可愛らしい子猫ちゃんが、浜辺を一人歩いていたら、ねえ? 声を掛けないなど、御所園咲瑠の名折れというものでしょう?」


 そのまま鈴木さんを顎クイ、薔薇の吐息を吹き掛ける……。


「は、はわわわわ……!? わ、私はその! 女の子同士はちょっと!」


「あら、そうでしたの。じゃあ……わたくしが、良さを教えてあげましょうか♡」


「はいそこまでー!!!」


 静流の警笛ホイッスルが響く。

 鈴木さんの腰に手を回す咲瑠へ、静流は顔を真っ赤にして、わなわなと震える指を突きつけた。


「こ、この風紀委員、雪川静流を前にして、白昼堂々の淫行。断じて許せません! 御所園咲瑠さん、正義の名のもとに、わたくしが裁きます。ビーチバレーでね!」


 これが開戦の合図。勢い込む静流、相手コートの鈴木さんへ、


「待っててください、鈴木さん。そこな淫魔の手から、貴女を解放しますので!」


「は、はぁ。でも……」


 鈴木さん、困ったように、


「雪川先輩も女の子が好きで……そちらの火蔵先輩と、ただならぬ仲だって噂ですケド」


「ご、誤解ですー!? 私は、この人たちの仲間じゃありませんー!?」


 後輩に、宮子や咲瑠の同類と見られていたことに、静流はショックを隠せず。


「ま、まあ。私も恋愛対象は同性ですが。ほら、戦国武将の皆さまも、衆道をたしなんでましたし?」


「やっぱり仲間……!」


 結局静流まで、鈴木さんに警戒される羽目に。


「雪川さん、前!」


「甘いですわ! わたくしの美技に、酔いしれなさい!」


 よそ見してた静流の横を、ボールが跳ねる。

 これまた宮子に負けず劣らず万能な、御所園咲瑠の先制攻撃だ。

 観戦する生徒たちから、キャーキャー盛大な悲鳴が上がる。

 いつの間にか数十人の生徒たちによる、女帝コールまで。


「「「女・帝! 女・帝! 女・帝! 女・帝! 女・帝! 女・帝! 女・帝!」」」


 ファンの少女たちによるシュプレヒコールを浴びて、ご満悦の咲瑠、右手を高々と掲げる。

 訓練された少女たちが、声を揃えて、


「「「勝つのは!!」」」


 そこで咲瑠、指パッチン。皆を黙らせて、


「わたくしですわ」


「帰っていいですか?」


 鈴木さんが早くも付いていけなくなっている……。


「というか私、あの、ファンの人たちに睨まれるんじゃ……!?」


「あら、その心配は無くてよ」


 くすくすと笑う咲瑠。仕草は優雅だ。


「あの子たちは、皆、わたくしのハーレムですもの。つまりは、家族も同じ。新しい家族は、大歓迎でしてよ」


「わ、私は女の子のハーレムになんて加わりませんからー!?」


 鈴木さんの抗議もどこ吹く風、咲瑠は宮子と静流へ向き直り、にこっと微笑む。


「そうだわ。わたくし、貴女たちとも恋仲になりたいと思ってましたの。わたくしが勝ったら、2人まとめてハーレムに入るというのは、いかが?」


 宮子と静流、完璧に声がシンクロした。


「「絶対に! 負けられないわね!!」」


※ ※ ※


【後書き】

新登場ゲスト

・鈴木加奈子 しっちぃ様作「鈴生りに咲く花の彩り。」登場。「小説家になろう」にて連載中。

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