第12話

 8月、お日様さんさんの真っ青な空に、広がる水平線。

 りんりん学校1日目は、絶好の海水浴日和。

 元々自由時間たっぷりのイベントでもあり、バスで宿泊所に着いた生徒たちは、早速水着に着替え、目の前の砂浜へ駆け出したのだった。


「こら、いきなり海に飛び込まない! まずは準備体操ですわ」


 風紀委員の静流しずる、保健委員の子たちと一緒に、生徒たちの監視。

 青い海に、女王の警笛ホイッスルが木霊する。

 雪川静流、持ってきたのは白いワンピースタイプの水着。

 控えめなフリルが甘過ぎず華やか過ぎず、静流の祖母譲りの銀の髪と、真っ白な肌に、ベストマッチ。

 麦わら帽子を被り、これまた白の日傘を差した姿は、まさに渚の妖精。あるいは雪ん子。


 夏空の下でも、クールビューティを貫くべく涼しげな顔で、風紀委員の活動に勤しむ静流。

 けれどいきなり、ける事態に出くわした。


「ふぁ、ん♡ もっと、いっぱい、塗ってぇ……♡」


 宮子が女子生徒と、ほとんど裸で抱き合ってヌルヌルしてるのだ!


「にゃ、ナニをしてやがりますか火蔵かぐら宮子ぉぉぉッ!?」


 警告! 警告! 警笛ホイッスルを吹き散らすと、一方の生徒は恥ずかしがって、ビーチパラソルの下から逃げて行った。


「ナニって、日焼け止めを塗り合っていただけでしてよ? カラダを使って、ね」


 ぺろっと舌なめずり、セクシー宮子さん。上気した頬に、水着がズレて零れかけてるお胸……どう見ても、普通に塗っていたとは見えないのである。


「東京では、日焼け止めはこう塗るの。女の子同士で抱き合って、身体に塗ったのを擦り合わせて……。アイドルのみおにゃだって、やってたもの!」


「えっちなコトしてた風にしか、見えません!?」


 静流の抗議もどこ吹く風。優雅に足を組む宮子。

 ビーチパラソルの下、ビニールシートに横たわる彼女の水着は、黒いビキニ。

 シックなデザインが主張し過ぎず、長い黒髪に抜群のプロポーションの、主の完璧な美貌を引き立てる。


「さて、困ったわ。塗るのが途中になってしまったし。これじゃ日焼けが怖くて、ビーチに出れないのよね」


 じーっと見上げる視線に、静流は、宮子が何を企んでるか察する。


「や、やりませんよ!? さっきの子の替わりに、わたくしがあんな、えっちな塗り方するとか!?」


 静流が真っ赤になればなるほど、宮子の悪魔っ娘スマイルがキラキラを増すのだ!


「あら。雪川さんこそ、お肌真っ白だし。ケアしないと、心配でなくて?」


 わたくしが塗ってあげましょうか。それはもうカラダ中、隅から隅まで♡

 妖しく囁く宮子から、


「け、結構ですっ。私には、日傘も有りますし。日焼けなんて怖くありませんわ」


 静流逃げようとするが、通り掛かった後輩たちに捕まった。


「む、だめですよ先輩。日焼けを甘く見ては!」


 一人は静流と一緒に砂浜を監視する、保健委員の少女。

 「星花のナイチンゲール」とおそれられる、中等部の夜野ことり。


「ちゃんと対策しないと、皮膚がんにお肌の老化に、危険がいっぱいなんですから!」


 そしてもう一人、風紀委員で静流とよくコンビを組む、荒神世音ぜのん

 ゴスロリドレスみたいなフリルたっぷりの、黒い水着で、正直暑そう。


「そうだぞ女王。どう見ても水属性なんだから、光と炎の複合魔法(日差しのことを言っているらしい)へは魔導障壁バリアを張らないとだな……」


 がしっと後輩2人に肩を捕まえられて、静流は逃げられない。

 女魔王に捧げられた生贄状態だ。


「ふふ、しっかりした後輩を持って、幸せね。雪川さん?」


 舌なめずり宮子、手に日焼け止めのクリーム塗って、


「じゃあ、塗り塗りしましょっか……♡」


「い、いぃーやぁぁぁー!?」


 ぐちゅっ。ぬるぬる。ぴちゅんっ♡(クリーム塗る音です)

 真夏の空に、静流の甘い声が上がった。


「ふにゃぁぁ♡ ふぁ、んにゃぁぁ……ん♡♡♡」


 ※ ※ ※


【後書き】

今回新登場のゲスト

・夜野ことり 藤田大腸様「SとNのタペストリー」登場。「小説家になろう」にて連載中。

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