第14話
宮子が対戦相手の名乗りを上げると、百合葉のほうから、やたら人懐っこい大型犬のノリで、ぶんぶん手を振りながら近づいてきた。
「あ、みやみや先輩と……風紀委員の人!」
「風紀委員の人」扱いに地味に傷付きつつ静流、宮子を見上げる。
「みやみや先輩て。火蔵さん、アイドルと親しいんですのね」
「まあ、同じ菊花寮住まいだしね。面識ぐらいあるわよ」
何でもないように言う宮子だが、静流の方は、朝のバス集合の時の、妄想を思い出して、
「スキャンダル……! 火蔵さんと現役アイドルが、カラダの関係で……あわわわわ」
一人で顔から火を噴いていた。宮子は髪をかき上げて、挑戦的なウインク。
「ふふ、学園一の美少女の座を賭けて、頂上決戦というのも、面白いのでなくて? ねえ、ゆりりん」
自信たっぷりの宮子に、静流がびっくり。
「芸能人を前にそんな。火蔵さんは鋼鉄の心臓ですわね」
まあ確かに? 見た目だけなら? 国民的アイドルより火蔵さんの方が美人ですけど、なんて思ってしまって、また一人で真っ赤になる静流。
一方、宣戦布告を受けて、
「うーん……。みやみや先輩と私は、タイプも違うし。どちらも優勝で良いんじゃないです?」
アイドル美滝百合葉、首を傾げるが。
宮子だけでなく、静流にも彼女と戦う理由が有った。
「あっ、そういえば。美滝さん、
今や星花女子、放課後の風物詩となった、美滝百合葉のボイストレーニング。
屋上から響くアイドルの歌声は、いいもののようだが……。
「私たちが勝ったら! あれ、やめてもらいますよ!」
「ええー、屋上が一番、声出して気持ちいいのに」
「貴女の好みではなく。ルールの話をしているのですわ」
そんなこんなで。夏をもっと熱くする、ビーチバレー美滝百合葉
海辺のあちこちで対戦が始まる中、静流と宮子は、主催者の百合葉チームへ挑むことに。
「髪、動きづらいわね。縛って下さる?」
「そのくらい、自分でやりなさいな。もうっ」
といいつつ、宮子の長い黒髪を、ポニーテールに纏めてあげる静流。
静流の銀の髪も、長いので同じ髪型に纏めてある。
「ふふ、おそろいね。……雪川さんったら♡」
「し、シンプルに動き易くしただけです。他意は有りませんっ」
宮子に頬っぺた、指でつんつんされて赤くなる静流。
それを見て、相手チーム、
「試合前からイチャイチャしてる!? これは負けられないね!」
美滝百合葉、パートナーを振り返って、
「……って、美綺ぽん、何してるの。後ろなんか向いて」
1年1組、柳橋美綺。なぜか対戦チームに背中を向けている。
「やってみようと思って」
「だから何故!?」
宮子や静流よりもっと長い、膝裏まで届くような黒髪ロングに、高めの身長。
切れ長の瞳に睫毛も長い、シャープな印象の美人だが……この柳橋美綺、奇行の多い変人でもある。
「ほら、来たるべき宇宙時代に向けて、特訓というか。あえてボールを見ずに戦うことで、空間認識能力が飛躍的に向上したりするんじゃないかな」
「うん、今やらなくてもいいと思うなー」
そんな対戦相手に静流、こめかみピクピク。
「ふ、ふふ。舐められてるのかしら、私。侮辱は百倍返しが戦国の掟よ!」
という訳でいきなり試合開始!
静流の全力サーブが1年生コンビを襲う!
が、背中を向けたままの柳橋美綺、額からピキーンと、謎の閃光を発しつつ、
「……見えた。そこぉっ!」
華麗にボールを返してみせる。
「影の位置、ボールの風圧……皮膚の全感覚を総動員すれば、これぐらい、どうということは無いっ!」
「こ、これだから天才は!?」
静流、お口あんぐり。
今度ガン〇ムにも声優で出演予定の百合葉は、相棒の頼もしさに、
「美綺ぽんはニュータイプだったのね! これなら勝てる!」
「ふふ、楽しめそうね。わたくしも負けないけどっ!」
やる気満々宮子さん。
浜辺の注目を集めて、第一試合はヒートアップする!
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