第19話
少し時間は
大盛況となったビーチバレー大会、各コートで第1試合がスタートした頃。
撮影班として、新聞部と写真部は大忙しだった。
「わはははは!
高等部1年1組の人気者、「ヒーロー」の愛称で親しまれる塩瀬
その声に、同い年のいとこで2組所属の写真部員、塩瀬
「え、ペアの子にすごい睨まれた……!?」
日色のルームメイト、宵闇鈴香に、仇みたいな目で見られた……気がした。
何か僕、まずいコトしたかな?とか思ってると、別のコートの、クラスメートからも呼ばれる。
「ほーっほっほほほほ! 塩瀬さん、クラスメートのよしみですわ。この
悪役令嬢みたいな高笑いを上げるのは、1年2組の学級委員長、御神本美香。
こう見えて根は善良すぎるぐらい善良な、楽しい人だというのは、クラスメートの晶にはよく分かっている。
「お姉さま、本当に
その御神本美香を心配するのは、妹の沙羅。
「むきー! 子ども扱いしないで! 沙羅こそ、簡単に負けたら承知しませんわよ。決勝で会いましょう」
「……分かりました。それでは、
「えっ、そのチーム怖すぎません? 決勝で会いたくないですわ」
妹に心配されてる姉を見て、自分も兄がいる晶、
(姉妹が逆みたいだ)
ついクスリと、口元を綻ばせて。
その仲睦まじい様子を、カメラに収めた。
「お疲れ、塩瀬さん」
声を掛けてきたのは、写真部にヘルプを要請した、新聞部の先輩。
「あ、お疲れ様です、先輩」
「いやぁ、助かっちゃったわ。
先輩、晶の周りをきょろきょろして、
「あれ、よく一緒にいるあの子は? 彼女にもお願いしようと思ってたのだけど」
「ああ。猫山さんは……自由ですから」
苦笑する晶。
その、呼ばれた相手……写真部仲間で1年3組の、猫山美月はと言うと。
砂浜の喧騒からは離れ、海辺で欠伸する野良猫を、愛用のカメラで撮影していた。
「おおー。オレンジの花に猫さん、絵になりますね」
猫を安心させるための秘密装備、猫耳カチューシャを付けたまま、何枚も写真を撮る美月、
「これは最近のベストショットです……! 何という花なのでしょう?」
首を傾げると、クラスメートが後ろから声を掛けた。
「
「あ、
美月が振り向くと、やって来たのは同じ1年3組の、川蝉
物静かで、大人しい女の子だ。花にとっても詳しい。
「弥斗さんは、ビーチバレー出ないのです?」
聞くと、川蝉さんは困った顔で微笑みながら、
「ええ、私はああいう賑やかなのは、ちょっと苦手で。……塩瀬さんは、写真部のお仕事だし」
写真部でよく晶とつるむ美月は、知っている。つい最近、この川蝉さんが、晶と恋仲になったのを。
パートナーと一緒なら、出場したかったのだろう。少しすねた様子の川蝉さんを見て、美月は、安心した。
(何だか、1学期より明るい顔をするようになりました)
晶も、川蝉さんも、1学期の間は暗い顔をすることが有って。
共通の友人として、気に掛けてはいたのだ。
「あっ、猫さんが動きました」
美月、つとめて明るい声で、
「あそこの花と一緒に撮るのも、いいですね。せっかくですし弥斗さん、他の花の名前も、教えてもらえますか?」
美月の心遣いに気付いた川蝉さんも、にこっと微笑んで、
「ええ、喜んで」
こうして、賑やかなビーチバレー大会に参加する者も、その輪から外れた者も。
星花女子の生徒たちは、それぞれのリズムで、臨海&林間学校1日目の午前を過ごすのだった。
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【後書き】
今回は星花女子プロジェクトの参加作品から、多くのゲストをお借りしたので、紹介しておきます。
・塩瀬晶
・川蝉弥斗 桜ノ夜月様作「君に捧げる花の名は、」に登場(「小説家になろう」で連載中)
・塩瀬日色
・宵闇鈴香 同作者様の「宵の闇に日は沈む」登場(「ノベルアップ+」連載中)
・御神本美香
・御神本沙羅 藤田大腸様「ウソから始まる本当の恋物語」登場(「小説家になろう」連載中)
・猫山美月 涼月涼様「キャット&リリー!」登場(「ノベルアップ+」連載中)
・橘桜芽 星花女子プロジェクト リレー小説「桜が芽吹く縹の空に」登場(「ハーメルン」連載中)
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