次の物語の始まり?
エピローグ【もう来ちゃってるよ】
「いやあカモさんこんばんわ」
暗闇でよく顔は見えないがこの声は明らかに王子だ。
「すみませんカモさんもう来ちゃって」
こっちの声は王女こと井伏さんか。むろん同じく顔は見えない。
俺はベランダへ出て真っ暗い庭を見下ろしている。窓ガラスになにかが当たった音がしたと思ったらこれだ。
ナキさんの日本亡命の件が公国や王国の正式な容認事項(というのも妙な表現法だが)となったら報せに来てくれる約束になっていた。
このふたりの声の調子で解る。決まりだな。
しかし本当に『もう』だよな。〝報せる〟だけなら王子だけでも良かったのにな。ふたりで来るとは。なんかこのふたり急激に距離が縮まってない? こっちは桃山さんとは……まあ、あまり他人を妬むのはやめておこう。人間の器が小さくなる。
「庭で大きな声出されると困るんだけど」俺はベランダから下に向かって声を掛ける。
ただ、このふたつの声はもう奇声でも不審な声でもなんでもなくなっている。しかし相変わらず不法侵入なんだけどな——
「事件から離れてここに来たかったんですよ」井伏さんの声で返事が戻ってきた。
(了)
外交官・加茂三矢(ただし非公認) 齋藤 龍彦 @TTT-SSS
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