第14話 指名依頼完了

 早めの昼飯をとり、俺たちはギルドへと向かった。


 今日は朝から、オーガを討伐しに行く予定だったんだが、予定が遅れてしまったな。まぁ、急ぐ理由もなかったし、別にいいのだが。


 ギルド内へ入るとマールに声を掛ける。


「おはよう、マール」


「もうこんにちはの時間ですよ? マオさん」


「思いのほか寝心地が良くてな、朝から出発するつもりが、今の時間になってしまった」


「しっかり休めたのなら良かったです。今日は、オーガの討伐ですから、体調は万全でないとですね」


「まぁ、オーガぐらいなら、体調不良だったとしてもどうにでもなるから問題はないんだが。さっそく行ってくることにするから、討伐が終わったらまた報告に来る」


「わかりました。くれぐれも気をつけてくださいね。油断大敵ですから」


「わかった、気をつけよう」


 マオたちは、ギルドを後にすると、街の外までやってきた。


「よし、周りに誰もいないから転移するぞ」


「わかったわ」


 転移魔法を発動すると、視界が変わり森の中へとやってきた。


「クリス、使い魔にオーガがどの辺にいるか、聞いてくれないか?」


「ちょっと待ってね。………いたわよ。ここからそう遠くないわね。ついてきて」


 俺を先導するようにクリスが歩き出した。しばらく歩いたら、気配探知にオーガが引っかかる。


「いたな……どうする? 俺が倒してもいいが、クリスがやってみるか?」


「私が殺るとズタズタになるわよ? あれ、売るんでしょ? 綺麗な状態の方がいいんじゃない?」


「なんだ、クリスは繊細な攻撃は苦手なのか。てっきり芸術的な魔法を使うと思ったのだがな」


「で、できるわよ! ただちょっと今日は、本調子じゃないだけよ!」


「そういうことにしておこう」


 クリスが、悔しそうに頬を膨らませているあたり、やはりまだ子供だなと、俺は思ってしまうのであった。


「《エアカッター》」


 三日月状の風の刃がオーガを襲う。魔法に気づいたみたいだが、時すでに遅く、次の瞬間には首が飛んでいた。


「終わったな」


「あっさりと終わらせてしまうのね」


「オーガに時間をかける方が難しいだろ。無駄に動き回らないといけなくなるしな」


「それじゃあ、帰りましょ。報告するのでしょ?」


「そうだな。それにしても呆気なかったな。もう少し歯ごたえが欲しかった……」


「マオが強すぎるのよ。少しは自重しなさいよ。そうでないと、物足りなさで飽きるわよ?」


「それもそうだな。楽しく冒険が出来なくなるしな」


「仮に、もし飽きたらどうするの?」


「城に帰るしかあるまい。勇者に仕事を肩代わりさせてるし」


「それなら、そうならないようにしないとね。これからも、楽しく過ごしていきましょ」


「そうだな。とりあえず帰るか……」


 ギルドへ到着すると、マールにクエスト達成報告を行う。ギルドマスターに報告するそうなので、その間、解体場へと足を運んだ。


「シン、魔物を持ってきたぞ」


「あぁ、マオじゃないか。また大量に持ってきたのか?」


「いや、今受けてるクエストの魔物だけだ」


「そうか。じゃあ、出してくれ」


 その場に【無限収納】からオーガが出された。


「……」


「どうした? 魔物を出したぞ」


「……これをお前が狩ったのか?」


「そうだが?」


「クエストって言ったよな?」


「そうだな」


「駆け出しだよな?」


「それが、その日のうちにDランクになってな。もう駆け出しじゃなくなったんだ」


「なんだと!? 初日でDランクになったのか? そりゃ、めでたいな。……って、そうじゃない! これ、オーガだろ! 何でマオがオーガのクエストを受けてんだ。受けたくても受けれないはずだぞ?」


「前に話した、調査クエストがあっただろ?」


「あぁ、あったな。お蔵行きのクエストが」


「調査の結果、オーガが食い荒らしてたんだ。それで、そのまま、次の日に探索クエストを受けた。それもその日に終わったから、今日は討伐クエストになったわけだ。ランク外で受けていたのは、ギルドマスターからの指名依頼だからだ」


「とんでもねぇな。お蔵行きのクエストが、たった3日で全て終わったのか……しかも、ギルマスからの指名依頼……マオ……お前この後、確実にランクアップすると思うぞ。オーガを討伐できるような奴が、Dランクのままなわけがねぇ」


「そうなのか? ランクが上がれば、受けれるクエストが増えるから、ありがたいのだがな。もっと手応えのある討伐がしたいしな」


「ははっ……オーガ相手に手応えがないときたか。こりゃ、大物になりそうだな。とりあえず、オーガの査定は今日中には終わらせておくよ」


「あぁ、急がなくてもいいぞ。もう、1文無しじゃないからな。明日、クエストを受ける前に、報酬を受け取ることにする。じゃあ、またな」


「またな」


 シンとの会話を終わらせて、マオたちは、解体場を後にするのだった。

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