第15話 指名依頼達成報告
マオがカウンターに向かうと、いつの間にかマールが戻ってきていた。
「マオさん、どこに行ってたんですか? ギルドマスターがお呼びですよ」
「解体場に行って、オーガを置いてきたんだよ」
「そうだったんですね。それでは、ギルドマスターの部屋へどうぞ」
「わかった」
ギルドマスターの部屋へ向かうと、以前とは比べて愛想よく迎えられる。
「やぁ、いらっしゃい。そこに腰掛けて待っててくれるかい? すぐにこの書類を終わらせるから」
「別に急がなくてもいいぞ。今日のクエストは、もう終わりだしな」
「そう言ってもらえると助かるよ」
そう言って、サイラスは書類仕事のペースを上げる。手持ち無沙汰な俺は、マールのいれた紅茶を飲んでいた。
少し経つと書類が終わったのか、サイラスが立ち上がり対面のソファへと腰掛ける。
「改めて、今回のオーガ討伐はご苦労さまです。まさか、本当に討伐してしまうとはね。それと、2人のランクを、私の権限で上げることにしたよ。マオ君がBランクで、クリス君がCランクだ」
「俺とクリスでランクが違うのは何故だ?」
「それは、一重に実績だよ。マオ君の実績は、散々確認したからね。クリス君は、今日の討伐が初めてだ。その違いだね」
「そういうことか。クリスはそれでいいか?」
「私は別にランクなんて気にしないわよ。マオと一緒にいられたらそれでいいから」
「そうか」
「それじゃ、クエストの報酬は、カウンターで貰っておいてくれるかい?」
「わかった。また依頼があれば指名してくれ。その時の状況にもよるが、極力受けよう」
「その時はまたお願いするよ」
そうして、ギルドマスターの部屋を後にすると、カウンターへとやってきた。
「マール、達成報酬をくれ」
「あっ、マオさん。こちらが達成報酬になります。あと、Bランク昇格おめでとうございます。クリスさんはCランク昇格おめでとうございます。マオさんは今のところ、2ランクずつアップしていますね。次はもしかしてSランクですか?」
「そんな簡単に、なれるもんでもないだろう?」
「それもそうですね。Sランクになるためには、いくつかのギルドマスターの承認が必要ですから」
「とりあえずは、クリスのランクを同じBにするのが、当面の目標だな」
「私のことなら気にしなくていいわよ? ランクなんて当てにならないんだから」
「まぁ、それは確かだが、厄介事に巻き込まれなくて済むだろ? クリスは、そこら辺のチンピラにナンパされたいのか?」
「そんな奴がいたら八つ裂きにするわよ」
「毎回死者が出るなんて、俺はごめんこうむりたいのだが……」
「いくらなんでも殺さないわよ!」
「でも精密な魔法は不得手で、ドッカン魔法の方が得意なんだろ?」
「人相手に、そんな魔法使うわけないでしょっ!」
「あのぉ~仲良く話し合っているところ悪いのですが、ナンパされることはないと思いますよ」
「ん? ……何故だ?」
「クリスさんが、マオさんのパーティーメンバーであることは知れ渡ってますので、ナンパをしようとする人はいないんですよ。するとしたら事情を知らない人か、蛮勇の冒険者ぐらいです!」
えっへん! といった感じでマールが胸をそらすのだが、胸が強調されてボタンが飛んでいきそうな勢いだ。
「マオ? どこに視線を向けてるのかしら?」
「ん? 胸だが?」
それを聞いたマールが慌てて姿勢を正す。顔を真っ赤にして俯く姿はなんともそそられる光景だった。
「そう……そんなに大きいのがいいのね……」
「何を妬いている? クリスも将来はあのぐらいになるぞ。むしろそのぐらいまで育ててみせる」
「――っ!」
想像でもしたのだろうか、クリスも顔を真っ赤にして俯いた。
「さて、目の保養が思いがけないところで出来たし、宿に帰るか。行くぞ、クリス」
ギルドを出ていこうとするマオの背後を、顔を俯かせたままクリスはついて行く。その姿をボーッと見つめるマールであった。
『やっぱりマオさんは、スマートでカッコイイなぁ……セクハラ発言確定なのに、いやらしさがないから、全然嫌な気持ちにならない。今までは肩は凝るし、男の視線が嫌であまり好きになれなかったけど、大きくて良かった。マオさんも、大きいのが好きみたいだし……』
立ち去るマオを見つめながら、マールはそんなことを思うのであった。
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