第7話 探索完了
それから、マオが召喚した経緯と行き詰まっている内容を詳細に伝えると、対処できるかもしれないという返事があった。
「それならば、使い魔たちに探させることに致しましょう」
「安直な発想だが、使い魔はコウモリか?」
「それもあります。真祖だと、基本的に闇に属する生き物などは、支配下に置くことが出来ますので、他にもいますが」
「便利なものだな」
「いえ、実力が伴ってないと使い魔にはなりません。誰しも自分より弱いやつには、従いたくないというところです」
「その気持ちはわかるな。俺も自分より弱いやつにこき使われるのは、勘弁して欲しい。クリスティーナは、その点いいのか?」
「どういう意味でしょうか?」
「召喚してしまった俺が言うのも何だが、弱いやつには使われたくないだろ? 俺自身はそこまで弱くないつもりだが」
「それは大丈夫です。私を召喚出来てる時点で、私より強いのは確定していますから。先程も申したように、普通は真祖を召喚なんて出来ないんです。真祖より強い生物は中々いませんし。今までも会ったことがありません。ちなみに、私のことは“クリス”とお呼びください」
「わかった。クリスがそれでいいなら良しとしよう。場合によっては《返還》で、帰してあげようかと思っていたんだが」
「帰る必要はありません。元いたところは強者がいなくて、飽き飽きしていたので。あと、お見合い話にも、うんざりしていましたし」
「クリスほどの美貌なら、お見合い相手がいっぱいいたんだろうな」
「それは沢山いましたけど、全員真祖の地位目当てで、名声が欲しかっただけです。私自身のことなんて、どうでも良かったんですよ」
クリスは美人系の出で立ちだが、容姿は少し幼く、頬を膨らませて怒る姿には、可愛いとさえ感じてしまった。
「そうか。それはうんざりだったな。俺はたとえ真祖じゃなくても、クリスなら大歓迎だがな」
「――!」
マオからされる不意打ちの“真祖”ではなく、“自身”に対する評価で、クリスは頬を赤らめる。
「あ、それと、俺に対して敬語は使わなくていいぞ。これからは一緒に冒険する仲間だしな」
「わかり……わかったわ」
「じゃあ、使い魔を呼び出して、オーガの探索を手伝ってもらおう」
「捜索範囲が広いから物量作戦で、芸がないけどコウモリにするわね」
「あぁ、頼む」
クリスが魔力をこめると、魔法陣が浮かび上がり、無数のコウモリ達が空へと羽ばたいて行った。
「質問なんだが、コウモリは夜行性じゃないのか? 昼間でも働くのか?」
「使い魔になると関係がなくなるわね。使役されるのだし」
「不思議なもんだな。それに、クリスも吸血鬼なら、太陽光とか苦手なんじゃないか?」
「それも大丈夫よ。真祖は太陽光に耐性があるから、日中に出歩いても問題ないわね。多少、能力は夜に比べると落ちるけど」
「凄いんだな、真祖って」
ちょうどその時、一匹のコウモリが戻ってきた。
「見つけたみたいよ。行きましょうか?」
「もう見つけたのか!? そのコウモリも凄いな」
コウモリが言葉を理解しているのかは不明だが、見ようによっては喜んでいるように羽ばたいていた。
「オーガは一匹だけのようね。住処は無くて根無し草のようにフラフラしているみたいよ。場所はまだ奥の方ね」
「やっぱりはぐれだったか。さっさと討伐して街に戻ろう」
それから二人は森の奥へと歩みを進めた。道中は他愛のない話をしながら、まるで散歩にでも来ているような光景である。
「見えたわ。おそこにいるわね」
視線の先には、獲物を探しているオーガの姿があった。
「じゃあ、討伐し……」
「どうしたの?」
「思い出したんだが、討伐しちゃいけないんだった」
「保護でもしているの?」
「いや、これがちょっと面倒くさくてな。俺が受けたクエストは“探索”なんだ。探索は、オーガの居場所を見つけて報告するというもので、討伐は含まれていないんだ。報告の後に“討伐”クエストが出るだろうから、それを受注しないといけない」
「確かに面倒くさいわね」
「そうしないと、討伐分のクエストが出なくて、タダ働きみたいになるからな。冒険者として金を稼ぐなら、面倒くさくてもそうしないとな」
「他の人にクエストを取られたりしないの?」
「それが、今はオーガに対抗できるような、冒険者パーティが街にいなくてな。事実上、俺の独占クエストになっているから、取られる心配はない」
「オーガを狩るだけなのに、パーティを組むだなんて……人族は相変わらず弱いのね」
「仕方ないだろう。基本スペックが低いからな。それよりも、帰っている間にオーガが移動するから、また探さないといけなくなるな」
「それなら、使い魔を残して街に戻る?」
「それが出来るならそうしよう。報酬のお金はあって困るものではないしな」
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